OECDの開発援助委員会(DAC)はODAデータを取りまとめているが(図録0800参照)がNGOへの補助金(様々な資金提供を含む)もODAの範囲に含まれている。この部分の把握はNGOに対するメンバー各国の調査をベースにしているが、その際、政府からの資金提供によらない自己資金援助の額も把握しようとしており、DAC統計にはこの額が計上されている(国によって未把握のところもあるが)。

 NGO補助金とNGO自己資金を合計したNGO援助額をODAとNGO自己資金を合計した援助総額で割った値をNGO援助比率と名づけるとすると、このNGO援助比率は0%近くの国から30%近い国まで国によって大きく異なっている。

 図には、このNGO援助比率と各国のボランティア活動者率との相関を両者のデータが得られる範囲で国際比較した。(ボランティア活動者率が見つかったのでボランティア活動平均時間との相関に換えて作成した図であるが、ボランティア活動時間との相関図も図録1100に従前通り掲げてある。)

 これを見ると両者には正の相関が認められる。

 日本ではポルトガル、スペイン、フランスなどと並んで、両方とも低く、米国、オランダ、カナダ、英国といった国、特に米国では、両方とも高い数値を示している。すなわち、身近なところで政府に依存しない自発性に基づく活動が盛んな国は、海外援助の分野でもNGOを通じた援助の果たしている役割が大きい。

 スウェーデン、フィンランドなど北欧の国ではボランティア活動は盛んであるが、援助についてはNGOというより国の役割が高い点で特徴がある。

【コラム】ボランティア活動:米国とスウェーデン

 以下は、拙著「統計データはおもしろい! −相関図でわかる経済・文化・世相・社会情勢のウラ側−」(技術評論社、2010年)で、この図における米国とスウェーデンの位置を解説した部分の引用である。米国とスウェーデンの違いなどが老人の家事援助を誰が行うかを調べた国際調査からもうかがえる点については、図録1238【コラム】参照。

1.ボランティアに熱心だったローラ・パーマー(米国)

 図に掲げた国の中で、米国はボランティア活動率もNGO援助比率も最も高く、まさに世界一のボランティア王国といえましょう。1990〜91年に米国で放映された『ツイン・ピークス』という連続テレビドラマが日本でも放送されました。物語はローラ・パーマーという名の美しい女子高校生がビニールに包まれた死体となって発見されるところからはじまります。当時はこんな猟奇的なテーマをテレビドラマで放映して良いのだろうかと感じながら毎回見ていましたが、最近はバラバラ死体事件がよく報道されるようになり、対岸の火事とは言えなくなりました。主人公の美少女が自らの好奇心や欲望から身を持ち崩しドラッグや売春に係わる一方で、こうした性向と矛盾なく老人への配食などのボランティア活動にも熱心だったというドラマの設定にビックリしたことを憶えています。図でもうかがえる通り米国人とは正反対の位置にある日本人にとっては米国に根づいているようなボランティア社会というものがなかなか理解しがたいのも無理がないのかも知れません。(p.34〜35)

2.福祉はボランティアでなく行政が行うものと考えるスウェーデン人

 スウェーデンは米国に次いでボランティア活動が盛んですが、援助についてはNGOというより国の役割が高い点で特徴があります。このようにスウェーデンについては、一般傾向からの乖離率が高いので一考する必要があります。

 このグラフのデータのもととなった世界価値観調査(2000年)に基づくボランティア活動率については、スウェーデンの値は50%以上と米国に次ぐ世界第2位と非常に高い水準になっています。これに対して、寄付活動とともにボランティア活動への参加率を調べたギャラップ世界世論調査(2006〜08年)では、12.4%とずっと低い比率になっています。

 この食い違いについて、日ごろ、私の社会実情データ図録をご覧になり意見を寄せて下さるスウェーデン在住のY氏(国際研究所勤務)がこう教えてくれました。

 「スウェーデン人にとってボランティア活動とは困った人を助ける活動ではなく、コミュニティ活動や子どものスポーツ指導といった趣味のために時間を割く活動だと考えています。困った人(福祉の対象者)を助けるのは政府の役割とし、そのために高い税金を払っています。以前スウェーデン人の友人と米国に行った際に、身障者が物乞いしているのをみて、『これは政府の仕事だ』と憤っていました。もちろん寄付なんかしませんでした」

 つまりボランティア活動の定義について、困った人への援助の側面が強いか福祉以外の活動の側面が強いかでボランティア活動率の値が異なってくるというわけです。

 グラフのもとになった世界価値観調査は非常に多種多様な団体のいずれかで、無償で活動しているかという集計の結果なので、福祉的な活動の要素は薄められてしまい、見かけ上、スウェーデンが他国と比較してボランティア活動が活発な国となったと解釈できます。

 こうして乖離度の高いスウェーデンの事情を調べてみると、実際は、スウェーデンは一般傾向から見かけほど乖離してはいないことが分かります。図の相関は、国民が困った人の援助を行うのは政府の役割と考えている国では途上国援助についてもNGO援助比率が低くなる傾向があると捉え直すことができます。(p.35〜36)

(2008年5月30日収録、2015年9月19日コラム追加)


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