国際的な学力調査として関心が集まるOECDのPISA調査では、学力テストに合わせて、就学上の状況の調査として、学校、学級、教師、家庭に対する状況や評価について、直接、生徒に聞く調査を実施している(調査の概要や学力調査の結果は図録3940参照)。

 ここでは、そのうち、自分たちの将来の人生や生き方に学校が果たしている役割に関し、生徒が学校をどの程度評価しているかについての設問を取り上げ、結果を見てみよう。

 まず、関連する4設問の結果について、主要国(G7諸国+韓国)を比較したデータを掲げた。

 否定的評価の設問2つ、すなわち「社会人としての生き方を教わらなかった」および「学校なんて時間の無駄」に対する同意率(「その通りだ」+「まったくその通りだ」の回答率)は、日本が最も低く、それぞれ、22.7%、6.0%だった。

 一方、肯定的評価の設問2つ、すなわち「決断する自信をつけさせてくれた」および「仕事に役立つことを教えてくれた」の同意率については、日本が最も高く、それぞれ、63.8%、71.7%だった。

 将来人生へ向けた生徒の学校評価は、日本の生徒がもっとも高評価であることが分かる。

 主要国のうち、日本と正反対に学校への評価がいずれの項目でも最低なのはドイツである。ドイツでは、早くから生徒の将来を振り分ける学校制度となっているのが、生徒に不評なのかもしれない。

 日本とドイツが正反対の事例は、このほか、リスクを危険と考える日本、好機と考えるドイツという対比がある(図録9507)。

 韓国が「仕事に役立つことを教えてくれた」を除く3つの設問で日本に次いで学校へ生徒の評価が高い点も目立っている。儒教的な考え方が将来進路に関しては学校の評価を高める要因となっているのかもしれない。

 4つの設問のうち代表的なものは「学校なんて時間の無駄」だと思われるので、次図では、この設問に関してOECD諸国全部の結果とそれ以外のパートナー諸国のうち日韓と同じ儒教国を中心に主要9カ国の結果を掲げた。

 この設問に関し、日本は世界一、学校への評価が高いことが分かる。

 また、パートナー諸国のうち「台湾」、「シンガポール」では評価が高く、儒教国仮説がある程度成り立っている可能性がある。

 なお、OECD諸国の中でも主要国の結果の幅はけっこう大きいことが分かる。

 OECD諸国のうちスペイン語・ポルトガル語圏(イベロ語圏)では学校評価が高い傾向が認められる。

 一方、OECD諸国のうち学校評価が低いのは、最も低い方からポーランド、トルコ、ノルウェー、スロバキア、オランダ、ベルギー、ドイツの順である。同じ北欧でもデンマーク、フィンランドの評価は低くないので、儒教圏、イベロ語圏以外では、文化的、地域的な共通性は測りがたい

 当図録で取り上げた国は、日本、コスタリカ、韓国、メキシコ、スペイン、デンマーク、チリ、コロンビア、ポルトガル、イタリア、ハンガリー、エストニア、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、ギリシャ、スイス、英国、オーストラリア、チェコ、オーストリア、カナダ、米国、アイスランド、スロベニア、ラトビア、フランス、ニュージーランド、リトアニア、ドイツ、ベルギー、オランダ、スロバキア、ノルウェー、トルコ、ポーランド、台湾、シンガポール、マレーシア、ブラジル、インドネシア、香港、アルゼンチン、フィリピン、タイである。

(2025年9月7日収録)


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