小学校の先生の男女比率の国際比較については図録3852で見たが、ここでは、小学校ばかりでなく、幼稚園、中学・高校、大学・大学院といった各レベルの教育機関における女性教員比率の国際比較データを掲げた。図における国の並びは大学・大学院の女性教員比率の高い順とした。

 各国共通の傾向として、まず、目につくのは、幼稚園から大学・大学院まで教育レベルが上昇するほど教員の女性比率は低くなっていくということである。幼稚園では100%近い教員が女性であるのに対して、小学校では8割程度に低下し、中学・高校ではさらに6割程度まで低下し、大学・大学院ではじめて半分以下となる。OECD平均の女性教員比率は、それぞれ、96.3%、82.5%、63.0%、44.2%と低下していくのである。

 すなわち、幼児にちかい学校児童・生徒ほど、母親のような役割が先生に期待されるというのが全世界的傾向なのである。

 また、各国ごとのばらつきもこの順でおおむね大きくなっていく。初級学校ほど女性が期待される普遍性は高いと言えよう。

 各国ごとの女性教員比率の違いについては、まず、最上級の大学・大学院から見ていこう。

 大学・大学院の女性教員比率が最も高いのはロシアの62.4%であり、リトアニア、ラトビアといった旧ソ連諸国が続いている。男女平等を標榜していた社会主義体制だったからという理由も考えられれなくもないが、旧社会主義国であってもハンガリー、チェコはずっと低い値となるのでそうした理由で理解するのはやや無理がある。

 図録1930aで見たように、バルト海諸国では女医比率も異例なほど高いので、教師や医師がケア関連職業と見なされ、女性が適合的と判断する文化的な傾向があるとみなした方がよさそうである。

 旧ソ連諸国に続いて大学・大学院教員の女性比率が高いのは、フィンランド、ニュージーランド、米国、カナダといった北欧や旧英植民地諸国である。これらについては、早くから広く女性の社会進出が進んでいた国だからという理由が当てはまりそうである。

 逆に、大学・大学院教員の女性比率が低いのは南欧諸国や韓国、日本といった東アジア諸国である。日本の比率は28.4%と最低である。

 下表には女性教員比率の低い国をリストアップした。日本は中学・高校でも最低であり、小学校でも下から4番目と低くなっている(幼稚園のデータはなし)。


 日本の大学・大学院教員の女性比率が低いのは、女性が高い社会的地位につくのを妨げている女性差別のあらわれとみなすのが通り一遍の判断であるが、小学校や中学高校の女性教員比率が低いことを女性差別と言い立てる人は少ない。

 図録3852では、日本の小学校教員に女性が相対的に少ないのは、儒教の影響、あるいは「途上国で教師はケア職業というより先進国の知識を導入するインテリ職業の性格が強い」ことの名残りという解釈を示した。だとすると、日本の大学・大学院教員の女性比率が低いのも女性差別だけでなく、同じ理由が考えられないだろうか。

 比較対象となっている国は、具体的には、大学・大学院教員の女性比率の高い順に、ロシア、リトアニア、ラトビア、フィンランド、ニュージーランド、米国、カナダ、エストニア、ベルギー、イスラエル、ノルウェー、スロバキア、オランダ、英国、ポーランド、ブラジル、アイルランド、スウェーデン、ポルトガル、フランス、トルコ、スペイン、コスタリカ、デンマーク、オーストリア、スロベニア、インド、サウジアラビア、ハンガリー、ドイツ、コロンビア、チェコ、イタリア、ギリシャ、スイス、韓国、ルクセンブルク、日本である。

(2023年4月16日収録)


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