2012年10月末の外国人労働者数は68.2万人と前年同期比0.6%減とはじめて減少した。これは、2011年の東日本大震災後の不品不足や節電などの影響で一時的に外国人労働者が減少し、その後、自動車産業の増産などで労働者数が回復していたが、なお、横ばいの傾向となっていたためである。 2014年以降は円安や経済好転によって外国人の雇用が増加している。特に最近は景気の回復の中で高齢化による深刻な人手不足が続いており、企業が積極的に外国人を受け入れている。このため、一層、外国人雇用が増加していると考えられる。 以下には在留資格別の外国人労働者数の推移を示した。日系ブラジル人を含む永住者など身分による在留外国人が最も多く、高度技術者・通訳などの専門的・技術的分野、技術実習生、留学生などの資格外活動が同数規模で続いていたが、最近は留学生などの資格外活動および技能実習による就労の増加が目立っている。留学生の就労は労働時間が制限されているが、少子化で大学が留学生の取り込みに力を入れ、円安で留学しやすくなったため、それに伴い留学生のアルバイトも増えてきているためと考えられる。 ただし、2021年〜22年には新型コロナの影響で技能実習や留学生の外国人労働者が大きく落ち込んでいる。 都道府県別の外国人労働者数については図録7355。 ○外国人労働者数についての把握(2006年段階のコメント) (1)外国人労働者数の推移
外国人労働者は年々増加傾向にある。 厚生労働省職業安定局の推計(2008.5)によれば、2006年の外国人労働者数は合法的就労者数が約75.5万人、多数が不法就労を行っていると考えられる不法残留者数約17万人を加えると92.5万人である。この推計では10年前の1996年には合法的就労者数が約37万人、不法残留者数が約28万人と合わせて外国人労働者数は約65万人だったとされている。(2004年段階の推計は下記参照。こちらの推計だと図のように1996年の外国人労働者数は63万人だったとされる。) 合法的就労者数の内訳(2006年)は、 ・専門的・技術的分野 約18万人←約10万人(1996年) ・身分に基づき在留する者(主として日系人の定住者、永住者等) 約37万人←約23万人(1996年) ・技能実習生等の特定活動 約9.5万人(うち技能実習生約7万人)←約1万人(約0.6万人)(1996年) ・資格外活動(留学生のアルバイト等) 約11万人←約3万人(1996年) とされている。 ここで技能実習生とは外国人研修・技能実習制度で認められた技能実習生である。外国人研修・技能実習制度とは、開発途上国の人材育成を目的に1990年代前半に導入された研修制度に加え、1993年から、1年の研修後、所定の要件を充足すると実習生として2年間就労できるようになった制度である。 この推計以外に外国人労働者を把握している数字としては、2006年まで厚生労働省が各公共職業安定所を通じて、事業所に報告を求めている「外国人雇用状況報告」があった。対象事業所が限られており、また正式の統計調査でもないので、カバー率は低く、同じ2003年で、派遣・請負等の間接雇用を含めて27.4万人となっている。この報告によれば2004年以降外国人雇用はなお増加傾向にある。 この外国人雇用状況報告からは、直接雇用、間接雇用の別の他、外国人労働者の地域別、男女別、産業別、等の属性が得られていた。 2007年の通常国会において「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」が成立したことに伴い、2007年10月1日より、事業主に対し、外国人雇用状況の届出が義務化された。すべての事業主は、外国人労働者(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇入れまたは離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けらた。(届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となる。)10月1日時点で既に雇用されている外国人労働者についても、届出の対象となりる。 こうした新制度に基づく新集計については2008年以降の結果を掲げた。この調査によっても推計人数より少ない人数しか把捉できていないようだ。図録7355では、このデータから都道府県別の外国人労働者数を掲げた。 (2)外国人労働者問題に対する様々な意見 外国人労働者に関しては、日本は、他国に比べ、受け入れ数は少ないが(図録3830参照)、外国人労働者受入に関しては以下のような様々な意見がある。 ・今後も、日本社会が無秩序にならないよう、知識・技術を有する者以外は原則受け入れないとする方針を貫くべき ・日本の競争力を向上させるためには米国などと同様有能な外国人を積極的に呼び込むべき ・今後は労働力が不足するので受入やむなし ・モノづくり、看護、介護などで日本人より外国人の方が立派にやってくれる ・グローバル時代の中で外国人と共に働くのは良い 経済団体や労働団体の意見については、大企業を代表する日本経済団体連合会(日本経団連)、地域企業・中小企業を代表する日本商工会議所(日商)、労働者を代表する日本労働組合総連合会(連合)は、外国人問題に対する基本方針はほぼ同じ−すなわち「技術・頭脳受入促進」、「単純労働者受入慎重」、「移民時期尚早」である。 ただし、違いに着目すると、以下の通りである。 (日本経団連) @看護・介護など将来の労働力不足分野での受入 A単純労働者受入、不法滞在への道という面のある研修・実習制度改善 B認知すべき範囲の不法滞在者の合法化(裏社会の形成の抑止) (日商) @健康保険と年金とのセット加入義務の緩和(年金納付の返納制度創設) A2国間協定に基づく台湾方式での単純労働者受入促進の検討 (連合) @労働力不足に対してはまず高齢者、女性、フリーター対策が先 A研修生・実習制度は事実上単純労働者受入であり問題も多いから廃止を含めた再検討の要 BFTAによる労働者受入は、国内資格のない職種はダメ、介護も国内の雇用が不安定・低賃金であり海外受入はダメ 地域の中小製造業などでは、苦しい経営状況と3K職場に若者が集まらないことから、外国人労働者なしでは経営を存続できない企業が多くなっており、日商は、そうした立場の意見をもっていると考えられる。 (3)厚生労働省研究会推計 厚生労働省研究会(2004年)の推計によれば、2003年には、不法残留者を含めて外国人労働者数は79万人となっており、1990年の26万人から3.0倍に増加している。これは、不法残留者以外の不法入国等の外国人労働者、あるいは研修は含んでおらず、実際には、さらに多くの外国人が日本で働いていると考えられる。 79万人の内訳は、合法就労者が57万人、不法残留者が22万人である。合法就労者のうち最も多いのは、日系人等が23万人、そして次ぎに、就労資格を有する専門的・技術的分野の就労者の19万人が多くなっている。この他、留学生等が10万人、技能実習生等が5万人である。(下記、<参考データ>を参照) 就労資格で働いている外国人労働者は、20%台であり、しかもそのうち3分の1は「興行」資格である(フィリピン人が主、図録8160参照)。日本では、原則的には、労働力の受け入れを行っていないことから、こうしたパターンになっている。 <参考データ> 2002年 我が国で就労する外国人(推計)
1 特定活動の人数。特定活動とは、ワーキングホリデー、技能実習等を指す。ワーキングホリデーのうち、就労していると考えられる者の数は、厚生労働省が推計。 2 アルバイト(資格外活動)の人数。アルバイトは、「留学」等の在留資格で在留する外国人がアルバイトをするために資格外活動の許可を受けた件数。 3 日系人等の労働者とは、「定住者」、「日本人の配偶者等」、及び「永住者の配偶者等」の在留資格で日本に在留する外国人のうち、日本で就労していると推定される外国人を指す。日系人等の労働者数は厚生労働省が推計。 4 資格外活動者数は1年間の許可件数、不法残留者数は15年1月現在の数、その他の数は14年末現在の数。 (資料)厚生労働省「外国人労働者の雇用管理のあり方に関する研究会」資料(2004.1.16) (2005年4月20日収録、2006年8月24日更新、2007年10月11日更新、2008年7月7日更新、2009年6月4日更新、2010年2月1日更新、2011年3月12日更新、2012年1月28日更新、2013年3月4日更新、2014年2月16日更新、2015年4月22日更新、2016年1月30日更新、在留資格別推移図を追加、2017年1月27日更新、2018年5月21日更新、2019年1月26日更新、2022年1月29日更新、2024年2月10日更新)
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