(フリーター)


 フリーターの増加が社会問題化してから長い。フリーター数については、厚生労働省が「労働経済の分析(労働経済白書)」で公表していた。平成23年版白書から「パート・アルバイト及びその希望者」と名称変更され、2011年値からは白書での公表はとりやめとなり、同省「若者雇用関連データ」サイトで公表されている。しかし、大きな話題となったのは、内閣府の平成15年国民生活白書(2003年5月末発表)がフリーター数417万人という大きな数字を公表した時だった。

 なお、内閣府の公表数字は、毎年の特集に基づき編集される国民生活白書の単発的な集計であり、もともと毎年更新されていく形にはなっていない。この点、2006年11月教育基本法の衆議院委員会審議にともなって問題となった内閣府によるタウンミーティングのやらせ質問で内閣府への不信が高まった結果、公表を意図的に中止しているとの疑問が生じているが、そういう訳ではない。

 最近のフリーターの人数は、厚生労働省では183万人(2010年)、内閣府では417万人(2001年)としており、約2倍の違いがある。また、いずれの定義によってもフリーターの人数は10年間で倍増している。2004〜08年は景気回復に伴ってフリーターは減少傾向にあった。

 フリーターのとらえ方については、厚生労働省の定義は、フリーターという立場を選択している人(正社員になりたくない人)、内閣府の定義は、フリーターにならざるを得ない立場の人(正社員になれない人)を含むという違いがある。現在無職の人のうち前者はパート・アルバイトを希望する人のみカウントし、後者では、正社員を希望する人を含めてカウントしている点に違いがあらわれている。後者は、正社員になりたくない人となれない人を両方含んでいるので、当然、数は多くなるのである。なお、内閣府定義のフリーターには就業者としてパート・アルバイトばかりでなく最近増えている派遣・契約等も含めているのでなおさら数が多くなっている。

 厚生労働省ではフリーターを最初に平成3年版労働白書で集計しており(フリーアルバイターとして)、当時は、正社員になりたくない人という立場が着目され、そのまま定義が継続したものと考えられる。その後、内閣府2003年の定義では、フリーターの負の側面がより着目された結果、新定義となったものと考えられる。パート・アルバイトで就業している若者の中には、主体的に選択しているものと消極的に選ばざるを得ないものとの両面が当初からあったが、厚生労働省の最初の定義では前者に着目したということであろう。

 なお、平成22年版の労働経済白書からフリーターという用語は消え、「パート・アルバイト及びその希望者」という用語で同じ数字が掲載されている。またパート・アルバイトから非正規一般に拡大した「非正規の職員・従業者及びその希望者」を算出している。2009年のこちらの人数は324万人である。なお、上述の通り、平成23年版までで数値の掲載は取り止めとなり、現在は同省サイトの公表となっている。

 内閣府定義の2001年フリーター数では、若年人口(15〜34歳)の9人に1人(12.2%)、学生・主婦を除いた若年人口の5人に1人(21.2%)がフリーターとなっている。年齢別に見ると、1992年には20代前半で最も多かったフリーターが、2001年には20代後半にピークがシフトし、30代でもフリーターが急増するなど、フリーター生活の長期化が懸念される。

 なお、フリーター的存在の問題点としては、以下のような点があげられることが多い。

1)自由を選択していても自由のマイナスの対価が大きいことに気づかず、本人が不利益をこうむったり、不安を感じたりすることが多くなる。

2)若年の職業能力が高まらないため、日本産業の競争力や経済全体の成長の制約となるおそれがある。

3)犯罪の増加など社会不安に結びつく可能性がある。

4)未婚化、晩婚化、少子化などを一層促進し、年金など社会保障制度にも影響が生じる可能性がある。

 年齢別のフリーター数の推移については、図録3470参照。

(ニート)

 近年になってフリーターよりさらに深刻な存在としてニートが注目されている。これは英国における造語であり「Not in Education, Employment or Training (NEET)」をあらわしている。これはフリーターと異なり就職する意思がなく職業訓練もしていない若者を指し、フリーター対策とは別の支援策が必要とされる(毎日新聞2004.9.10夕刊)。1998年に英国の義務教育を終えた16〜18歳の若者のうち9%にあたる16.1万人が就業も就学もしていないことから国民にショックを与え、この言葉が生まれたという。主に13〜19歳向けの非営利民間の相談施設「コネクションズ」のプロジェクトがはじまり、2005年のニート率は11月時点で7.7%まで下がったといわれる(毎日新聞2006.6.18)。

 平成16年の労働白書から、はじめてニートにあたる存在を「若年層無業者」ととらえ、2003年に52万人と集計した。平成17年以降の労働白書では「若年無業者」として新たに家事・通学をしていない既婚者・学生も加え、2009年63万人、10年60万人と発表している。

 「若年無業者」は、4つの「非」で定義されている。すなわち、非就業、非求職、非通学、非家事である(最初の2つで非労働力人口となる)。「若年無業者」は就職意思などの点で厳密にフリーターと相互補完的な定義ではないと考えられるがほぼニートに該当するととらえられている。

 2005年3月に内閣府が行った調査(若年無業者に関する調査)によると、ニートは2002年に85万人という数字をはじき出している。

 なお、労働力調査でなく、国勢調査を使ったニート数の把握について、図録3460に掲げた。また、年齢別のニート数の推移については、図録3470参照。

(2004年7月5日収録、9月12日データ更新・ニート追加、2005年3月23日内閣府定義ニート数追加、2005年7月26日更新、2006年7月18日更新、8月10日ニートのコメント一部追加、11月21日内閣府数値の単発的公表についてのコメント追加、2007年8月13日更新、2008年7月22日更新、2009年6月30日更新、2010年8月3日更新、2011年7月12日更新、2013年9月24日更新)


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