OECDの分析によると、年齢傾斜は、対象となった16か国が3つのパターンに分けられている。すなわち、加齢による格差拡大パターン(パネルA)と加齢によるU字カーブ・パターン(パネルB)、そして加齢による格差縮小パターン(パネルC)であり、それぞれ、8か国、6か国、2カ国が該当している。 パネルAのパターンは、男性は年齢とともにキャリアを重ねると賃金が順調に上昇するのに対して、女性はフレキシブルな働きかたを許す職に就くものの、あるいはそうであるから、年齢を重ねても余り賃金が上昇しないことを示している。 また、パネルAやパネルBは、年齢が上がるとともに、あるいは30歳代で、賃金が低いパートタイム労働に従事する女性が増える様子を示していよう。また、パネルCは、条件が許せば、年齢とともに男性より賃金の上昇率が高くなる場合もあることを示している。 いずれにせよ、女性が母親になって子を産み育てる中心的存在となる点がこうした賃金格差の背景にあることは確かであろう。パネルBの場合は、出産と育児が一段落すると、再度、女性も賃金上昇キャリアに復帰することを意味しているだろう。 同じパターンの中でも男女賃金格差が全体として小さい場合と大きい場合とがあることも重要である。例えば、パネルAのパターンでも、日本は男女格差が大きくなる典型であるし、一方、スウェーデンはどの年齢においても男女格差は小さい。 企業内格差と企業間格差への要因分解の結果を見るとオランダ、スウェーデン、デンマークでは企業内格差はあるにしても、企業間格差は年齢にかかわりなくほぼゼロである点が目立っている。 これは、こうした国では、中小企業、大企業などといった企業の違いがあっても、技能水準が同等であれば賃金水準も同等であることを保証する制度的、慣習的な仕組みが働いているからだと思われる。 フランス、ドイツ、コスタリカといった国もこれに近い。 一方、イタリア、ポルトガル、スペインといった南欧諸国では、年齢にかかわりなく、企業内格差とともに企業間格差が男女別賃金格差のかなり大きな部分を占めているという特徴がある。近代的企業と伝統的企業、あるいは大企業と中小企業との間で、同じような職種でも男女の賃金格差があることを示しているといえよう。いわゆる二重構造の存在を示唆している。 日本の場合も、企業内格差の側面が大きいとはいえ、こうした南欧諸国と同様の二重構造の問題がかなり残っているといえよう。 (2022年4月10日収録)
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