管理職の女性比率が「女性の活躍」の代表的指標として取り上げられることが多くなっている。ここでは日本の管理職の人的割合と女性比率の推移について見てみよう。 国勢調査の職業別集計によると、管理職の割合は、1980年のピークには4.7%であったが、40年後の2020年には2.0%にまで下がっている。 管理職のうちの女性比率は戦後まもなくには3%未満だったが、2015年には16.4%まで一貫して上昇している。ところが、2020年には15.7%と再度低下している。これは、コロナ禍の影響で女性管理職比率の高い小売業やサービス業の雇用が落ち込んだためと思われる。 ここで管理職とは、職業分類の管理的職業従事者を指している。管理的職業従事者の定義は、日本標準職業分類によれば、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するものをいう。国・地方公共団体の各機関の公選された公務員も含まれる。」となっている。国会や自治体議会の議員を除けば、会社やその他の団体の役員や課長以上ということであり、だいたい、一般的な通念と同じと考えられる。 なお、ここでは、管理職割合を雇用者に占める割合ではなく自営業者を含む就業者全体に占める割合で取っている。 参考に以下に、国勢調査ではなく労働力調査の同様の値の年次推移をグラフにした。2020年以降の女性比率の低下はコロナ禍の影響であることがうかがわれる。 ○管理職割合の推移
戦後日本の高度成長の中で、1次産業のシェアが縮小し、企業の経済活動がさかんになるにつれて、管理職の活躍分野は拡がっていった。特に、1960年代の躍進は目覚ましく、職業中分類で見ても1960年代後半には最も増加率が大きい職業区分だった(図録3500)。図の管理職割合の推移を見ても、1960年代は特に上昇幅が大きかった時代となっている。その後、1970年代も上昇を続け、1980年には4.7%のピークをしるした。 ところが、1980年代以降は、管理職割合は、長期的な低下傾向を示すようになった。2005年にはピーク時の約半分である2.4%にまで低下しているのである。こうした長期傾向には以下のような要因が働いたと考えられる。 a.ハイテク化、コンピューター化、IT化、ネット化などの管理技術の向上によって管理が合理化・効率化し、管理職の必要人数が縮小 b.管理職が専門分化するピラミッド型の大企業組織の時代から職業が多様化し専門職が横につながる自律分散的な社会システムへの移行 1980年以降の動きを見ると、時期的には、1980〜85年と1995〜2005年に2つの時期に特に管理職割合が大きく低下した。前者は「ハイテク・ブームの時代」、後者は「リストラの時代」に当たっており、それぞれ、前者はa、後者はbの側面が強かったのではないかと推測できる。 リストラの時代には、折からの「失われた10年」と呼ばれた長期経済低迷の中で、会社に長く勤めれば、管理職に自動的に昇進し、給与水準も大きく上昇するというパターンの見直しが図られ(賃金カーブのフラット化については図録3340参照)、必要性の高くない管理職も大きく減らされたのであろう。 リストラの時代に大きく管理職割合が低下する直前の1995年と最近2020年の年齢別の管理職割合の図を同時に掲げた。男性について、1995年には、年齢とともに管理職の割合は高まり、50代後半には11.8%と1割を越えていた。ところが、2020年には50代後半でも4.9%と半分近くに低下している。 ○管理職の女性比率の推移
次に、女性管理職の躍進の状況について見てみよう。 まず、女性就業者に占める管理職割合であるが、1950年には0.1%とほとんどいなかったのであるが、その後、めざましく上昇し、1995年に1%にまで達している。同じ年に男性は6.4%だったので、女性が管理職につく確率は男性の6分の1以下だった訳である。管理職の女性比率も9.6%とほぼ1割に達している。 その後、管理職割合の低下の一般傾向の中で女性の管理職割合もやや低下した。しかし、男性ほどの低下ではなかったので、管理職の女性比率は上昇を続け、2015年には16.4%という過去最大の値となっている。 つまり、女性の管理職が増えているかという点については、女性就業者の1%というピークよりは高くなっていないので、多くなっていないともいえるし、管理職の中での女性比率はなお継続して上昇しているので、多くなっているともいえる。 なお、2020年はコロナ禍により上記の通りややイレギュラーな値を取っていると思われる。 年齢別の管理職割合の図を見れば、男性よりは女性の方が管理職割合の低下が各年代で小さいことが分かるであろう。もちろん、それでも男女のギャップはなお大きいことも分かる。 次に、管理職に占める女性比率を年齢別に見ると、各年代で女性比率が高くなっていることが分かる。 年齢パターンでは、1995年には、50代後半まで年齢の高い管理職ほど女性比率の方が低くなるという「ガラスの天井」パターンが顕著だった。すなわち、課長から部長、事業部長、役員など高い年齢でつく管理職については、なお、女性が直面する昇進の壁(いわゆるガラスの天井)は打ち破りがたいことを示していたと考えられる。2015年には、ほぼフラットに変化しており、ガラスの天井はやや破られている可能性を示している。ただし2020年はまた1995年に近いパターンに戻っている。 なお、60代以上の上昇については、定年後の年齢となり雇用者は減るので、自営業に近い会社の女性役員が死別した夫との対比で多くなる影響ではないかと思われる。
(2014年10月10日収録、2016年11月10日更新、2024年1月13日更新)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|