貧しくて食料、衣服、医療が買えない世帯の比率の国際比較を図録4653で見たが、ここでは、社会保障・人口問題研究所が、我が国において同様の状況にある世帯数を調査している「生活と支え合いに関する調査」(旧:社会保障実態調査)の結果を図録として収録することとした。

 過去1年間に経済的理由で食料を買えなかったことのある世帯は14.8%、同じく衣料を買えなかったことのある世帯は20.0%にのぼっている。また、医療については、過去一年間に20歳未満世帯員が医療機関を受診できなかった世帯が5.8%ある。

 前回の2007年調査の結果と比較すると、食料、衣料ともに、困窮世帯率はやや減少している。

そのうち医療費の自己負担など経済的理由が38.4%、健康保険に加入していないという理由が14.2%となっていたので、合わせてほぼ半数に当たる1.0%の世帯は広い意味での経済的理由で医療が受けられなかった世帯であるといってよかろう。



 図録4653に示した国際比較における日本の数字は食料、衣料、医療でそれぞれ10%未満であったので、今回の結果は、ずっと高い値を示しているといえよう。これは、設問の仕方で違いが生じている可能性がある。国際調査は「よくあった」のレベルの数字だと考えられる。

 また、食料不足世帯については米国では毎年これに特化した調査を継続している(米国の食料不足世帯については図録8780参照)。この調査結果により、米国の食料不足世帯は2008年に急増して14.6%となったことが憂うべき事態として報じられた。これと比べても社会保障・人口問題研究所の調査結果は高い値となっており、国際比較上はやや問題であろう。

 なお、先頃厚生労働省が発表した相対的貧困率15.7%と経済的理由で食料を買えなかったことのある世帯比率15.6%(2007年)がほぼ同等の水準であった点に今回の調査結果を報道した毎日新聞は注目していたが(2009.12.24)、両者に直接の関連はないといってよい(相対的貧困率については図録4654参照)。

 世帯類型の違いでは、食料、衣料では、子どものいる世帯、特に母子・父子世帯で必要なものを買えなかったとする世帯に比率が大きくなっているのが目立つ。高齢単身世帯は平均より低い値を示している(2007年調査では若干平均より高い値を示していた)。

 地域別には、困窮世帯率の高い地域と低い地域をあげると以下である。

食料困窮世帯および衣料困窮世帯
  (多い地域) 北海道、そして東北、九州・沖縄
  (少ない地域) 東京圏、中京圏

医療機関利用困難世帯
  (多い地域) 北海道、四国、九州・沖縄
  (少ない地域) 東北、京阪周辺

 医療機関利用困難世帯の比率は、設問の対象が限定的なので母数が少なく、抽出誤差がやや大きくなっている点に留意が必要である。

 なお地域ブロックは、以下の分類によっている。

「北海道」北海道
「東北」青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
「北関東」茨城、栃木、群馬
「東京圏」埼玉、千葉、東京、神奈川
「中部・北陸」新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、静岡
「中京圏」岐阜、愛知、三重
「大阪圏」京都、大阪、兵庫
「京阪周辺」滋賀、奈良、和歌山
「中国」鳥取、島根、岡山、広島、山口
「四国」徳島、香川、愛媛、高知
「九州・沖縄」福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

 参考までに、以下に所得10分位(所得の低い方から10等分した世帯)別の食料困窮経験の世帯割合を掲げた。下から3区分の世帯では食料困窮世帯率が2割を越えている。


(2010年1月8日収録、2015年4月7日更新、所得10分位グラフ追加)


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