(イライラする若者たち) 統計数理研究所によって「日本人の国民性調査」が1953年以来、5年ごとに戦後継続的に行われている(同じ問を継続しているが問によっては必ずしも毎回聞いている訳ではない)。長期的な日本人の意識変化を見るためには貴重な調査である。この調査はすべて、全国の20歳以上(ただし2003年〜08年は80歳未満、2013年は85歳未満)の男女個人を調査対象とした標本調査である。各回とも層化多段無作為抽出法で標本を抽出し、個別面接聴取法で実施されている。2013年調査は10〜12月に行われ、回答者は、この問に関しては1,579人だった(回収率50%)。 ここでは、1993年以降調査されている「いらいら」にかかったかどうかの問について、年齢別の動きを追ったグラフを示した。 国民全体では1993年以降「いらいら」度が上昇傾向にある。2013年にはついに50%に達している。 年齢別に見ると、若い世代ほど「いらいら」が多い点が目立っている。時系列変化では、2008年までは40歳代以下、2013年には50歳代まで「いらいら」が増加しているのと対照的に60歳代や70歳以上は、近年、むしろ、「いらいら」が減っている。 正社員と非正規社員の関係、年金、介護、医療など健康福祉の財政問題などにおいて、中高年や高齢者の既得権益を保護するため若い世代に矛盾のしわ寄せするような事態が進行しているのが、まわりまわって、若者及び50代までの中年の「イライラ」につながっていると考えられる。 (男女年齢別の推移) 2013年の結果まで含めた図録の更新から、男女年齢別の推移の図を右側に掲げた。
これを見ると、全体に、男性より女性の方がいらいらを感じている。これは、うつ病が女性に多いこととパラレルな結果である(図録2150参照)。 特に、20代から40代までの女性で、最近、とみにいらいらがつのってきている点が目立っている。20代や30代の若い女性は、最近は、何と、ほぼ4人に3人以上が、この1カ月間に「いらいら」にかかったことがあると回答しているのである。 若い女性は何に対してこんなにいらいらしているのであろうか。同じ調査で、若い女性の頭痛・偏頭痛の悩みも2013年に20代で58%、30代で57%と2008年から10%ポイントほど上昇しているので(ここにデータ)、生理的な影響をを伴うような状況変化、例えば、仕事上のストレスの増大や多忙といったことが原因となっている可能性があろう。 60代、70歳以上は、上で見たように男女計ではいらいらが減じているが、男女別に見ると、男女差は依然として大きいことが分かる。濡れ落ち葉などの言葉にあらわれている高齢夫婦の状況を反映しているのかもしれない。高齢の妻の投稿を毎週水曜に連載している東京新聞の「つれあいにモノ申す」というコーナーはなかなか面白い。トンチンカンな夫に腹を立てる妻という構図がもっとも多い。例えば、 夫が、麦茶を沸騰させて、すぐ冷蔵庫に入れた。「冷ましてから入れてよ」と言うと、「冷蔵庫が冷ましてくれるんだ」と返された。あんたの頭を冷蔵庫に入れて冷ましたい。(あきれ果てた妻・63歳)(東京新聞2014年11月5日) また、「結婚四十年」という題で 黙々と食べる主人を見て、「おいしい?」と初めて聞いた。「まずかったら、こんなもん食えるかと言うよ」と答えた。そんな長いせりふが言えるなら、なぜ、「おいしい」の四文字が言えないの!(ひと言がほしい・65歳)(東京新聞2015年2月25日) (児童・生徒のいらいら) 中高校生や小中学生のイライラ度の推移については図録3947a参照。結論的には、小学生ではイライラ度は増しているが、中高校については、成人とは異なりイライラ度は低下傾向にあるようである。なお、小学生の段階ではまだ男女差がないが、中学生の段階ではすでに20代の特徴であるいらいらの女性超過があらわれていることが分かる。
(2010年4月2日収録、2014年10月31日更新、11月5日男女年齢別のグラフ追加、11月8日小中学生のいらいら追加、2015年2月25日「つれあいにモノ申す」一話追加、図録タイトルに「女性たち」を追加、2015年6月22日小中学生のいらいらの図を削除→図録3947aに移管)
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