驚いたことに日本は37.8%とOECD諸国の中で最低である。日本人は他のOECD諸国と比較して生活に余裕がなく美術品に手を出せないということもないので、日本人はそもそも家に美術品を飾ることが好きでない国民なのだだと言えよう(下段の所得水準との相関分析参照)。 日本は楽器保有世帯比率はむしろ高い方なので(図録2520参照)、それと比較しても日本人の美術品ぎらいは目立っている。これは日本人が宗教装飾を余り身に着けないのと共通する国民性だと思われる(図録9545参照)。日本人は何事にせよ飾りと縁が薄いのである。 最高はアイスランドの91.4%であり、デンマーク、ノルウェー、フィンランドと北法諸国がこれに続いている。 主要先進国(G7、韓国)の順位を低い方から並べると以下である(米国はこの設問なし)。 1.日本 37.8% 2.フランス 57.2% 3.韓国 63.4% 4.ドイツ 66.4% 5.英国 69.6% 6.イタリア 73.1% 7.カナダ 83.7% 文化度が高いと思われているフランスは57.2%と日本ほどではないが意外と低い。最高のカナダは最低の日本の2倍以上であり、ばらつきは大きい。 OECD以外の調査パートナー諸国はOECD諸国より全体として値が低いが値のばらつきはやはり大きい。最低はグアテマラの32.1%、最高はクロアチアの79.1%である。 経済発展度をあらわすIMFデータの2022年PPPドル・ベースの1人当たりGDPとここでの美術品保有世帯比率との相関係数を算出すると0.565とプラスの相関、すなわち生活に余裕があるほど美術品を家に有する傾向となっているとはいえ、相関度はそれほど高くない。なお、先進国中心のOECD諸国だけだと0.543とさらに相関度は低い。 経済発展度より、文化的な特性による差が大きいといえよう。 下図には所得と美術品保有比率の相関図を描いてみたが、日本のほかマレーシア、香港、台湾、シンガポールといった儒教圏諸国で美術品比率が低く、北欧諸国やバルト海諸国などバイキング文化圏で美術品比率が高いように見える。あるいは何でも朽ち果てる南方の木の文化圏と永続性が特徴の北方の石の文化圏との対比とも見える。 ![]() 対象となった諸国は、OECD諸国、パートナー諸国の図の順に日本、トルコ、メキシコ、コロンビア、チリ、フランス、韓国、ベルギー、ポーランド、ドイツ、イスラエル、スイス、英国、ギリシャ、ハンガリー、スロバキア、オーストリア、スペイン、ポルトガル、チェコ、イタリア、ラトビア、オランダ、リトアニア、エストニア、スロベニア、スウェーデン、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド、カナダ、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、グアテマラ、フィリピン、タイ、エルサルバドル、パラグアイ、インドネシア、ベトナム、モロッコ、ヨルダン、マレーシア、カンボジア、パレスチナ、アルゼンチン、ブラジル、ジャマイカ、ブルネイ、パナマ、ウズベキスタン、香港、ドミニカ共和国、マカオ、ペルー、サウジアラビア、ルーマニア、台湾、モンゴル、シンガポール、ジョージア、カザフスタン、アルバニア、ウルグアイ、ウクライナ、コソボ、セルビア、アラブ首長国連邦、アゼルバイジャン、ブルガリア、カタール、北マケドニア、キプロス、モンテネグロ、マルタ、クロアチアである。 (2025年8月3日収録)
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