政府の社会保障・人口問題研究所では、毎5年に実施する「出生動向基本調査」(2005年は国勢調査に合わせて繰り上げ実施)、別名「結婚と出産に関する全国調査」の中で独身者を対象とした調査を1982年から行っている。

 この調査の結果から、男性と女性とで、専業主婦かキャリアウーマンかといった女性のライフコースへの見方がどう違っており、また男女でどう変化しているかをグラフにした。

 2015年までは、男性の期待、女性の予定は、ともに、「子育て後再就職コース」が最も多かったが、2021年には、女性の「非婚就業」を除くと「結婚・子育てと仕事の両立」が最多となった。やはり再就職後の就業条件の不利がより意識されるようになっていると思われる。男性も近年は給与が伸び悩み、俺に任せておけとは言えない状況になり、両立志向への転換が多くなったと考えられる。

 専業主婦志向は、男女とも、低落傾向にあり、特に、男性の意識変化の幅が大きい。男性は、かっては女性よりかなり高い専業主婦期待があったが、今では、女性の期待と同レベルの専業主婦期待にまで急落した。代わって、増加しているのが、キャリアウーマン・コースとも呼ぶべき「結婚・子育てと仕事との両立」コースなのである。妻の能力を家庭に閉じこめておけないという意識が強くなった面もあろうが、同時に、女性にも働き続けてもらわないと家計が維持できないと言うのが男性にとっても偽らざる気持ちになったのだと考えることができる。

 この他、目立っているのは、女性の予定における「非婚就業」コースの増大である。2005年には、「専業主婦」コースを大きく上回る15.6%に至り、2015年にはさらに21.0%にまで上昇し、2021年には何と33.3%に急増し、他の選択肢を上回ってしまった。同じ調査による結婚の意思(図録2407参照)では、女性の「一生結婚しないつもり」は14.6%(2021年)なので、未婚の「意思」より、実際そうなりそうだという未婚の「予定」が大きく上回っていることになる。

 DINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)コースは、2021年に男性の期待で5.5%、女性の予定で4.9%となっており、それほど多くないが、過去最多となっている。

 まとめると、男女ともに専業主婦志向からキャリアウーマン志向へ転換してきたというのがこの間の大きな意識変化であり、最近では、仕事のためには非婚を厭わないという意識が大きく女性をとらえるようになったと言えよう。

 なお、1978年以降、また都市・地方別の専業主婦志向については、図録2410(「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方について)でも掲げたので参照のこと。

(2006年10月2日収録、2011年11月26日更新、2017年8月12日更新、2022年10月30日更新)


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