統計数理研究所によって「日本人の国民性調査」が1953年以来、5年ごとに戦後継続的に行われている(同じ問を継続しているが問によっては必ずしも毎回聞いている訳ではない)。長期的な日本人の意識変化を見るためには貴重な調査である。この調査はすべて、全国の20歳以上(ただし2003年〜08年は80歳未満、2013年は85歳未満)の男女個人を調査対象とした標本調査である。各回とも層化多段無作為抽出法で標本を抽出し、個別面接聴取法で実施されている。 この調査の問の1つに、「正しいと思えばおし通せ」か「世のしきたりに従う」か、「場合による」かの3択がある。「場合による」がまさにKY(空気を読む)に当たると思われる。 1953年から2013年の60年間の変化を見ると、戦後しばらくは、「正しいと思えばおし通せ」が最も多い回答であったが、その後、この姿勢は評価が低くなり、一時期、1970年代後半から1980年代にかけては「世のしきたりに従う」が最多になったことがことがあるが、これも低下し、一貫して増えてきたのは「場合による」である。 「場合による」は、状況次第ということであるが、状況主義者が増加しているといえよう。 「正しいと思えばおし通せ」という姿勢への評価が長期的に落ちてきているところに、高度成長期的な突破主義、結果オーライの有効性が減じている社会環境がうかがえる。おし通してしまえば後は何とかなる時代から何ともならない時代への転換がうかがえる。戦国時代と江戸時代の違いも同様であったろう(図録4400参照)。 男女・年齢別にどの回答が一番多かったかを示す図を追加した。 男性は全体と同じ推移であるが、女性の場合は、1988年までは「しきたりに従え」が多数派だったのに、今は、「場合による」が多数派へと変化した。図では分からないが、今では、「場合による」への回答率は女性が男性を大きく上回っている(2013年には男性の場合多数派でもなくなっている)。かつては自己判断を重視する男性と異なり世間の慣習を重視していた女性が、男性以上に、場の空気など状況に柔軟に対応して判断すべきだと考えるようになったのが目立っているのである。 年齢別には、昔も今も高齢層が「しきたりに従う」が多数派である点に違いはない。変化が生じたのは若者・壮年層であり、かつては自己判断を優先していたのが、最近は、場の空気など状況に柔軟に対応して判断すべきだと考える(すなわちKYを重視する)ようになったのである。 すなわち、わが国特有のKY重視の傾向は、女性と若者・壮年が主導しているようなのである。 興味深いのは男女、年齢を問わず、転換時期である1978〜88年には、一時期、おしなべて「しきたりに従う」が多数派を占めたことである。なぜかは分からない。 このテーマについての国際比較と日本の時系列変化の解釈を図録2391に掲げたのでご覧ください。 (2010年3月19日収録、2013年10月31日更新、2016年10月2日男女・年齢別の図を追加、2017年10月19日コメント修正、2021年12月25日更新)
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