ここで比較対象として取り上げられているのは、日本、韓国、チェコ、メキシコ、台湾、ドイツ、中国、フランス、英国、米国、スウェーデンの11カ国である。 料理、洗濯、そうじのいずれにおいても、日本の場合は、妻の分担割合が8〜9割と最も高いグループに属している。料理と掃除では11カ国中最も高い割合となっている。これは家事時間の男女差が大きい点と整合的である(図録2322参照)。 日本に次いで妻の分担割合が高いのはチェコや韓国である。日本、韓国は高いが、中国、台湾は高くなく(台湾はむしろ低く)、儒教圏だからといって妻の分担割合が高いとはいえない。 日本と対極的な位置にあるのは、米国、スウェーデンである。米国は洗濯で妻の分担割合が最も低く、スウェーデンは料理とそうじで最も低い。 妻の分担割合が低い国は、夫の分担割合も高いがそれより目立っているのは共同の割合が高い点である。特に米国、スウェーデンでは共同の割合が高くなっている。 なお、台湾では「家族以外」の比率が10〜15%とやや高いのが目立っている。これは大家族の誰か、あるいは家内使用人による家事分担が行われているためではないかと思われる。 料理における妻の分担割合の高さは、料理が伝統社会では例外なく女の分担とされていることから近代社会の産物では必ずしもないという点については図録1019参照。 2012年のISSP調査は6つの家事について37カ国を対象に行われており、以上はこのうち3つの家事と主要11カ国を抜き出して整理したものである。以下に6つの家事について37カ国中の日本の位置を表にした。 夫婦のうち主に妻が家事を分担している割合
日本のデータで見ると家事のうちで妻の分担割合が最も大きいのは料理の88.4%であり、洗たくが8割台で続いている。買物、そうじが7割台、家族が病気のときの世話が6割台となっている。最も低いのは自宅での簡単な修理であり21.7%となっている。
37カ国ベースで見ても日本の順位は高いことが分かる。すなわち、洗たくは8位とやや低いが、それ以外は1〜3位となっており、1位も3つの家事に及んでいるのである。 日本におけるこうした妻の家事分担割合の高さは、日本では夫が稼いでいる割合が高いからと考える見方がある。経済学的には、時間当たり賃金が妻より夫が大きい場合、妻の家事を1単位増やして、夫の家事を減らし、夫の仕事を1単位増やした方が夫婦の総所得は増える勘定である。夫婦の家事分担割合と夫婦の所得差は関係していると考えてもおかしくはない。 そこで、同じISSP調査の別項目で調べられている夫婦の所得差についての結果との相関を下図に掲げた(夫婦の所得差については図録2445参照)。確かに日本は夫の所得の方が妻より多い夫婦割合でも対象国中最高となっており、家事分担割合との関係がありそうに思える。 しかし、37カ国の相関係数は料理の場合0.235と余り高くない。実際、チェコ、ロシア、ブルガリア。スロバキアといった旧共産圏、あるいは韓国では、夫の所得が妻を上回る比率はそれほど高くないのに妻の料理分担割合は非常に高く、反対に、英国、米国、フィリピンなどでは、夫の稼ぎはそう低くもないのに妻の料理分担割合は比較的低い。 上の表には、料理以外の相関係数も掲載しておいてが、それぞれの家事の妻の分担割合と夫婦の所得差との相関はいずれもそう高くない。洗たくに至ってはむしろマイナスの相関となっている。 (2009年6月5日収録、2015年10月4日NHKが整理した資料ではなくISSP調査から直接データを得て更新、夫婦の所得差との相関図追加、10月5日改訂、2023年4月26日育児時間の国際比較参考表を追加)
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