自宅で過ごす時間がどうなったかを総務省統計局が5年毎に実施している「社会生活基本調査」のデータで見てみよう。

 調査が2011年、16年、21年と行われているので、2011〜16年の変化がコロナ前の状況、2016〜21年の変化がコロナの影響をあらわしていると捉えられる。

 2011〜16年にはほとんどの年齢階層で自宅生活時間は減少傾向にある。日本人が自宅外で活発に活動する方向にあったことを見て取ることができる。

 そのなかでも55〜64歳と75歳以上では自宅時間が大きく減少している点が目立っている。75歳以上の場合はデイケアなどで高齢者施設へ通う人が増えたという要素もあるだろうが、55〜64歳のばあいは、通勤に加え、趣味・レジャーなどで外出する人が増えたためと考えられる。

 2016〜21年はほとんどの年齢層で自宅時間が増加しており、コロナ禍の影響で学校、職場、買い物などの外出が控えられるようになったという動きが目立っている。

 その中で高齢者はコロナを恐れて若年層より自宅時間が増えたかというと、その反対である。55〜64歳、65〜74歳の自宅時間の増加はそれより若い世代よりずっと少なくなっている。高齢者はコロナ下でも外出をそれほど控えていないのである。

 75歳以上ではむしろ自宅時間がマイナスとなっているが、これは高齢者施設で過ごす時間が増えたためかもしれない。

 トータルに見て、高齢者がもっぱら自宅にいるという状況は過去のものとなりつつあるのである。このため摂取カロリー(食事量)も一般には少食化傾向であるのに対して、高齢層で増加傾向にある(図録0202参照)。

 あくせく働かずに自宅で枯れ木のような生活を送り、人生経験豊富なので横町のご意見番として自宅を訪問してくる後輩たちに知恵を授けるといった老人イメージはもはや過去のものだ。だいたい、時代が大きく変化しているので、高齢者の知恵はほとんど役立たずになっている。

(2024年9月21日収録)


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