コロナ対策として職場に行かず、自宅で働くテレワーク(在宅ワーク)という生活パターンがずいぶん増えた。

 総務省統計局が行っている「社会生活基本調査」は5年ごとの生活時間・生活行動についての調査であり、2021年の調査結果が公表され、2016年からの変化で2020年からはじまった新型コロナの感染拡大の影響を知ることができるようになった。これについては図録2320にデータを掲げたのでご覧いただきたい。

 さらに2021年調査ではテレワーク(在宅ワーク)による影響を知るため、在宅勤務をしている就業者としていない就業者の生活時間の違いを明らかにしている。本題にはいる前に、まず、在宅勤務をしている就業者の割合を確認しておこう。以下のように20代後半から40代にかけては1割近い人がテレワークをしていることが明らかとなった。


 在宅勤務の有無による違いから在宅ワークで生活時間がどう変化したかをうかがい知ることができる。そのデータを図録として掲げた。ここでは仕事をしている人について、若い層から中高年層まで年齢別に25歳から10歳刻みの3段階で在宅ワークによる生活時間の変化をあらわしている。

 在宅ワークした人としなかった人とを比べると年齢によらず在宅ワークで通勤時間が約1時間短縮したことが分かる。その分、何の時間が伸びているかを見ると、仕事の時間はほとんど変わりがない(若い層では少し減らすことができたが)。食事の時間はだいたいどの年齢でも15分前後伸びている。やはり、仕事に出ていると食事時間が切り詰められていたことが分かる。

 年齢によって異なる動きのものに着目すると、25〜34歳の若年層では睡眠が一番伸びている。それまで睡眠不足だったのではないかと想像される。

 ところが35〜44歳の子育て世代ではそうはいかない。睡眠は伸びず、むしろ、育児の時間が伸びていることが分かる。子どもと過ごす時間が取れるようになったのは在宅ワークの大きなメリットである。

 その他の時間では、若い層では家事や趣味・娯楽の時間が増え、テレビを見る時間は減っている。45〜54歳の中高年では睡眠やテレビの時間が増えている。在宅時間が増えても年代によって増やす時間は結構異なっていることが分かるのである。

 一般には余り注目されないが、私が注目しているもう1つの生活時間は「身の回りの用事」の時間である。これについてはこれに含まれるトイレなど本来の生理的時間はそう伸び縮みするはずもない事から、この時間の長短で「おしゃれ時間」の長短が測れるのではないかと考えられる。

 在宅ワークで身の回りの用事時間は若い世代ほど短縮している。通勤などの外出が減り、外出するにせよマスクをしているので全体にお化粧等に要する時間が減っているためと考えられる。家にいるので身の回りの用事に含まれる入浴などは増えていると思われるのでそれを上回っておしゃれ時間が減っていると思われるのである。

 ところが中高年では通勤時間は減っているのに余り身の回り時間は減っていない。在宅時間が増え入浴などが伸びているためか、美容動機が若年層より強いか、どちらかだろう。

 以上、在宅ワークによって年齢差はあるものの生活時間に多少とも余裕ができたことなどの変化がうかがえるが、こうした生活変化は今後も継承されていくであろうか。

 日本は在宅ワークをするようになった人が多いのであろうか。各国比較データが欲しいところであるが見つからなかったので、以下に参考のため、在宅ワーク希望率の国際比較を掲げた。日本の在宅ワーク希望率は調査対象となっている12か国中、もっとも低くなっている。その理由が、日本の労働習慣が在宅ワークに適合的でないからなのか、それともコロナの感染拡大による外出抑制の必要性が低いからなのかはわからない。


(2023年4月9日収録)


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