最新の平均使用年数(凡例に記載)は、いわゆる白物家電(エアコン、冷蔵庫、洗濯機)では10年以上であり、カラーテレビ、乗用車などが9年台でこれに続いている。一方、これらと比べ、パソコンは7.0年、携帯電話は4.3年と短い。 耐久消費財の使用年数の長短を決めるものとしては、 @物理的な寿命 それぞれの商品が磨耗したり毀れたりするまでの商品の寿命 A社会的な寿命(いわゆる道徳的磨耗) 機能や維持費などが改善された新製品(薄型テレビ、省エネ家電、エコカー)や代替商品(デジタルカメラに対するスマホ)が出たり、車検の有効期限の変更など制度が変わったりして買い替えを迫られることによって決まる商品の寿命 の両面がある。@は商品の耐久性向上、長寿命化で伸びるが、Aは技術進歩が激しいと短くなり、一段落すると伸びる。 1992年からの平均使用年数の変化については、最初の折れ線グラフでもだいたいの推移は分かるが、2番目の図には、回帰直線を当てはめた場合の傾きから10年でどのくらい平均使用年数が変化しているかをあらわした。棒グラフは1992年以降、点グラフは、そのうち最近の2005年以降の値を示している。 白物家電及び乗用車については、2005年以降は使用年数がそれ以前と比べて伸びて来ていることが分かる。こうした製品については、耐久性が向上して、故障も少なくなったためであろう。新製品の改良が小幅になったせいもあるかもしれない。乗用車についてはバブル崩壊以後、バブル期にさかんとなったこれみよがしの消費態度、すなわち顕示的消費の要素が小さくなったためもあろう。 税制の変化(エコカー減税等)や法的規制の変化による影響の可能性もある。乗用車の車検の有効期限は、初回購入時から3年目、以後2年ごと(10年目以降も)であるが、道路運送車両法の1995年の改正以前は10年目以降の継続車検は1年だった。10年以上保有しても車検の費用が大きく増加することはなくなったので、乗用車の平均使用年数は、この影響で伸びてもおかしくない。しかし、図を見る限り、長期的には影響しているにしても、法改正の時期に急な変化が生じたようには見えない。 なお、平均使用年数は景気によっても短期的に影響を受ける。1997年の山一證券の破綻、自主廃業に続く大型連鎖金融破綻、2008年秋のリーマンショックを契機とした経済低迷は、翌年度である1998年、2009年度のクルマの買替えを手控えさせたので、1999年と2010年の3月調査における乗用車の平均使用年数はその年だけ伸びている(下の買替え理由の推移も参照)。 カラーテレビは、他の耐久消費財と異なり、平均使用年数が短くなり、最近もその傾向が加速している点で目立っている。ブラウン管時代の大型テレビ、フラットテレビの登場、ブラウン管テレビから薄型テレビへの転換、地上デジタル放送への完全移行(2011年7月)、さらに薄型テレビの大型化、微細表示化と変化が著しいためである。 一方、パソコンや携帯電話などの情報通信分野の電子機器については、以前より、使用年数は伸びる傾向にあったが、最近も同じ程度に伸びていることが分かる。 これは、こうしたIT機器は、新たに登場した当初ほど機能の充実強化の勢いが強いのであるが、普及が進み、一定程度機能が充実してくると、買替えが是非必要という誘因が落ちてくる(少し古いモデルでも十分実用に耐えるようになる)ためと考えられる。 もっとも、パソコンと携帯電話では、登場の時期が異なることもあって、買替えの状況にもやや差がある。 パソコンは、一時期、毎年のようにCPUのスピードが速くなり、メモリー(IC及びハードディスク)が増大し、ソフトの改良も加わって、使い勝手が大きく上昇していた。最近も毎年のように性能が上がっているが、かつてのように使い勝手が格段に変わることはない。 この点を下に掲げた買替え理由の推移から確認してみよう。パソコンについて、以前は、上位品目が欲しいからという買替え理由が50%以上と大勢を占めていたのに対して、最近は同じ理由が20%以下と大きく低下しているのである。なお、2014年に買替え理由の「その他」が急上昇したが、これは、ウィンドウズXPのサポートが2014年4月8日に終了したことに伴う買替え需要の発生によるものである。同様に2020年にも「その他」が急上昇したが、これはウィンドウズ7のサポートが2020年1月14日に終了したことの影響である。 携帯電話も上位品目への買替えの割合が高いが、パソコンと比べて、その割合は余り低下していない。特に2013年調査では上位品目の割合の上昇が目立っていたが、これはスマホへの買替えがこの頃大きく進んだためである。もっとも2017年以降は「故障」が「上位品目」を上回るようになり、やや、パソコンに近づいている。 つまり、パソコンより携帯電話の方が、なお技術進歩が激しく、発展途上の側面が強いことによる違いが認められよう。携帯電話の買替え理由で「その他」が一貫して20%台と高いのは大々的なテレビコマーシャルを使って「お得」を訴えかける料金プランの変更や値引きキャンペーンで継続的に買替えを促す通信会社の販売態度に踊らされている側面もあろう。 (2017年4月12日収録、2019年4月9日更新、2020年4月7日更新、2021年4月30日更新、2022年4月8日更新)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|