「患者調査」は3年に1度、全国で実施されている。2017年調査の調査期間は、2017年10月のうちの3日間の特定の1日。抽出した病院6,427、一般診療所5,887、歯科診療所1,280で、入院・外来患者約228万人の情報を集め集計している。

 患者調査の結果にもとづき、主な疾患の入院患者と通院患者を推計した総患者数については図録2105参照。これによるとがん(悪性新生物)の総患者数は178万人であり、心疾患の173万人、脳血管疾患の112万人を上回っている。

 ここでは、患者調査によるがんの総患者数について、1996年からの推移と最新年の男女年齢別総患者数と対前期増減を掲げた。同調査による胃がん、子宮がんといった各部位のがんの患者数については図録2105参照。また、がんの5年生存率については、図録2160、図録2164を参照。

 がんの総患者数は1999年の127.0万人から2017年の178.2万人へと18年間に4割の増加となっている。高齢化の進展とともに着実に患者数は増えている。

 年齢別では60歳代から特に患者が増えており、高齢者の患者が多い点がこの病気の大きな特徴である。

 男女別では50歳代までは女性の方が多く、60歳代以上は男性の方が多い点が目立った特徴となっている。

 2014〜17年の増減数は、高齢者ほど増加数が多い点、および、ほぼ、どの年齢層でも男性の方が女性より多くなっている点が目立っている。

 総患者数を人口で割って男女年齢別のがんの患者率を算出してみると次図の通りとなる。男性の方が女性より、高齢化した場合にがんに罹患する可能性の高まりが大きく上回っている。特に70歳代では女性2.8%に対して男性は5.3%、80歳以上だと女性2.4%に対して男性6.7%と患者率の差が極めて大きくなる。


 点線で3年前のデータを示しているが男女とも各年齢層で患者率がほとんど変わっていない点が目立っている。この点は糖尿病も同様である(図録2127参照)。すなわち、がん患者の増加は糖尿病と同じようにもっぱら高齢化の要因によるものなのである。

 国立がん研究センターのがん統計ページでは、新たにがんと診断された患者数(フローの値)の対人口比(がん罹患率)は年齢調整後でも増加傾向にあるが、上図の通り、ここで算出した年齢別患者率(ストックの値)はほぼ不変である。がん検診の充実や診断技術の向上で新たに患者となる者は増えているが、入通院しなくてもよくなる患者も同時に同じだけ増えているためだと考えられる。

 がんが大きな話題となるのは高齢者が増えているからである。がんによる死亡率は上昇しているが、年齢構造が同一だとしたらどう推移しているかを見た年齢調整死亡率は下に見るとおり、むしろ、低下傾向にあるのである(図録2080参照)。


(2016年8月14日収録、8月15日罹患率動向との対比、2019年3月5日更新)


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