病院にかかっている認知症患者の数の推移を厚生労働省「患者調査」の結果から掲げた。病院で受診していない患者数についてはカウントされていないので注意が必要である。

 患者調査の結果は2020年まで公表されているが、2020年はコロナの影響があるほか、総患者数の推計方法に変更があり、時系列比較が難しくなっているので2017年結果までを示した。2023年結果が出たら更新しようと考えている。総患者数の推計方法の変更についてはうつ病・躁うつ病の患者数について2020年までの結果を示した図録2150参照。

 認知症患者や認知症死亡率についての国際比較は図録2136参照。

 認知症はどんな病気かを厚生労働省の情報サイトからまとめると以下である(末尾図参照)。

「認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があります。アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。症状はもの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。

 次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さんも多くみられます。(中略)

 年をとるほど、認知症になりやすくなります。日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年現在)と推計され(注)、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されており、高齢社会の日本では認知症に向けた取組が今後ますます重要になります」。

(注)この推計を示した資料はここ(「高齢社会白書」)。これによれば、2012年に462万人と見込まれており、2011年患者調査の51.2万人の10倍近くにのぼっている。

 政府の新しい認知症推計は以下の通りである。


 認知症は、死因としてのマイナスもさることながら、家族を含めた生活困難のマイナスが大きい。日本では両方のマイナスを足し合わせた「寿命・健康ロス」の大きさが病気の中で3番目となっている(図録2050参照)。

 「患者調査」は3年に1度、全国で実施されている。2017年調査の調査期間は、2017年10月のうちの3日間の特定の1日。抽出した病院6,427、一般診療所5,887、歯科診療所1,280(500床以上の病院は悉皆調査)で、入院・外来患者約228万人の情報を集め、全国値を推計している。

 ここでは、患者調査による認知症の総患者数について、1996年からの推移と最新年の男女年齢別総患者数と対前期増減を掲げた。都道府県別の認知症の総患者数は図録2135に掲げた。

 認知症の総患者数は1999年の11.1万人から2017年の70.4万人へと18年間に4.7倍の増加となっている。

 年齢別では60歳代以下では少なく、70歳代以上、特に80歳代以上で多くなっている。男女別では各年齢層で女性が男性を上回っている。

 2014〜17年の増減数では、やはり80歳以上の増加が男女ともに最も多い。70歳代女性が減っているのがやや意外である。

 総患者数を人口で割って男女年齢別の患者率を算出してみると下図の通りとなる。率でも女性の方が男性より認知症になる率は高い。年齢では70歳以上で急増するのが目立っている。


 これは病院で把握されている患者数であり、実際の有病率は以下のようにずっと多い。




(2023年8月8日収録、2024年5月8日新推計資料、9月8日有病率、認知症の主な種類と症状)


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