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  世界の感染状況→図録1951
主要国の感染状況→図録1951d


  2022年までの累積数では、高齢層である80歳以上の致死率(感染死亡率)は5.0%、70代では1.6%となっており、40代までは小数点1位までの比率では0.0%となっているのと比べると大きな値となっている。しかし、コロナが広がりはじめた2020年4月ごろまでと比較すると高齢者の致死率のレベルは大きく縮小したことも事実である。

 なお、感染者数に占める20代以下の比率は46.7%となっており、2020年4月の段階と比較すると2倍以上に拡大している点も目立っている。

 表示選択で見れる海外の事例はいずれも2020年の段階のデータである点に留意されたい。

(以下は2020年4月段階のコメント)

 新型コロナウイルスへの感染による症状は高齢者や持病を抱えている者ほど悪くなる傾向にあるといわれる。しかし、実際のところ、どの程度の高齢者でリスクが高いのであろうか。この点を、新型コロナウイルスと似ていると言われるインフルエンザについて調べた図を図録1955jに掲げた。そこでは、思ったより高齢な者で急にリスクが高まることが分かった。それでは新型コロナウイルスの場合はどうなのだろうか。

 日本国内については、厚生労働省の新型コロナウイルス・サイトの「国内発生状況」からこの情報が得られるので見やすいグラフにした。

 4月25日までの感染者数では50代が2,165人と最も多く、20代が2,109人と次に多くなっている。一方、重症者・死亡者は60代が89人、70代が72人と多くなっており、50代以下はかなり少なくなる。死亡者数は80歳以上が最も多く、70代が次いでいる。40代、30代は一桁の死亡者数となる。20代以下はゼロ人である。

 死亡者数を感染者数で除したいわゆる致死率を計算してみると、80歳以上では11.6%と10人に1人強であり、60代では1%台まで低下する。

 80歳以上の致死率は3月18日時点には23.2%、その後、3月28日に20.7%、4月5日に14.6%、そして4月25日に11.6%とだんだんと下がってきている。後期高齢者への医療的措置が改善されたためか、それとも重症化していた患者のみにしかPCR検査が行われなかったのが軽症者まで検査がされるようになったためか、いずれかであろう。全体として検査陽性率は低下して来ていないので、後者とは考えにくい。

 致死率の年齢傾斜からは、インフルエンザと同様、感染のリスクが超高齢者で特に高いことが分かる。少なくとも現在までの日本の場合では、若い世代は、自分が感染すること自体は恐れることはなく、むしろ、動き回って、身近な高齢者や社会全体に感染を広げないようにすることが重要だということが分かる。

 ヒトに感染するコロナウイルスは今回の新型を含めて7種類。うち4種類は通常の風邪を引き起こすウイルスであり、主に子どもが感染する。ところが、コロナウイルスのうちで2002年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を起こしたウイルスや12年に出現した致死率30%のMERS(中東呼吸器症候群)を引き起こしたウイルス、及び今回の新型コロナウイルスは大人の感染が多い。また、何故かは謎らしいが、免疫のある大人で過剰な免疫反応が起こって重症化する可能性があるという(朝日新聞be「はてなスコープ」2020.3.21)。

 一方、若い世代の感染者数は、3月18日時点では、かなり少なかったが、それ以後、急速に拡大している点が注目される(こうした年齢構造の変化については全国と東京の若者感染者比率を比較した図録7890も参照されたい)。

 新型コロナウイルス感染の年齢構造は、日本特有のものなのだろうか、それとも各国共通の現象なのだろうか。この点を、確かめるため、表示選択で、感染者数が多い韓国と中国(湖北省)の例を掲げたので必要に応じて参照されたい。

 年齢的には、感染者数では20代の感染者数が極端に多い点が特徴であり、日本は少し以前は韓国と全く異なっていたが、今では韓国に近づきつつある。年齢別致死率では日本とほぼ同様であり、80歳以上がやはり高くなっている。

 韓国における感染者数の多さと20代の感染者が特に多い点、あるいは致死率の低さには、ドライブスルー検査などを広く実施したというような、韓国特有の検査状況が反映されていると考えられる。

 朝鮮日報日本語版(2020.3.23)は「怖いもの知らずの青春」というタイトルで20代の感染者が多い点を次にように報じている。韓国の疾病管理本部が新型コロナウイルス感染者7755人と死亡者66人を分析した結果によると「20代の感染者が全体の29%を占め、世界的に見ても非常にまれなケースであることが分かった。これは、大邱地域の新興宗教団体「新天地イエス教」の若い信者だけでなく、全国的な現象だった。また、新型コロナウイルス感染症による死亡者の5%は基礎疾患がない状態で死亡したことも分かった。新型コロナウイルス感染自体は女性(62%)の方が多いが、死亡は男性(56%)の方が多いことも調査で明らかになった」。また、「高麗大学九老病院感染内科のキム・ウジュ教授は「若者たちは社会的距離を置くなどの感染症予防に消極的で、社会活動が多い若者層が、親や祖父母に家族内2次感染を引き起こす形で広がるケースが多いことが確認された」と語った」という。

 中国湖北省の事例については、まず、致死率に注目すると、80歳以上がもっと高く、日本とほぼ同様の年齢別の構造であることが理解される。ただし、80歳以上の致死率は日本より低いが、80歳未満の各年齢層では日本より致死率が高かったことにも留意が必要だろう。

 中国湖北省の年齢別割合を見ると、人口では30代が最も多く、80歳以上は非常に少なくなっており、まだ日本のように高齢が進んでいないことが分かる。死亡者数では韓国と同じように70代が最も多くなっている(60代も70代と同じぐらい多いが)。

 人口の年齢構造や感染の広がりの状況に違いがある日本、韓国、中国湖北省という3地域で、年齢別の致死率については、若い世代は極めて低く、また80歳以上が70代のほぼ2倍かそれ以上である点は共通しており、同じ呼吸器ウイルス疾患であるインフルエンザとも共通する新型コロナウイルスの特徴といえよう。

 イタリアの新型コロナウイルスによる死者数は中国を上回った。イタリア国立衛生研究所の3月17日の発表によると、イタリアでは「感染による死者のうち、3つ以上の疾患を抱えていた人は49%。全く疾患がなかった人は0.8%にとどまった。死者の76%は高血圧で、36%は糖尿病にかかっていた。感染者の平均年齢は63歳だが、死者の平均は79.5歳と高い」という(産経新聞2020.3.20)。感染リスクは、イタリアでも中国や日本と同様の年齢構造だということがうかがわれる。

 男女別には、米紙ワシントン・ポスト(3月20日)によると、感染拡大が深刻な中国、イタリア、韓国のいずれも男性の方が多く、最も顕著なイタリアでは7割以上を占めるという(共同通信2020.3.21)。喫煙習慣の男女差も影響しているだろうが、この点も、同じ呼吸器疾患であるインフルエンザと共通と言える。

 表示選択で4月の半ばまでにWHOに報告された71万症例の年齢別構成とその推移を掲げた。これを見ると、世界全体でも50歳代がピークである点、また時系列的に20〜39歳の割合が上昇し、60歳以上の割合が縮小する傾向になることが分かる。

 世界とともに掲げたスウェーデンの例で見る通り、高齢者施設でのクラスター(集団感染)発生を防ぐことができなかったため、感染者が高齢者に片寄っている国もある。

 最後に、年代別の感染者数と60歳未満割合の推移を全国と東京都について掲げた。感染者数が急増をはじめた3月最終週頃から60歳以上割合が急速に低下したことが分かる。東京都に関しては、全国に先行してかなり以前から同割合が低下してきていることが分かる。

 つまり、確かに感染者数の急増が目立つようになっているが、その内訳は、軽症が多い60歳未満が中心であり、重症・死亡に至りやすい60歳以上は全体ほど増えていないのである。これは、重症・死亡リスクが高い患者に絞って行う傾向があったPCR検査がだんだんと軽症者にまで拡大してきているからだと思われる。その結果、全体の感染死亡率は半減となっている(図録1951d参照)。

 60歳以上感染者の傾向的縮小は表示選択で見ることができる世界的傾向と同じ方向である。ただし、図録1951dで見るように世界では若年者割合の上昇にもかかわらず死亡率はむしろ上昇傾向をたどっており、日本はこの点では違う方向である。

 なお、日本や東京での60歳以上感染者の傾向的縮小は4月の中旬頃までであり、それ以降はほぼ横ばいで推移している。再びPCR検査の拡大に限界が生じたためかもしれない。


(2020年3月21日収録、3月23日日本データ更新、3月24日韓国データ更新、朝鮮日報3/23記事、3月26日コロナウイルス解説、3月29日日本データ更新、4月7日日本データ更新、4月10日中国新型コロナ症例紹介削除、4月14日インフルエンザ年齢別(再掲)にかえて年代別感染者数推移図掲載、4月19日表示選択に世界動向、4月23日「年代別感染者数の推移」更新、4月27日更新、5月12日スウェーデンの事例、8月6日世界の年齢別構成推移新データ追加)


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