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人口当たりの感染者数・感染死亡者数の推移図(札幌医科大が3月24日から同じWHOデータの人口当たり推移図を公開しているサイト)

対象国以外を含め最新及び過去の各国データは資料出所であるWHOの状況報告のページあるいはWHO COVID-19 Dashboardをご覧ください。


 中国からはじまった新型コロナウイルスへの全世界的な感染が欧米中心にさらにパンデミックの様相があらわとなった。

 世界全体の感染状況については図録1951で示しているが、ここでは、感染者の多い主要国について3月以降の感染者数、感染死亡者数の推移を掲げた。データは同図録と同じく、各国政府の公式報告を受けて取りまとめているWHOの状況報告によっている。各国の自治体・報道発表などからやや遅れた数字となるため、新聞・テレビでは、こちらより多いジョンホプキンズ大学がまとめているデータなどが報道されているが、時系列的な変化を追うには、より確定性が高いと考えられる。

 中国の死亡者数データは4月17日時点から上方修正されたが過去に遡及して修正されてはいない。

 年齢別の感染者数、死亡数、致死率(日本、韓国、中国)は図録1951f参照。

 米国、イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどの欧米主要国で爆発的な感染拡大が目立っていた。うなぎ登りという語がまさに当てはまる。

 ロシア、ブラジルは、以上のような先発国に続いて感染が拡大している感染拡大後発国であり、今や世界第2〜3位の感染者数となっている。5月20日から両国を図に追加した。

 感染者数・死者数で米国が抜きん出て多くなっている。

 また、イタリア、スペイン、フランス、英国の人口は5〜6千万人、イランは8千万人とそれほど多くはないのに、死亡者数は人口13億人の中国を大きく上回っている。

 東京新聞(2020.4.9)によると、フランスのほか、イタリア、スペインなどでも死者数の集計から自宅あるいは介護施設で死亡した場合、感染の有無を調べず、死亡者数に算入されない場合が多い。実際の死者数は公表値を大きく上回っている可能性がある。

 フランスの死亡者数は4月に入って急増し、6日に1万人を越えている。同紙によると、仏当局は1日まで病院での死者数のみ公表していたが、メディアなどの指摘を受けて高齢者施設での死者数も集計した結果、死者数が大幅に増加したという(7日時点で全体の31%)。フランスの死亡者数の日によっての急激な増加はこうした事情が反映しているだろう。

 英国の死亡者数について4月30日の増加数が4,419人と急増したが、これも、これまで病院での死者のみを集計していたのを自宅や介護施設などでの死者も統計に含めるように方針を変更したためである。

 その後、英国の死亡者数の増加率は大きく、5月6日以降は米国に次ぐ世界第2位、欧州最多となっている。その理由について、東京新聞(2020.5.15)は、英メディアの報道などを参照して7つの要因を挙げている。@封鎖の遅れ(デーリー・テレグラフ)、A検査不足(BBC放送)、B肥満率の高さ(リバプール大)、C大気汚染(ガーディアン)、D海外往来の多い大都市ロンドン、E高齢者施設の医療体制の不備、Eマスクの不浸透。

 イタリアでも5月14日に死者数の上方修正が行われている(これは翌日修正、数字のミスだったようだ)。

 ベルギーの死亡者数が人口当たりでは世界ワーストとなっている(下図参照)。4月27日までの感染死亡率は15.3%とフランスの18.4%に近い。しかし、これは、「ほかの多くの国と違い、感染未確認の老人ホームでの死者も疑い例として当初から集計に算入してきたためだ」という。「病院で亡くなった人が46%だったのに対し、老人ホームは53%。後者のうち検査で感染が確認されたのは8%にとどまり、残りは疑い例だ。これは検査態勢が当初不十分だったことを踏まえた判断。政府は、病院以外の感染の広がりを把握し「必要な場合に素早く対応できる」(担当者)と説明している。中国の情報隠蔽疑惑に加え、欧米各国で統計未算入の老人ホームでの感染拡大が問題視されている中、ベルギーの対応は際立っている」(ヤフー・時事2020.4.27)。ただし、過大データから風評被害による観光への悪影響も問題になっているという。

 当初感染の中心だった中国は、3月以降は、感染者数、感染死亡者数ともに微増、横ばい傾向である。韓国や日本も中国とはレベルの差が大きいが、動きとしては中国に似た傾向が認められる。

 イランの感染拡大の動きは、一時期、イタリアとともに世界の中で目立っていた。今も感染拡大は続いているが、欧米諸国の急増と比較すると目立たなくなりつつある。

 欧米諸国の中では、イタリア、スペインの動きが突出していたが、フランス、ドイツ、そしてその後、米国、英国の急増が目立つようになった。

 特に、米国の急拡大は著しく、影響力の大きい国であるだけに、世界の中で最も注目される動きとなっている。3月29日にはイタリアを抜いて世界1位の感染者数となっている。死亡者数も4月13日にはやはりイタリアを追い抜き、世界1となった。

 なお、米国は5月4日に死者数が、5月10日に感染者数が下方修正されている。

 最近は、新たに図に加えた後発国のロシア、ブラジルの感染者数、死亡者数が急増している。

 感染者数と感染死亡者数の動きを見比べると、ドイツの死亡数が感染者数に対してレベルが低い点が目立っている。こう見えるのは何故かについては、下の感染死亡率のコメントでふれている。後発国のロシア、ブラジルの死亡率も低いが、報告漏れだという見方も強い。

 世界全体の動きをフォローする上で注目すべきは、こうした主要国の合計を世界全体から引いた「その他」の動きである。

 感染者数では、「その他」の拡大傾向はイタリアを追い抜き、すでに中国を上回っている。世界の津々浦々に感染が広がりつつあることを、これは如実に語っている。

 「その他」の感染者数は急増する米国を下回っていたが、その後、米国と同等水準に至っている(図録1951に掲載している過去1週間の感染者増加状況を参照)。

 感染死亡者数では、「その他」の拡大傾向はイタリア、スペイン並みというより米国並み、そして米国以上になっており今後が憂慮される。主要国に遅れて感染拡大がはじまった後発国のロシア、ブラジルやその他の国々が、主要国並みの危機的な状況に移行しつつあることが理解されよう。

 「その他」で感染拡大が最近目立っているのは、南米、中東などである。

(経過日数別対数目盛の感染者数、死亡者数)

 新型コロナウイルスによる感染の推移を的確にあらわす図として、感染拡大のはじまりからの日数別に累積感染者数や死亡者数を対数目盛のY軸グラフで示したものが、海外の論文や記事で頻繁に使われるようになったので、ここでも描図した。感染拡大のはじまりは累積数が感染者100人以上、死亡者10人以上とされることが多いが、ここでは感染者数は通常の100人以上、ただし死亡者は15人以上とした(注)

(注)データをWHOではなく通常マスコミで使われるジョンズ・ホプキンズ大学のものにして、5月4日確定日までの経過日数別の対数グラフを作成し、これをもとに各国動向を整理した記事をプレジデントオンラインに掲載したので参照されたい(ここ)。この記事では各国動向だけでなく日本の都道府県や都内各地区の動きも同様に対数グラフで追っている。

 これで見ると、日韓以外の諸国はだいたい同様なカーブで感染者数が拡大していくことが分かる。中国、イタリア、スペインの感染拡大は他国と比べて早かっただけで、はじまってからは同じように拡大したといえよう。ただし、米国は当初出遅れた分だけ(あるいは見過ごしていた分だけ)、その後、急拡大したことがうかがわれる。

 後発国のロシア、ブラジルは先発国を上回る感染拡大が顕著となっている。

 日韓は感染拡大のペースが全体としてその他諸国に比べ低い点が目立っており、両国民は抗体をそもそも有していたというような体質的な差がないとすれば、感染の押さえ込みに成功したともいえる。

 藤田医科大の宮川剛教授はBCGの集団接種している国とそうでない国とでは感染率、死亡率に明らかな統計的差異があるとしている。すなわち@日本、韓国などBCGワクチン接種を続けている国、A英国、ドイツなど既に結核は流行していないとして接種をやめた国、B米国、イタリアなど元々摂取していない国に分類するとこの順に新型コロナの影響が大きいのである。生きた結核菌の毒性を下げて注射するBCG接種が自然免疫を強化しているとも考えらるが、医学的な因果関係は未解明であり日本ワクチン学会は「否定も肯定も推奨もされない」としている(東京新聞2020.4.25)。


 確かに上図を見るとこの点は印象深い。隣国同士(スペインとポルトガル、英国とアイルランド)でも定期接種の有無でかなり死亡率に差がある。しかし、中国・日本とそれ以外との差はさらに大きく、BCGだけで理解されるのだろうか。

 日本の感染拡大の軌跡は、放物線状に、当初の急拡大からある程度の日数が経過すると拡大ペースが低下するという日本以外の国の特徴が見られず、感染拡大のペースが落ちていかない点が目立っていた。もっとも最近は傾向線からの下降傾向が認められる。

 日本の特殊な軌跡は異なる株の新型コロナウイルスの継起的な感染によるものかもしれない。国立感染症研究所は国内の検体からのゲノム解読と世界各国のウイルス情報から分析し、「国内で初期に発生した複数のクラスター(感染者集団)やクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の患者から検出されたウイルスは、1月初旬に中国・武漢市で検出されたウイルスと関係が深いと推定された。このウイルスは3月以降、国内で広がることはなく、終息したとみられるという。一方、これに代わって国内で確認されるようになったウイルスは、武漢市で確認されたウイルスよりも、欧州各国で感染を広げたウイルスの遺伝子に特徴が近かった。3月以降、欧州など海外からの旅行者や帰国者を通じて全国各地に広がった可能性があるという」(朝日新聞2020.4.28)。「感染研は、日本では中国からの第1波について濃厚接触者をいち早く探知して抑え込み、収束へ導くことができたと分析していて、ダイヤモンド・プリンセス号のウイルスについても日本では終息したとしています。しかし、渡航の自粛が始まる3月中旬までに欧米経由の第2波の流入を許し、数週間のうちに全国各地に伝播したと指摘しています。さらに今後、第3、第4の波が来ることは必然で効果的な感染症対策の構築を図るとしています」(同日、テレビ朝日ニュース)。

 当初のウイルス株には効果が大きかった保健所機能を活用したクラスターつぶしという押さえ込み戦略も欧州などからの伝播には太刀打ちできなかったのかもしれない。

 その結果、日本の感染者数が4月20日に、死亡者数が4月22日に韓国を上回るに至っている。ただし、日本の死亡者数が4月21日の186人から22日の277人へ急増したのは、報告の遅れを取り戻したためであろう。この点は、ここでは掲げていないが、各国政府の公式データ以前に自治体公表段階のデータを反映させるジョンズ・ホプキンズ大学のデータと比較すると確認される。

 累積死亡数の対数グラフの方を見ると、欧米諸国はだいたい同様なカーブで感染が拡大していることが分かる。例えば、イタリアに比べドイツの死亡者数は非常に少ないが、当初、それは拡大開始時期が遅いだけという側面が大きかったことが理解される。ただし、その後のドイツの死亡者数の動きは明らかに下方に寝ており、ドイツの対策が功を奏していると見なせる。

 ただし、米国は感染者数の動きと同じように、欧米諸国の中でも感染拡大のテンポとレベルについて、出だしは遅かったが、その後は特段に著しい動きとなっていることが分かる。特に最近、死者数の伸びが著しいのが目立っている。

 また、実数では把握しがたかった動き、すなわち中国とイランは、初期は欧米と似ているが、途中から欧米より拡大スピードが落ちる点、また韓国と日本は、そもそも、最初から低空飛行が特徴である点などを見て取ることができる。

 日本の場合、死亡者数の拡大ペースが余り落ちない点が懸念材料となっていたが、やはり、韓国の死亡者数を上回る結果となった。

(感染死亡率の動向)

 WHOに各国が報告した感染者数と死亡者数の値から死亡率を算出し、推移をグラフ化した図を表示選択で見てみよう。この値は、致死率と呼ぶこともできるが、疫学上というより統計上の致死率なので、ここでは感染死亡率、あるいは単純に死亡率と呼んでおこう。

 この死亡率の推移や水準の違いをどう考えるかはかなり微妙であり、要因探しにはかなりの注意が必要である。

 まず、中国の値は他国と比較して少し変である。というのは、どの国でも死亡率は上がったり、下がったりしているのに、中国の場合は余りに安定的に推移しているからである。

 中国の計数は操作されているという側面も無視できないだろうが、むしろこれは、中国の場合、他国に先んじて感染状況が安定化してきたためであり、他国もいずれは同じような死亡率の安定的推移に到達するととらえることもできる。確かに患者数が急増していた3月より以前の死亡率の推移を見てみると2月の後半に2%水準から4%近い水準へと大きく上昇しているのである。

 主要国の動きを観望すると、欧米は押しなべて死亡率の高レベルと上昇傾向が目立っている。その中ではイランは死亡率が低下に転じている点が目につく。ドイツは非常に低いレベルで死亡率が少々している点が目につく。米国は低いレベルから欧州レベルに近づきつつある点が目につく。

 イタリアと比較した場合のドイツの死亡率の低さの要因については、英エコノミスト誌は以下の3点を指摘している(The Ecomist March 28th 2020)。
@ 検査数の多さや高齢者に偏っていない検査対象
ドイツの検査規模はイタリアと比較にならないほど多く、軽症の感染者も多く見つかっている。また、検査対象の年齢構成も相対的に若い。検査対象者の平均年齢はイタリア63歳、ドイツ47歳である。その結果、感染者数の60歳以上比率は、両国人口の高齢化率はそう変わらないのに、イタリアが56%に対してドイツは20%である。当然、死亡率はドイツの方が低くなる。
A 遅い感染拡大開始時期
新型コロナウイルスへの感染によって死に至るとしても感染から数週間後である。イタリアにおける最初に死者が出たのは2月22日であり、ドイツはそれから2週間遅れている。ドイツの患者の死亡数が大きく増加するのは今後である可能性が高い(表示選択の対数グラフ参照)。
B 地域集中による医療崩壊が少ない
イタリアの感染拡大はロンバルディア州に集中していたのに対して、ドイツの感染症例はいくつかのホットスポットに分散していた。ドイツの医療システムの優秀性も死亡率の低下に寄与した。
 一方、中国、韓国、日本といった東アジア諸国は死亡率が相対的に低く、また動きも横ばいに近い。日本は、むしろ、けっこう長い間低下傾向だった。

 こうした欧米と東アジアの死亡率のレベルや動きの差を社会的な対応の違いだけで説明するのは難しく、生物学的なウイルスへの耐性の違いを想定せざると得ない。

 次に、上のドイツの例なども参考にしながら、一時期の日本の死亡率低下傾向について考えて見よう。

 死亡率の上昇には以下の3要因が考えられよう。
  • ウイルスそのものが強毒化しているから(ウイルス変性要因)
  • 感染者数の増加スピードに検査体制が追いつかず、検査漏れの患者数が増え、検査が重症者に偏るから(検査要因)
  • 患者数の増加に医療体制が追いつかず、みすみす助かる患者の死亡が増えているから(医療要因)
 死亡率の低下には、国民全体が抗体をもつようになるという要因を除くと、これら3要因が逆方向に働いているということが考えられる。

 ウイルス変性要因は考えないでおこう。

 日本の死亡率は一時期上昇が続いていた。この時期、病床にはまだ余裕があり、医療要因は考えにくい。ということで、検査要因を指摘する声が主流だった。

 ところが、東京など都市部を中心に感染拡大の勢いが目立つようになった、3月最終週あたりから、死亡率は低下の一途をたどっている。3月23日の3.8%から現在は1.6%と半減以下である。何故か、この点が余り注目されていない。

 日本のように死亡率の低下が目立っているのはイランである。イランの場合は医療崩壊が克服されつつあると考えることもできる。日本の場合は、そもそも医療崩壊していないのでそうは考えられない。

 感染拡大の中では、死亡率の上昇には医療要因がありうるが、死亡率の低下には医療要因は考えらない。そうなると検査要因だけが残る。つまり、不足していた検査がかなり行われるようになって、感染者数が実態に近づき、若い年代の軽症者が多くなってきて、見掛け上、死亡率が低下していると考えることができる(年代別感染者数の推移については図録1951f参照)。

 しかし、そうだとすると、3月最終週から顕著となった感染拡大は、単に、それまで把握されていなかった感染者が数字にあらわれるようになっただけということになる。

 こうした理解の帰結としては、もっと前から恐れているべきだったのに対策が遅れたという見方が1つ。また、感染拡大は急カーブに転じたわけではなく欧米のような感染爆発ではないので、対策は強化するにしても、現在の中国や韓国のように日本は比較的安心という見方がもう1つであろう。

 最近は日本の死亡率低下もさすがに底を打ち、上昇に転じたようだ。死亡数報告の遅れのラグなのか、医療崩壊への兆しなのか、それとも検査数の絞りや検査数拡大の限界のせいなのか。

 5月20日から新たに図に加えたロシア、ブラジルの死亡率、特にロシアの死亡率は欧米先発国と比較してなお低い水準である。両国では死亡者数の報告が過少であるとの見方がある。ロシアについては、BCGの予防接種が行われており、しかもワクチンの株が日本株と近いものだという理由も低死亡率の要因として挙げられている。

(2020年3月27日図録1951から図録として独立、3/28更新・英国追加、3/29〜4/8更新、4/9更新、フランス死者数コメント、4/10・4/11更新、4/12更新、表示選択にした上で感染死亡率図、死亡者数(対数)図追加、コメントも、4/13更新、ドイツの低死亡率の要因分析、4/14〜4/25更新、4/26日更新、BCG接種が影響している可能性、4/27更新、ベルギー事例、4/28更新、BCG接種有無別死亡率、複数のウイルス株、4/29〜5/20更新、5/21更新、感染者数世界2〜3位のロシア、ブラジル追加、5/21〜5/27更新、5/28更新、インド追加、5/29以降原則毎日更新)


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