当図録は最初に、2008年当時、世界的な穀物価格の高騰や食糧をめぐる騒乱から食料自給率への関心が高まっている時期に作成された(穀物価格の高騰については図録4710参照)。

 小麦や米など穀物は、高い栄養価をもつと同時に、腐りにくい貯蔵性・流通性の高い作物であることから、生産者の必要分以上の量の生産が可能となった地域では階級社会や分業社会を発生させ、その結果いわゆる四大文明など文明社会が誕生する基礎ともなった。

 食料自給率と言えば穀物自給率を指す場合も多い。カロリー自給率は多くの農水産物に関して幅ひろく数字が得られカロリー原単位も明確となっていなければ計算できないため各国で統一基準で比較することは難しかった。穀物自給率は、穀物の生産、輸出入等が分かれば計算でき、しかも多くの国で穀物が主食をなし、また下図のように畜産のもととなる飼料の多くをトウモロコシなどの穀物飼料が占めているため、合わせて食料問題を読みとるための重要指標の1つと見なされていた。


 最近でも世界各地のなるべく多くの地域の食料自給率を比較しようとする場合には、穀物自給率が適している。

 まず、世界の主要国(OECD諸国と人口1億人以上の国)の穀物自給率を高い国から並べた棒グラフを掲げた。日本は28%と極めて低い水準であり、順位も下から6番目である(日本の穀物自給率の推移は図録0310参照)。

 特に人口1億人以上の大国の中では群を抜いて最低の自給率となっている。人口大国は国の安定を確保し周辺の国への脅威となることを避けるため最低限の自給率は維持しようとする力が働いていると考えることが出来るが、日本は例外である。

 更新前の2003年データでは、そう大きく100%を切っていたわけではないがそれでも100%未満であったブラジル、中国、インド、バングラデシュ、ロシアといった人口大国が、いずれも2013年には100%を超えている。

 次に世界173の国の穀物自給率を人口規模との相関で描いた図を掲げた。人口規模が大きい国ほど自給率は高いという正の相関が成立している。人口大国では80〜120%程度の自給率を保持しているのが通常であり、また人口小国の中には都市国家に典型的に見られるような低自給率国も多いということからこうした相関が成立しているのだと考えることができよう。

 この相関図に書き入れた回帰線から最も下方に乖離しているのが日本であり、やはり自給率に関して日本の特異な状況を示している。

 世界の穀物自給率を世界地図に落としたマップは図録0319に掲げた。

(2008年5月23日収録、2019年8月7日更新、2023年6月15日用途別数量図)


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