15歳から注目を集め出したスウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリが何かとメディアに登場しているのは、若いからという理由もあろう。 また、2022年後半の段階で、ゴッホの名画『ひまわり』にスープをかけるなど、環境活動家による激しい抗議活動が続出しているが映像として登場するのは決まって皆、若者である。 こうした動きの背景に、若者による親の世代に対するプロテストという環境保護意識とは別種の、ある意味では不純な動機が隠れていると感じるのは私だけだろうか。 OECDが実施した政府等への信頼度に関する調査では、政府は温暖化を防ぐための環境対策を優先すべきかについての意識を各国で調べている。 環境優先度の意識が最も高かったのはアイルランドの68.8%であり、英国、アイスランドがこれに次いでいた。他方、意識が最も低かったのはデンマークの34.5%であり、エストニア、ラトビアがこれに次いでいた。 日本は51.8%であり、中間的な位置にあるといえよう。 一方、年齢格差については、興味深い結果が得られている。 OECD各国では、若い層(ここでは18〜29歳)のほうが、高年層(ここでは50歳以上)よりも環境優先度の意識が高いのが普通になっている。データの得られる18か国のうち4カ国を除いて、すべて若い層マイナス高年層の値がプラスとなっているのである。 より後代まで生きる若い層の方が遠い将来について気に懸けることが多いはずであり、環境悪化に若者の方が敏感だということを表しているとも見れるこの結果は至極当然とも言えよう。 この値がマイナス、すなわち若い層の方が環境優先度意識がむしろ低い国として目立っているのは、日本と韓国である。 日本や韓国や「自然との共生」意識は欧米諸国と比較しても高いという意識調査の結果も得られている(図録9490)。ところが年齢格差では、先進国一般と異なり、若い層の方が地球環境の保全には消極的であるのは何故であろう。若者ほど共生というより利用に重きをおいた欧米流の自然意識が強まっているせいなのかもしれない。あるいは、冒頭にふれた私の仮説が正しければ、欧米と比べて親の世代へのプロテストという動機が弱いからであるという可能性もある(例えば図録3083で見たように若者の失業率の高さが欧米ほどでない)。 下には、類似の意識調査を掲げた。世界価値観調査によるものであるが、設問が、環境保護について、経済成長や雇用創出と両立できない場合、どちらを優先すべきかという聞き方になっており、上の調査と比較して、温暖化対策に限定しない環境保護一般についてきいている点、また、必ずしも政府への要求ではない点が異なっている。経済との優先順位をきいているので回答者自身に厳しい選択を迫るものとなっている。 このため、環境優先度意識の程度についても結果はかなり違っている。例えば、日本は、他国と比べて、環境優先の意識がかなり低いレベルとなっている。 しかし、年齢格差については、日本の若い層が高年層より環境優先度がかなり低い点(こちらではOECD諸国でもっとも年齢格差が大きい)が共通である。 なお、若い層の方が高年層より環境を重視している点は、33か国中、年齢差の値がプラスが23か国、マイナスが10か国と前者の方が多いことから同じだと考えられる。 (2022年11月25日収録)
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