フランスの世界的な調査会社であるイプソス社は、世界各国を対象に定期的に幸福感(happiness)調査を実施している。2025年報告書では幸福の要因を17項目できいた調査の30カ国の結果が掲載されている。
調査の趣旨、及び日本の結果と世界平均の比較については図録9476参照。 図には所得水準順に並べた国ごとに幸福要因ランキングを示した。これを見ると以下のような点を読み取ることができよう。 〇家族・子ども、感謝・愛の2項目がトップランクの国がほとんど自分を取り巻く人たちとの親しく、また充実した交流をあらわす「家族と子どもたち」および「感謝され、愛されている感じ」が幸福の2大要因であるが、ほとんどの場合、日本を含め各国で1〜3位となっており、世界的な共通性が認められる。両方、あるいは片方が1〜3位に登場しない例外はスウェーデン、タイ、インドの3か国だけである。〇家族・子どもにパートナーが含まれる国とそうでない国「家族と子どもたち」は幸福要因として多くの国でトップランクにあるが、「パートナーとの関係」のランキングとの関係はさまざまである。両者のランキングが近いのはオランダのようなケースであり、両者のランキングが大きく異なっているのはトルコのようなケースである。前者では家族にパートナー(配偶者)が含まれ、後者では家族にパートナーが含まれず、幸福要因としては子どもたちが中心と考えられる。 パートナー重視のオランダのような特徴の国は、そのほか、カナダ、ポーランド、ハンガリーなどが当てはまる。反対に、欧米諸国でも米国、スウェーデン、オーストラリアといった国ではパートナーは幸福要因としては余りランクが高くない。 一方、パートナーを重視しないトルコのような国は所得水準の低い途上国に多い。その場合、パートナー以外の家族として、子どもたちだけでなく同居している親や兄弟なども幸福要因となっている可能性があろう。 〇経済的な要因が強いかどうかは所得水準と無関係貧しい国ほど、すなわち右側の国ほど「経済的な状況」を幸福の要因としてランキング上位となるかと言うとそうではない。各国の所得水準の高低との相関はないといってよい。以下には所得水準と比例して「経済的な状況」を幸福の要因、あるいは不幸の要因としてあげるものが多いかを確かめたグラフである。両者とも、右上がりでも右下がりでもなく、幸福の要因も幸福でない要因も所得水準と無相関であることがうかがえよう。![]() 〇経済的な要因が強いのはアジア諸国「経済的な状況」が幸福の要因ランキング4位以上なのは、スウェーデンを除くと、韓国、日本、マレーシア、タイ、インドネシア、インドといずれもアジア諸国(特にタイは1位と高い)。シンガポールは5位、中国は7位とアジアの中では5位以下とやや低い。〇国によって特にランキングが高い幸福要因がある
〇スウェーデンはヨーロッパの中でも特異な幸福観図を見ただけでもスウェーデンのランキングが周辺の国と大きく異なっていることが分かる。スウェーデンはランキング順が@経済的な状況、A自国の社会的・政治的状況、B身体的健康、C精神的健康となっており、各国平均で1位の「家族と子どもたち」が8位と低く、「友人」、「パートナーとの関係」もそれぞれ、12位、13位と各国平均より低い。すなわち、個人的な状況や国の状況と関わりが深く、身の回りの人びとと関わりが薄いことが特徴である。〇信仰生活が幸福の要因である国は限られる線の色付けが及んでいないので分かりにくいが、「信仰や精神生活」の順位は、インドネシアが5位でもっとも高く、マレーシア、ブラジル、南アフリカが6位、コロンビアが8位で続いている。その他の国はすべて10位以下である(日本は14位、スウェーデンが17位で最低)。イスラム教国や原始宗教を残した国で宗教生活の意義が大きいといえよう。〇日本はパターン的に世界と共通だが健康要因は強くない下表で世界順位との差を確認すると「精神的健康」の順位が低いのと「パートナーとの関係」の順位が高いのが目立っている。日本人は、案外、配偶者を幸福要因として大きくとらえているのである。米国の順位の世界順位との差を参考までに掲げたが米国の方が大きな差の要因がなく、世界標準に近くなっている。
対象となった30か国は図の順に、シンガポール、アイルランド、米国、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ドイツ、オーストラリア、フランス、カナダ、英国、韓国、イタリア、スペイン、ニュージーランド、日本、ポーランド、ハンガリー、マレーシア、トルコ、チリ、アルゼンチン、メキシコ、タイ、ブラジル、コロンビア、ペルー、インドネシア、南アフリカ、インドである。 (2025年6月5日収録)
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