日本は島国であるとともに、周辺海域の大きな海洋国家でもある。前者については、海岸線の長さを示した図録9400を参照のこと。ここでは後者についてふれる。

 周辺海域の大きさとしては、領海面積と言うより、排他的経済水域の面積を示すことが適切であろう。排他的経済水域とは、周辺海域であって、優先的に資源利用・開発を行うことの出来るかわりに資源の管理についても責任を持たねばならない国際的に認められた領域を指す(定義は下注を参照)。

 日本は人口規模では世界第11位であり、国土面積では、世界第63位である(図録1167参照)。それでは支配権が及ぶ海洋面積では何位であるかを見たのが上図である。

 ここでは、領海を含めた排他的経済水域の面積を掲げているが、日本は、447万平方キロと国土面積38万平方キロの約12倍と大きく、世界第6位となっている。日本は海洋国家としては大国であることが理解される。

 気づく人は気づくと思うが、世界の大国の中で上図に出てこない国がある。中国である。米国、ロシア(旧ソ連)は上位であるのに中国は顔を出さない。東シナ海、南シナ海のすぐ前面に島国の日本とフィリピンが存在しているために排他的経済水域の面積が大きく取れないからである。これを理不尽と感じ、世界経済、世界政治で実力を増すにつれ、それに応じた海洋覇権を近隣国と争う姿勢を強めつつあるのが現状なのである。下は中国と周辺国の領土紛争(territorial disputes)への各国国民の関心度を示したマップであるが、そうした状況を周辺国側から示している。


 中国はおそらく最終的には国際法上の排他的経済水域の制度そのものを人口比例の要素を加味したものに改変しようとするだろう。日本はただ現状の国際法上の枠組みの維持を主張するだけではこれに抗しえない。海洋利用をどの国にどの程度任せると人類全体の厚生にとって最適なものになるかという観点での新しい海洋秩序を打ち出す必要がある。海底資源のもたらす利益をもっぱら自国経済や自国民の厚生のために使うといった狭い考えでは負けは確定的である。広い排他的経済水域の開発から大きな利益をもっとも効率的に引き出せるのは日本の技術力、組織力であることを実績で示すとともに、その利益の半分は世界の海洋秩序の維持と向上のために自発的に拠出すると宣言するぐらいでないとやはり海の開発は日本に任せた方がよいという世界からの合意を得ることはできまい。

 下に掲げた世界と日本の排他的経済水域の地図は図録9411のものを再掲した。海洋国家日本が世界の中で占めるべき役割については、同図録を参照されたい。

(注)「排他的経済水域」とは、...
「領海(幅12イリ)の外側にあって,沿岸国がその水域のすべての資源(生物,非生物を問わず)の探査,開発,保存,管理および同水域のその他の経済的活動について排他的な管轄権をもつ水域。国連海洋法条約(1982採択)上の正式名称は上記のとおりであるが,経済水域,EEZ とも略称される。領海と公海の中間に位置する第3の新しい水域である。すなわち,資源利用その他の経済活動の面では領海に同じく,航行,上空飛行その他の国際コミュニケーションの面では公海に同じという性格をもつ。排他的経済水域は,国連海洋法条約において領海が12カイリと狭く定められた代りに沿岸国に認められたものといえる。この水域は,領海の基線から測って200カイリを超えてはならない」(平凡社世界大百科事典)。


出所:世界マップ海上保安庁サイト

(2006年5月29日収録、2012年4月28日大陸棚について付加、2014年7月25日世界の排他的経済水域マップ差し替え、2015年6月7日排他的経済水域アジア地域境界図を掲載、6月8日同リンク、2018年4月11日ランキング以外の部分を図録9411として独立させた、2023年9月26日人口・面積順位更新、2024年7月9日中国コメント、7月12日中国との領土紛争への各国関心度マップ)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 地域(海外)
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)