排他的経済水域とは、国の周辺海域であって、優先的に資源利用・開発を行うことの出来るかわりに資源の管理についても責任を持たねばならない国際的に認められた領域を指す(定義は下注を参照)。 日本の周辺海域は、漁場としては、北海周辺からアイスランド周辺にかけての水域、及びアメリカ大陸北西大西洋岸とともに世界3大漁場の1つともなっており、漁業国日本の基礎をなしている。同時に周辺漁場の漁業資源の保全にも管轄国として1義的な責任を有している。 この他、海底資源の点でも、メタンハイドレードやレアアースなど多くの可能性を秘めている。東京大や海洋研究開発機構などの研究グループの発表によると、小笠原諸島・南鳥島周辺の排他的経済水の海底に(下の参考図3)、モーターなどに使うテルビウムや液晶ディスプレーの発光体に使うユウロピウムなどのレアアース(現在生産量の9割は中国)が世界需要の数百年分あることが分かったという(毎日新聞2018.4.11)。 漁業資源の維持やこうした海底資源の潜在的な可能性の開発に関して、日本は大きな責任を有しており、自国の利益だけでなく、世界の資源問題の解決にも寄与することが求められている。 東シナ海ガス田開発をめぐる日中の係争は、排他的経済水域の範囲をめぐって日本が日中の中間線を主張し、エネルギー資源確保に成長の制約を見ている中国が日本に寄った大陸棚の範囲を主張しているからであるが、双方の主張の正当性とともに、東アジアと世界の共同利益という点からの解決が望まれる。この他、日ロ間、日中間、日韓間のそれぞれ北方領土、尖閣諸島、竹島をめぐる領土問題も海域利用への権益争いの側面を有している。アジア地域の排他的経済水域の境界が必ずしも安定したものではないことを示す図を下に参考図1(上掲世界マップの部分拡大図、原pdf)として掲げた。 なお、2012年4月「27日、政府は国連の大陸棚限界委員会が、日本最南端の沖ノ鳥島の北方など太平洋の4海域約31万平方キロを新たに日本の大陸棚として認める勧告を採択したと発表した(参考図2参照)。中国と韓国は、沖ノ鳥島の関連海域への大陸棚拡張に異議を唱えていたが、勧告は、同島北方海域の拡張を認定。ただ、同島南方の海域については判断を先送りした」(東京新聞2012.4.28)。 我が国が権利を主張できる海域が拡がったということで普通は喜ぶべきなのかもしれないが、大きくいえば日本とその周辺海域自体が中国の「大陸棚」上にあるともいえるわけであり、こうした場合は、当事者国間で権利を折半するなどといった新しい海洋法秩序を中国が他の大陸国と結んで提案してこないとも限らないことを心配する。 例えば、小笠原諸島が日本から国として独立し、太平洋沖合のEEZなどの海域に対する権利をまるごと主張したとしたら、日本はそれを認めるだろうか。 200カイリ自体そんなに前にできた制度ではなく、現行の海洋法秩序が永遠だと考える確たる根拠はない。世界の海は所得の高低や利用容易性には関わりなく人類が等しく権利を分有するべきだという考えが成り立つとしたら人口比に応じた面積の海域支配ルールだってあり得るのではないかと思う。細かく主張して大きく失うことにならないよう、日本にとっては近隣国と細かい支配領域争奪戦は、それはそれとして行うにしても、現行の海洋法秩序自体の存続強化へ向けたイデオロギー上の取り組み、あるいは賛同国数確保などの取り組みの方が優先順位としてはより高いと考えられる。 政府は2018年12月26日に国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を通告し、19年7月から約30年ぶりに日本近海と排他的経済水域(EEZ)に限定して商業捕鯨を再開することとした(参考図4参照)。EEZ保持に関する不安については誰も論及していないが、中国などがほくそ笑んでいないかと心配である。
(2018年4月11日図録9410から独立、参考図3追加、9月27日日本の海域図更新、12月27日参考図4、2019年2月3日世界マップを参考図1と同じものに変更)
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