アナトリア半島からアラビア半島にかけての中東諸国の民族構成をグラフで示した。中東に区分されることが多いイランの民族構成については別途、図録9280に掲げた。

　この地域では、トルコでトルコ人、イスラエルでユダヤ人が多数派であるのを除くと民族的にはアラブ人が支配的である。

　トルコ、イラク、シリアといった北部ではクルド人が、それぞれ、19％、15〜20％、10％と大きな割合を占め、居住地域もイランの隣接地域を含んで連坦している。


　人口3000万人のぼるクルド人はクルド語を使い、多くがイスラム教スンニ派である。クルド人はオスマン帝国の支配下にあったが、第一次世界大戦でオスマン帝国が敗れると英国、フランスによって分割され、クルディスタンと呼ばれる居住地は中東の国々にまたがることとなった。以来、独自の国家建設を目指すクルド人と各国の間で紛争が続いている。

　パレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家に分割する1947年の国連によるパレスチナ分割案を受けて、ユダヤ人は1948年にイスラエルを建国した。その結果、欧州やロシアからのユダヤ人の移民が相次ぐ一方で（図録9038参照）、100万人を超えるアラブ人がパレスチナから追放されて難民となり、アラブ諸国との対立がはじまった。


　CIAによる2020年推計ではイスラエル人口の74％がユダヤ人、アラブ人が21.1％、その他4.9％となっている。

　なお、同資料ではユダヤ人の出生地別の割合も示されているが、イスラエル生まれが78.7％と多くを占めるようになっており、世界から移住した第一世代のユダヤ人は少数派に転じている。

　中東産油国では豊かな石油収入を使った建設工事などの大きな需要にこたえて南アジア出身者を中心に労働移民を多く受け入れ、クウェートやアラブ首長国連邦などでは、政治、経済、文化の各面でアラブ人の国ではあるが、人数的にはアラブ人は必ずしも支配的とは言えない状況となっている。

　移民労働者が多いのは産油国だけではない。イスラエルにおける2023年10月のイスラム組織ハマスによる攻撃では、タイからイスラエルに渡った多くの移民労働者が犠牲になっている。26日時点のタイ政府の発表によると、タイ人の死者は33人に上り、外国人の国籍別では最多の54人がハマスの人質となっている。イスラエルにいるタイからの移民労働者はおよそ3万人。その始まりは1990年代に遡り、パレスチナとの衝突の歴史とも深く関わっている。すなわち、1990年代にテロや軍事衝突が多発したため、もともとイスラエルの農場などで働いていたパレスチナ人労働者は仕事ができなくなり、イスラエルがパレスチナ人労働者への依存を解消させる代わりに、タイなどから経済的に苦しい人たちを呼び込むようになったという。イスラエルの移民労働者支援団体によると「タイからの移民労働者がいなければ、イスラエルでは牛乳や野菜など、あらゆるものが手に入らなくなったのです」（TBS NEWS DIG 2023.10.26）。