全体傾向としてまず目立っているのは、1960年代後半から1970年代にかけて、それまで比較的低く安定的に推移していた離婚率が上昇傾向に転じた点である。そして、その後も上昇し続けた国もあるが、おおむね、高い水準で再度横ばいに転じている場合が多い。 こうした全体的な離婚率上昇の要因としては以下が考えられる。
ロシア(ソ連)は、米国と並んで離婚率の高い国として知られているが(図録9100参照)、1960年代前半までは、米国と異なりそれほど高い離婚率でなかったが(統計上の理由かも知れない)、1960年代後半以降急上昇し、1991年のソ連崩壊以降も、大きく波打ちながら2001〜02年に過去最高値を更新し、その後一時低下したが、なお、高いレベルで上下動を繰り返している。この点は自殺率の傾向とも軌を一にしており、ロシア社会特有の問題点が現れているとも言えよう(図録2774参照)。 なお、イタリアは、一貫して自殺率と同様離婚率も低い国として目立っている(図録2774参照)。しかし、2010年代後半にはかなり他国に近づいた。 東アジア諸国は、当初、もともと欧州諸国とそうレベルが違わなかった日本は別にして、韓国、中国はもともとは離婚率が非常に低かった。やはり儒教的な価値観が支配的であったからといえよう。 韓国は、1990年代後半から急上昇を遂げ、日本や欧州諸国を一気に抜き去り、2003年のピークでは、図の主要国の中では世界第3位の高さに到達しているのが驚異的である。このように離婚率の動きは、出生率の急低下、自殺率の急上昇とならんで韓国社会の急激かつ急速な大変化をあらわす指標のひとつとなっている(図録1550、図録2774参照)。なお、当時の上昇傾向の中で98年には一段と離婚率が跳ね上がっているが、この年はIMFから緊急融資を受ける事態となった97年経済危機の翌年であり、負債が家族に及ばないよう偽装離婚した夫婦が多く、「IMF離婚」と呼ばれていたという(毎日新聞2006.12.11夕)。 中国は最近離婚率の上昇が著しいことで目立っている。日本やヨーロッパ諸国を抜きさり、今や、米国を抜いている。毛沢東時代における家族関係に対する伝統重視の考え方を受け継ぎ1994年婚姻法では離婚には雇用主かコミュニティの長による保証が必要だった。2003年にはこうした制約が廃された。中国の離婚率の上昇が2003年を境に大きく加速しているのはこうした理由によるものだろう。こうした法制度上の変化を含めて、以下のような要因が離婚の増加の背景として考えられる(The Economist January 23rd 2016 の記事による)。
日本の離婚率の上昇について、国内的には問題視する場合が多いが、上昇程度、変化のスピードなどで、世界の動きの中では、まだ、マイルドな動きとなっているといえよう。しかも21世紀に入ると長期的な低下傾向に転じている。日本の離婚率の推移については図録2777参照。 世界では日本のような皆婚慣習を維持している国は珍しくなっており、男女のカップルの解消は必ずしも離婚率でたどれない状況になっている(婚外子割合が半数を超える国も増えている−図録1520)。すなわち欧米の離婚率の低下傾向はそもそも婚姻関係自体が少なくなってきているからという要因も無視できないと思われる。離婚率に与える年齢構成の影響やこうした婚姻率レベルの影響を除くため、離婚率を婚姻率で除した相対離婚率を主要国について算出した(下図)。すると、日本の離婚率は主要国の中で最低であることが分かる。また、そもそも婚姻自体が少ないフランスなどは離婚率が米国以上であることが分かる。 さらに、参考のために以下に相対離婚率の長期推移を米国について掲げた。1970年代前半までに離婚は急増したが、その後、婚姻件数のだいたい半分の離婚件数で安定的に推移している。相対比では米国の離婚は増えても減ってもいないといえよう(米国では結婚自体が富裕層の専有物と化している状況については図録1520参照)。 (2005年11月4日収録、11月7日韓国最新データ追加、2006年12月12日更新、2008年6月5日更新、2010年11月15日更新、2011年6月14日コメント・図追加、2015年1月31日更新、2016年4月1日中国データ・コメント追加、タイデータ削除、2019年4月26日相対離婚率、2020年12月23日更新)
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