ヨルーバ族(ルクミー)、カラバリー族、コンゴ族がキューバの3大部族とされるが、西アフリカから中部アフリカへかけての地域からの奴隷貿易が多かったことがうかがえる。 キューバ黒人奴隷の出身部族
キューバでは奴隷貿易の終焉や奴隷制の廃止が英国植民地や米国よりずっと遅れたことにより、また彼らが出身部族ごとにカビルド会を形成していたことにより、アフリカの伝統を色濃く保っていた点については、図録8826参照。
この結果、例えば、ヨルーバ族の宗教儀式では、主たる楽器(太鼓)としてバタが使われ、コンゴ族の音楽ではコンガが使われるというように、音楽の形式や伝統も出身部族により異なっている。そして打楽器の位置づけの違いにより、キューバのポピュラー音楽ではバタは使用されず、もっぱらコンガが多用されるに至り、その結果、世界的にも普及していくという差異が生じた(韓国伝統音楽では起源の異なるカヤグム(伽耶琴)とコムンゴ(玄琴)という音色もかなり異質な2種類の琴が使われるが、カヤグムはコンガ、コムンゴはバタに位置づけが似ている)。 米国では、黒人は、キューバと異なり、アフリカ伝来の楽器を失い(ジャズの楽器のなかにはアフリカ伝来の打楽器がなく、すべてヨーロッパ起源の楽器で音楽が演奏される)、宗教も白人のキリスト教を信仰するに至った。キューバでは、むしろ、白人が黒人のアフリカ伝来の宗教を信仰するに至っている(見かけはカソリックであるが、キリスト教の聖者はアフリカの神様たちなのである)。 キューバにおけるこうした宗教のシンクレティズムについては図録8820参照。私見では、こうした宗教現象と同様に、キューバ音楽では、ギターやティンバーレス、フルートなど白人の楽器でも黒人の魂で演奏し、米国におけるジャズなどの黒人音楽では、アフリカ由来の音楽を演奏しているようでも、それは白人の魂を借りて演奏しているのである。
(参考資料) ・神代修(2010)「キューバ史研究―先住民社会から社会主義社会まで」文理閣 ・Robin Moore(2010), Music in the Hispanic Caribbean: Experiencing Music, Expressing Culture, Oxford Univ Pr (2010年12月6日収録)
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