〇2024年選挙 大統領選は予想以上のトランプ候補の勝利となったが、上下院ともに民主党を共和党が議席数で上回った。下院はもともと共和党優勢だったが、上院は民主党多数がひっくり返った。 〇2022年中間選挙 11月8日に投開票された米中間選挙は、米CNN(HP、10日20:00、図はその後更新)によると、午前3時の時点で上院(定数100)は民主党、共和党ともに48議席を確保。残りはいずれも激戦州で、ジョージア▽ウィスコンシン▽ネバダ▽アリゾナの各1議席となっている(その後ウィスコンシンは共和党候補勝利、ネバダ、アリゾナは民主党候補勝利確実)。 民主党は共和党が現職の激戦州ペンシルベニアで勝利を確実にしており、残る4議席のうち2議席を取れば、副大統領が議長を務める上院では現在と同じようにぎりぎりの優位を保てることになる。 ジョージア州では、上院選挙の候補者の得票が過半数に達しなかった場合は、決選投票が行われることになっており、民主党、共和党の両候補とも過半数の票数が獲得できず、州務長官は9日、12月6日に上院選挙の決選投票を行うと発表した。そして決選投票の結果民主党候補が当選となった。これで上院における民主党の多数が51対49と一層上積みされた。 全435議席が改選される下院は、米CNN(HP、12月7日)には民主党が213議席、共和党は222議席と共和党が多数党となった。 事前の世論調査ではインフレ対策をめぐる論戦で受け身で中絶の権利擁護や民主主義の危機回避を前面に立てたため国民感情と食い違い、バイデン大統領の民主党が苦戦と予想されていたが、案外そうでもなく、共和党の大勝とは言いがたい状況となっている。 〇2020年選挙 最後までもつれていた上院議員選挙は、2021年1月5日に行われた米ジョージア州で行われた上院2議席をめぐる決選投票で、両議席ともに民主党候補が当選を確実とし、もし1人でも共和党となれば民主党バイデン大統領は閣僚や判事の人事の承認権ををもつ上院との間でねじれ状態となると懸念されていたが、結局は民主党が上院の支配権を確保した。これにより上院での民主・共和両党の獲得議席はいずれも50議席となり、副大統領に就任する民主党のカマラ・ハリス(Kamala Harris)氏が決定票を握ることになるため、上院の支配権はすでに多数を占めている下院と同様に民主党の手へと渡る。 ○2018年中間選挙 開票結果の速報はCNN。出口調査から分かる属性別の投票行動については図録8755参照。 結果としては上院は共和党優勢、下院は民主党優勢となった。下院での民主党優勢はコートテール効果の反動から当然と考えられているので、トランプ大統領が政策を転換する可能性があるのは下院でも議席獲得数が予想以上にマイナスとなった場合のみであろう(コートテール効果については【コラム】参照)。 2018年選挙はトランプ大統領の2年間の実績への審判として注目される(下表参照)。結果予想では上院は共和党優勢、下院は民主党優勢となっている。ただし、中米から米国を目指して北上中の移民キャラバンに対する米国民の反応次第では下院でも共和党優勢となる可能性もあるとされていた。 上院は非改選議席は民主23、共和42となっており、改選議席の予想では民主20、共和7、接戦7と下院とともに民主優勢であるが、非改選と改選を合わせると共和優勢となるともともと考えられていた(毎日新聞2018.11.7)。
○2016年選挙
大統領選は共和党トランプ候補の予想外の勝利となった。議会選挙は引き続き共和党が多数派を獲得したので、オバマ大統領を悩ませた政権との「ねじれ」状態は解消することとなった。 「上院は任期6年で2年ごとに3分の1づつ改選する。現有議席は共和党54、民主党46(民主党系無所属2を含む)。このうち改選されたのは共和党24議席、民主党10議席」(毎日新聞2016年11月10日)だった。改選議席の当選者は共和党22議席、民主党12議席で、民主党が議席を増やしている。また下院はすべて改選であるが、やはり、民主党が増え、共和党が議席数を減らしている。 大統領選の方でも獲得選挙人数でトランプ候補が勝利しているが得票数では48.2%対46.1%でクリントン候補が勝っている(CNN2017.1.6現在)。したがって、議会選でも大統領選でも、単純に民主党が負けたとはいえない。 ○2014年選挙
中間選挙は大統領選挙の年の選挙と同様に、「選挙の日」すなわち「11月第1月曜日の属する週の火曜日」に行われる。2014年の中間選挙は例の通り現地の4日(火)朝から開始され、同4日午後から開票作業が行われた。結果は民主党の大敗となっている。 図の通り、下院では、共和党が246議席と過去最大となり、半数改選の上院でも、共和党が54議席と過半数を確保している。ただし共和党内の対立も顕著であり、2015年1月6日に召集された新議会では、下院議長選において共和党は、保守強硬派の草の根運動「ティーパーティ(茶会)」を中心に25人もの造反者を出した。これだけの造反は1858年以来の異例の事態という(東京新聞2015.1.8)。 最近米国では共和支持層はより保守的になり、民主支持層はよりリベラルとなるという両極化が進んでいる(図録8807、図録9492参照)。これが、米国人が考えがちなように果たして医療保険制度改革(オバマケア)などについてのオバマ大統領の手腕不足によるものかどうかは分からないが、今回の民主党惨敗の要因が民主支持層のオバマ大統領への期待が大きかっただけに反動も大きかったためということだけは真実であろう。 ○2010年、2012年選挙
2010年11月2日の米国議会の中間選挙では、与党民主党の歴史的敗北となった。「不信任」を突きつけられたオバマ大統領は今後上下院の「ねじれ議会」の中で難しい政権運営を余儀なくされる。 2010年の下院の共和党の議席増(239議席)はいかに大躍進であったかがうかがわれる。 2010年の中間選挙で発生した「ねじれ」、すなわち大統領と上院は民主党、下院は共和党という政治状況は、2012年選挙でも継続することとなった。このように選挙結果が分かれる理由としては選挙方法の違いにあると言われる。 「州単位で行われる大統領、上院の選挙と違い、下院の選挙は複数の小選挙区に州を区割りして行われる。その区割りが、共和党が勝利した2010年中間選挙後に、共和党に有利となるように調整された。今回の大統領選(2012年)では、急速に人口が増えているヒスパニック系の支持がオバマ陣営勝利の要因となったが、ヒスパニック系を始め民主党支持層は都市部に集中している。したがって、下院の選挙区割りで都市部と農村部を分離し、都市部だけを1つの選挙区にまとめれば、民主党が都市部の選挙区で圧勝する一方で、より数の多い農村部の選挙区では白人中流層に強い共和党が有利になる。(中略)2014年の中間選挙でも、ゲリマンダリング(選挙区調整)の影響で、下院では依然として共和党が有利と見られるので、「ねじれ」は解消されない可能性が高く、何も重要なことを決められないというアメリカ政治の問題も長引く恐れがある。」(竹森俊平「通貨「円」の謎 」文春新書、2013年、p.149) 実際、2013年10月1日には、オバマ米政権が進めてきた医療保険改革(オバマケア)を巡る与野党の対立で、暫定予算が議会を通過しないままに新会計年度が始まり、同時に連邦政府機関の一部閉鎖が発効した。軍や治安、健康、福祉部門などを除く政府機関の業務が停止し、自宅待機となる職員は、1日の始業から4時間以内に職場を出なければならず、国立公園や博物館は閉鎖される見込みである。前回の政府閉鎖は17年前にクリントン政権下で21日間続いた。 さらに同10月には、米国特異な国債残高の上限を定めた法律が改定されない危険がある。それまでほぼ自動的に引き上げが議会で了承されていたのを2011年8月から共和党が政治交渉の手段にしてから重大問題化したものであるが、「国債残高の上限が引き上げられないことにより、元利の支払いが不可能になり、アメリカ国債の不履行というような展開になったならば、それこそ世界恐慌が起こっても不思議ではない。(中略)もし共和党が、アメリカ国債の不履行を一層の歳出削減のための「人質」に取るようなら、オバマ大統領は一兆ドルのプラチナコインを鋳造するか、さもなければ、財政計画を遂行するという法的な義務を果たすためには、国債残高の上限が不可避という理由を明言して上限法を破り、最高裁の判定を待つ行動に出るだろう。」(上掲書p.148、なお、「歳出実施、財政計画」を「オバマケア」と読み替えれば最近の事情に合致する) こうした与野党の非妥協的な反目の背後には、2009年に登場した保守派の草の根運動「茶会(ティーパーティー)」の存在があるという。「茶会が全面支援する上院議員は数人、下院議員でも50人程度にとどまるが、上下両院選の共和党予備選には決定的な影響力がある。強い信念を持つ茶会メンバーは確実に予備選の投票に出かけ、結束して党員への働きかけを行う。オバマ政権に融和的な姿勢を示した現職議員が予備選で茶会系の新人候補に敗れたケースも珍しくない。共和党議員の多くは南部や中西部の保守的な州を地盤にする。民主党候補と争う本選よりも予備選の方が死活的だ。特に来年11月の中間選挙で全員が改選となる下院議員が茶会の意向を無視できない。党内には茶会系議員の行動に批判もあるが党指導部は茶会の力を恐れて抑え込むことができなかった。ホワイトハウスと民主党からは、共和党保守派を「自爆テロ犯」「無政府主義者」と、ののしる声が漏れた。予算や財政に限らず、オバマ氏が目指す銃規制強化や移民制度改革はいずれも保守派の抵抗で進展の見通しが立たないままだ。」(東京新聞2013.10.2)
(2010年11月16日収録、2013年9月4日更新、10月1日竹森引用等、10月2日茶会の影響力コメント追加、10月6日国債残高上限法コメント追加、2014年11月6日・11月8日更新、2015年1月8日オバマ2014更新、2016年11月11日トランプ2016更新、12月1日更新、2017年1月6日更新、2018年11月7日更新、コラム追加、11月20日更新、11月24日更新、12月22日更新、2021年1月7日更新、2022年11月9日〜12月7日更新、2024年12月1日更新)
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