(注)米CNNによる大統領選出口調査の主な内容。回答数は15,590人(2020年)。空白は「その他・無回答」。カッコ内は調査対象者の構成比(%)。毎日新聞(2020.11.16)によれば、このデータは、米主要メディアの共同調査によっており、投票日の対面調査以外に期日前投票の利用者への対面調査、郵便投票の利用者への電話調査なども含まれるという。
(資料)米CNN選挙サイト(2020.11.14)、ただし、2008〜12年の「信仰」「政策課題」は毎日新聞(2008.11.6、2012.11.8)


1.2020年米国大統領選

 民主党バイデン候補が現職大統領のトランプ候補を破って、次期大統領となった。前回同様、トランプ大統領の顰蹙を買うような言動に加えて、コロナの蔓延や黒人差別など米国の現状に対する不満から、現政権への批判票がバイデン候補に集まっただけ、すなわちバイデン候補が勝ったというより、トランプ候補が負けただけ、と解することができよう。  前回、新たに共和党が制した州は、アイオワ州、ウィスコンシン州、オハイオ州、ペンシルベニア州、フロリダ州であり、製造業の不振で雇用が悪化している地域が多かった。今回は、このうち、オハイオ州とフロリダ州を除いて、再度、民主党に復帰した。中国との貿易戦争を通じた鉄鋼に対する関税引き上げが当初は価格が上昇してよかったものの、その後、自動車鋼板の需要低迷から再度価格低下するというようなマイナス効果を生み、製造業の復活に必ずしもつながっていないせいであろう。

 投票動向を見ると、男性はトランプ支持、女性はバイデン支持、白人はトランプ支持、黒人など非白人はバイデン支持、若年層はバイデン支持、中高年層はトランプ支持、高学齢はバイデン支持、低学歴はトランプ支持といった傾向は、前回の大統領選と同じである。

 今回の大統領選でどんな政策課題を最重要視したかの区分では、人種の不平等やコロナウイルス対策を挙げた国民はバイデン支持、経済や犯罪・安全を挙げた者はトランプ支持という対照的な投票行動が明確となっている。

 以下に、民主・共和党の候補者同士を2016年大統領選と比較した表を掲げた。

今回の出口調査投票率の対前回比較
属性 民主党
クリントン→
バイデン
共和党
トランプ→
トランプ

男性(48) 4 0
女性(52) 3 0

白人(67) 4 0
黒人(13) -1 4
ヒスパニック(13) 0 3
アジア系(4) -4 5
その他(4) -1 4

18〜29歳(17) 5 -1
30〜44歳(23) 2 4
45〜64歳(38) 5 -3
65歳以上(22) 2 -1

5万ドル未満(35) 3 3
5万〜10万ドル未満(39) 11 -8
10万ドル以上(26) -5 6

大卒以上(41) 3 0
大卒未満(59) 4 -2

民主党(37) 5 -4
共和党(36) -1 4
それ以外(26) 12 -7

都市部(29) 1 3
都市近郊(51) 5 -2
農村部(19) 8 -5
(注)単位:%ポイント。黄色は5%ポイント以上の差。カッコ内は今回の属性別割合(%)
(資料)CNN出口調査

 この表で目立った点としては、以下を挙げることができる。
  • 男女、年齢、学歴では全体としてバイデンシフト
  • 年齢では30〜44歳のみはトランプシフト
  • 人種別には意外なことに白人はバイデンシフト、非白人はトランプシフトである
  • 中所得層はバイデンシフト、高所得層はトランプシフト
 回答者の構成比の変化で目立っているのは以下である。
  • 白人が減り、ヒスパニックを含む非白人が増加しており、民主党シフト要因
  • 大卒以上が縮小し、こちらは共和党シフト要因
 最後に、その他の出口調査の結果から目立ったものを以下に取り上げて見た(上表も参照)。
  • 政党別には共和党は共和党候補、民主党は民主党候補という傾向がより強まる中で、無党派層のバイデンシフトが目立った。
  • 経済について現状満足層ほどトランプ支持が多く、現状不満層ほどバイデン支持が多いことを示している。
  • 地域的には都市部より農村部でトランプ支持が多く、選挙人の数も農村部の方が人口の割に多い(日本と異なり上院議員は州の代表であり、人口比例ではないため両院議員数と比例した選挙人数でも農村部の方が有利となっている)ので、トランプ候補が善戦した理由がうかがわれる。ただし、都市近郊や農村部でバイデンシフトが見られた。


2.2016年米国大統領選(過去のコメント)

 大方の予想を覆して共和党トランプ候補が民主党クリントン候補を破って、次期大統領となった。トランプ候補が選挙戦中に繰り返した過激な発言(メキシコ国境の「壁」建設、イスラム教徒の入国禁止、日本など同盟国に対する米軍駐留経費の負担増や核武装容認など)や米国メディアや知識人・有名人の反トランプ感情に関心が集まっているが(コラム参照)、冷静になって考えてみると、単純に、米国の現状に対する不満から、民主党政権への批判票がトランプ候補に集まっただけ、すなわちトランプ候補が勝ったというより、クリントン候補が負けただけ、と解することができよう。

 前回は民主党が勝利し、今回は共和党が制した州は、アイオワ州、ウィスコンシン州、オハイオ州、ペンシルベニア州、フロリダ州であり、製造業の不振で雇用が悪化している地域が多かった。

 図録では、出口調査の結果から属性別の両候補への支持率を掲げているが、実は、前回2012年のオバマ候補対ロムニー候補の支持率の違いとそう大きな違いはない。トランプ候補支持の白人層が増えているかの報道もされるが、データを見る限り、白人層のトランプ支持率はロムニー支持率より減っている。

 以下に、民主・共和党の候補者同士を2012年大統領選と比較した表を掲げた。大きくパーセントが変化した項目を見ていこう。

 男性のクリントン支持が大きく減っている。これは、女性の昇進を阻む「ガラスの天井」の最後の一枚を破るというクリントン候補の訴えが受け入れられなかった結果ともとれる。

 人種上では、白人層の投票行動の変化は大きくないが、もともとは高い黒人、ヒスパニック、アジア系の民主党候補支持率の低下が目立っており、オバマ候補ほどのインパクトが白人候補であるクリントン氏にはなかったためとも、非白人層の期待に現オバマ政権の実績が追いつかなかったせいともとれる。

 年齢別にはもともとは高い18〜29歳の民主党支持率の低下が目立っている。現政権への若者の失望ということであろう。

 今回、トランプ候補の勝因として白人低所得層の支持があげられることが多いが、確かに、収入が5万ドル未満層では相対的に高い民主党候補の支持が大きく減っているのが目立つ。逆に、10万ドル以上の高所得層では共和党支持率が大きく減っており、トランプ候補は金持ちからは嫌われているようだ。

 学歴別には、大卒以上ではトランプ候補、大卒未満ではクリントン候補が前回候補者と比較して大きく支持率を低下させている点が目立っている。

 大統領選を通して米国国民の分断がおこったと見なされているが、人種的にはむしろ差が縮小し、男女、貧富、学歴で分断が広がったといえよう。

今回の出口調査投票率の対前回比較
属性 民主党
オバマ→
クリントン
共和党
ロムニー→
トランプ

男性(48) -4 1
女性(52) -1 -2

白人(70) -2 -1
黒人(12) -5 2
ヒスパニック(11) -6 2
アジア系(4) -8 3
その他(3) -2 -1

18〜29歳(19) -5 0
30〜44歳(25) -2 -3
45〜64歳(40) -3 2
65歳以上(15) 1 -3

5万ドル未満(36) -8 3
5万〜10万ドル未満(31) 0 -2
10万ドル以上(33) 3 -6

大卒以上(50) 2 -5
大卒未満(50) -7 5
(注)単位:%ポイント。黄色は4%ポイント以上の差。カッコ内は今回の属性別割合(%)
(資料)CNN出口調査

 最後に、その他の出口調査の結果から目立ったものを以下に取り上げて見た。@政党別には共和党の反トランプ騒ぎにもかかわらず共和党層はトランプに投票していた点が目立つ。強調されがちな個人の資質の問題ではなく民主党政権か共和党政権かという選択の問題だった側面が強いことを示す。A現状満足層ほどクリントン支持が多く、現状不満層ほどトランプ支持が多いことを示している(上でふれた経済不振州の民主党から共和党への反転のもあらわれている)。B地域的には都市部より農村部でトランプ支持が多く、選挙人の数も農村部の方が人口の割に多い(日本と異なり上院議員は州の代表であり、人口比例ではないため両院議員数と比例した選挙人数でも農村部の方が有利となっている)ので、獲得票数では優勢だったクリントン候補が獲得選挙人数で負けた理由がうかがわれる。


 トランプ候補はもともと共和党員ではなかった。トランプ候補は外部から現れて、共和党の支持者を乗っ取り、共和党を変質させた政治家だったという評価もある(下表参照)。従来の共和党の考え方の一部だけ強調し、その他は、むしろ、民主党的な考え方を取り入れた結果、支持層がエスタブリッシュメントからブルーカラーへ大きくシフトしたというのである。そんなところが勝因として大きかったのだろう。歴史的には、北部の政党であった共和党が今や南部の政党だった民主党と入れ替わった訳だが、再逆転もありうるのかもしれない。

従来の共和党的な考え方の変更
従来 トランプ
小さな政府、公共事業縮小 インフラ投資によるニューディール的な雇用創出
福祉削減、富裕層減税、自由貿易、市場の放任、規制緩和、温暖化の否定、国民皆保険反対、人工中絶反対、キリスト教尊重 見直しや撤回
軍事力による派遣の維持、イラク戦争正当化 派遣軍縮小、海外基地縮小、イラク戦争不同意
不法移民排斥、銃の所持の自由 より過激に主張
共和党綱領の変化(自由主義的な従来の共和党政策からの後退)
2012年 2016年
TPPの推進 TPPという言葉消え、米国利益第一の貿易条約へ
アフォーダブル・ケア・アクト(医療費負担適正化法、オバマケア)の撤廃 より良い制度(「医療保険制度は義務を減らして選択肢を減らしてアフォーダブル(適正な価格)であるべき」)
金融機関への規制の縮小 暴走を防ぐための規制が必要(大きすぎる銀行を分割するグラス・スティーガル法を復活させる)
なし メキシコとの国境の壁の建設
(資料)町山智浩「さらば白人国家アメリカ」講談社、2016年、p.343〜344、p.294〜299 

【コラム】反トランプを鮮明にした米国マスコミは利用されただけなのか


 今回の大統領選のひとつの特徴は米国の新聞などマスコミが反トランプの論調を明確に打ち出していた点である。上図には主要な米国の新聞における候補者への支持表明をあらわしたが、この点が明確である。これは、トランプ候補が、ツイッターなども駆使して、品の良くない、ある意味無茶苦茶な暴言を吐いていたからであるが、実は、資金力の劣るトランプ候補がマスコミに取り上げられやすくして自分の存在感を国民に浸透させる選挙戦略だったのではないかとする見方がある。

「メディアはトランプ氏を嫌った。国内日刊紙の発行部数上位100紙のうち、57紙がクリントン氏を支持した。対照的にトランプ氏支持は2紙。トランプ氏にくみしない共和党寄りの新聞は苦し紛れに「支持なし」を表明した。

 トランプ氏は「大富豪」という表の顔とは裏腹に、選挙資金が不足していた。出馬表明も遅れ、党内の候補者指名争いに参戦した15年6月の支持率は12人中9位の3.6%だった。

 だが出馬会見で「メキシコ国境に壁を」という爆弾発言をぶち上げ、ツイッターによる広範囲な個人攻撃も始めた。型破りな言動をメディアは興味本位で追う。1カ月後には支持率16.8%の首位に躍り出た。「ニュース」になって知名度を上げたのだ。視聴率や部数の増加をもたらすトランプ氏を、メディアも無視できなかった。

 米広告調査会社によると、過去1年にトランプ氏のメディア露出は、広告費換算で52億ドル(約5500億円)に上る。クリントン氏はその約6割、32億ドル(約3400億円)だ。一方、選挙戦での支出額はクリントン氏6億2400万ドル(約660億円)、トランプ氏は半分以下の2億8200万ドル(約300億円)。資金力で劣り、出足も遅れた政治の素人が描いた大逆転構想。その脚本に沿って「過激発言」戦術が取られたのかもしれない」(毎日新聞2016年11月12日)。

 そうだとすれば、反トランプの実効性をあげるためならば新聞はトランプ候補の発言をいちいち取り上げなければよかったのである。結果から判断すると、発行部数や視聴率のためなら何でも騒いでしまうマスコミがその習性をうまく利用されただけと言わざるをえない。日本では橋下徹元大阪府知事とマスコミとの関係が想起される。

 これに加えて、世論調査の結果からクリントン有利という希望的観測をマスコミが伝え続けたことも、かえって、安心してしまって投票に行かない者を生んだ点でマイナスに作用しただろう。日本でも反政権の朝日新聞と政権寄りのサンケイ新聞では世論調査の内閣支持率に大きな差が出ることから分かる通り、クリントン支持を明確に打ち出したメディアの世論調査には回答拒否するトランプ支持者が多かったに違いない。トランプ候補の暴言を鵜呑みにする下品な人間と思われたくなくて投票とは反対の回答を世論調査に対して行った者を含めて、「隠れトランプ支持者」が多かった訳である。

図で取り上げた新聞名は以下である。USAトゥデー、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・ポスト、サンノゼ・マーキュリーニューズ、デーリー・ニューズ、シカゴ・トリビューン、ニューズデー、ワシントン・ポスト、ダラス・モーニング・ニューズ、ヒューストン・クロニクル、アリゾナ・リパブリック、ラスベガス・レビュージャーナル、フロリダ・タイムズユニオン

3.2012年米国大統領選(過去のコメント)

 米大統領選は11月6日、投開票され、米メディアによると、再選を目指す民主党のバラク・オバマ大統領(51)が、6日午後11時(日本時間7日午後1時)過ぎの段階で、中西部オハイオやミシガン、ウィスコンシン州などを固め、勝利に必要な選挙人数270人を超える275人を獲得、再選が確実になった。オバマ氏はツイッターで「あなたのおかげだ。ありがとう」と事実上の勝利宣言を行った。政権奪還を目指した共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(65)は勝敗にかかわる激戦州で伸び悩み敗北した。(毎日新聞2012.8.7夕刊)

 性別、年齢、人種等の属性別に有権者の投票がどちらの候補に向かったかを2008年の結果と同じように米メディアの出口調査の結果から図示した。

 2012年の結果は2008年の結果とほとんど同じような傾向を示している点が印象的である。

 各年齢ともにオバマ大統領の支持率は低下し、今回の苦戦ぶりを示しているが、特に18〜29歳が前回から6ポイントと急落している。これは前回の若者の期待の大きさがやや凋(しぼ)んだからだろう。

「年収別では、5万ドル(約400万円)未満の低所得層からは60%と前回並みの支持を受けたが、中間層の5万〜10万ドル未満では46%で前回を4ポイント下回った。オバマ氏は富裕層への増税を訴えており、10万ドル以上の支持は前回比5ポイント減の44%だった。」(毎日新聞2012.11.8)

 なお、ロムニー候補の家の宗教は代々モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)であり、本人も敬虔な信者であるため、信仰の一つとしてモルモン教が取りあげられている。

 人種別に見て白人層の支持率が前回の43%から39%へと低下したのは、景気面での期待はずれが白人、特にプアホワイト層で目立ったからだとされる(東京新聞2012.11.11「太郎の国際通信−米大統領選 進む人種の分断」、以下同様)。また「白人票を取り戻す以外に勝つ道がなかったロムニー陣営が、人種問題という禁じ手を使ったこともいたずらに黒人への反感を煽ったという。その代表的な例とされるのが、オバマ大統領の生活保護政策を批判するテレビCMだった。「オバマ大統領は仕事をしなくても生活保護を受けられるように制度を改悪しました。何もしなくても小切手が送られてくるのです。ロムニー候補はそれを変えます」その画面には、白人の労働者が汗を流して働いている姿があった。つまり、白人労働者の稼ぎが怠け者の黒人に流れているというメッセージだったのだ。」これに対してオバマ陣営も人種偏見を煽っていると反論し、こうしたやりとりが米国の人種の亀裂を深くしたと米国でも分析されているという。しかし、人種別の支持率の変化では、黒人の支持率も多少減っており、むしろ、人口シェアが拡大しつつあるヒスパニックやアジア人のオバマ支持率の上昇が目立っている。ロムニー陣営は白人票を取り戻そうとして、長く米国で暮らし、案外、白人と共通の価値観をもつ黒人ではなく、むしろ、ヒスパニックやアジア人など異文化系住民の反感を招いたのではと私は推察している。

 オバマ大統領への男性票が減った反面、女性票がほとんど変わらなかったことから女性票が勝敗を握ったとする考え方もある。

「重視した政策項目をみても、女性有権者らは安全保障などより社会保障や健康をめぐる問題への関心が高い。オバマ氏が米大統領として初めて打ち出した人工妊娠中絶への支持も、働く女性を中心に支持を集めた。」(東京新聞2011.11.16)

「大統領選と同時に行われた連邦議会選の共和党候補者の発言も女性票がオバマ支持に流れる要因となった。

 8月には、上院へのくら替えを目指していた共和党のエイキン下院議員が「本当のレイプなら女性の体は妊娠を防ぐようにできている」と発言。10月下旬には上院議員候補マードック氏が「レイプによる妊娠であっても、それは神のご意志」と言い放った。結局、二人は落選した。」(同上)

4.2008年米国大統領選(過去のコメント)

 米国大統領選は11月4日開票が行われ、民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が勝利に必要な選挙人270名をこす365名(29州・特別区)を獲得し、173名(22州)の獲得にとどまった共和党のジョン・マケイン上院議員(71)を大差で破り、黒人初の米国大統領に選出された。一般投票得票率はオバマ氏53%、マケイン氏46%であった(両候補 以外の得票があるため足して100とならない)。(数字は集計終了後の結果、CNN集計−毎日新聞2008.11.22)

 性別、年齢、人種等の属性別に有権者の投票がどちらの候補に向かったかを米メディアの出口調査の結果から図示した。

 まず、黒人初の大統領ということから、人種別の投票動向が関心を呼んだが、白人はマケイン候補に55%とオバマ候補の43%と比較して10ポイント以上多く投票しているのに対して、黒人の95%がオバマ候補を選んでおり、対照的な結果となっている。ヒスパニック、アジア系、その他についても6割以上とオバマ候補への投票が多かった。

 しかし思ったほどの白人投票の片寄りはなかったともいえる。黒人には低所得層が多いといわれるが、米軍のトップや国務長官にも黒人が就任しており、また人種・民族別の出生率の動きを見ても黒人は急速に白人に近づきつつあり、むしろ出生率の高さではヒスパニック系の方が特異であることから、白人が抱く黒人との生活上の差異感覚は薄れてきているのではないかと私は感じている(図録8650参照)。

 年齢別には若い世代ほどオバマ支持が多く、高齢者ではマケイン支持の方が多かったので、世代対立はかなり大きな要素だったといえよう。

 収入別には低所得層は6対4でオバマ優位であったが、中高所得者もオバマ候補が負けているわけではないので、所得階級の対立は主たる分岐軸ではなかったといえよう。

 主たる関心分野別には、1割程度しかいないが医療保険制度をあげる者は7割以上がオバマ支持であり、逆にテロ政策を主たる関心としている者は86%がマケイン支持と対照的な形となっている。ただ大半は経済問題に関心があり、その場合は、全体結果と同様の投票行動となっていた。

 注目を引くのは、余り報道されなかったが、男女差である。男性はオバマ、マケインが半々であるが、女性はオバマ支持が多かった。女性は白人か黒人かにこだわらない者が多かったのか、あるいはマケイン候補側のペイリン副大統領候補に対する女性の反感があったのか、それともオバマ候補とマケイン候補の年齢差がきいたのか、いずれかであろう。

(2008年11月6日収録、11月25日全体結果コメントを確定得票率に変更、2012年11月8日2012年大統領選結果、11月12日人種別支持率分析追加、11月16日女性票についてのコメント追加、2016年11月11日2016年大統領選結果、11月12日コラム、11月13日コラム隠れトランプほか補訂、11月16日CNN出口調査結果を過去に遡って確認、2020年10月16日町山著作引用、2020年11月14日更新)


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