4年に一度、夏季オリンピック開催の年に行われる米大統領選。2024年は11月5日に投開票される。

 大統領選は民主、共和両党がそれぞれ候補者を擁立。当初は、民主党で現職のジョー・バイデン大統領(81)と、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が対決するという前回選挙と同じ構図だった。

 しかし、バイデン氏は高齢批判から支持率が低迷。一方のトランプ氏を巡っては、7月の演説中に銃撃を受け一命を取り留めるという衝撃的な事件が発生し一気に党内の結束を固めた。

 この奇跡とも言うべきトランプ氏への強烈な追い風により、一時は「もしトラ」から「ほぼトラ」へと一気に選挙戦の流れが決まるかに見えた。そうした中、バイデン氏は7月、ついに選挙戦からの撤退を決断。選挙戦が残り100日と迫る中、異例の候補者交代となった。カマラ・ハリス副大統領(59)が8月の党大会で後継候補として指名されて、民主党は支持を取り戻し、勢いを増した。

 ピューリサーチセンターは8月末から9月にかけてハリス、トランプ両候補が打ち出している政策が種々の国民層にどう評価されているかという点から両候補の支持層を明らかにする調査を実施しているので、その結果を示した。調査対象者に対して、両候補について支持しているかどうかを直接きくのではなく、両候補の政策によって状況が「改善すると思うのか」それとも「悪化すると思うのか」を選ばせことによって間接的に支持か不支持かを判断しているところがミソである。有権者の個人的な好悪ではなく、あくまで政策への評価を調べようとしているのである。

1.基本属性で支持層の違いが大きい

 米国大統領選におけるハリス、トランプ両大統領候補については支持層の違いが余りに対照的な点が注目される。男女の違いが最も大きいが、白人vs非白人、富裕層vs貧困層、退役軍人vs労働組合員なども目立っている。

 図には国民有権者の各階層ごとに、両候補の政策がもたらす状況変化予想を「悪化」(Make things worse)か「改善」(Make things better)か「変わらないか」(Not change things much either way)の3択できいた結果を示した。

 図では、カマラ候補の政策をプラスに評価する階層の回答から、逆にトランプ候補の政策をプラスに評価する階層の回答へと上から下に並べている。「改善」が「悪化」を上回っている階層をそれぞれの候補について矢印で示した。

 この図の特徴としては、まず、目立っているのは女性が一番上に位置し、男性が下から3番目に位置するというように遠く離れている点である(9行差)。次に、黒人と白人が8行差、貧困層と富裕層が7行差で距離が離れている。一方、都市部住民と農村部住民は1行差と距離が短く、都市部の方が農村部よりカマラ候補支持に傾いているもののその差は小さいことが分かる。

 男女、人種、貧富といった国民の基本属性でカマラ候補対トランプ候補の支持率差が大きくなっていることが如実である。男女はもっとも普遍的な属性差であり、夫婦で意見が対立している場合も多く、国民の分断は深刻だ言える。

2.トランプ候補の方が毀誉褒貶が激しい

 トランプ候補の方が支持層と不支持層とで、「状況が悪化」の構成比が大きく変わる。同値は、女性は46%、貧困層は45%である一方で、白人は13%、富裕層は5%と大きく異なる。ところがハリス候補の場合は「状況が悪化」の構成比が最大の農村部住民で39%、最小の女性や非白人で27%とせいぜい10%ポイント程度である。

 トランプ候補は、階層によってはひどく不安がられているのに対して、ハリス候補の場合は、全体として、当選しても最悪のケースにはならないだろうと思われている。

 それではトランプ候補よりハリス候補の方が断然有利かというとそうでもない。住んでいる地域別の集計では「都市部住民」、「農村部住民」のどちらもハリス候補の場合は「状況が悪化」の方が「状況が改善」を上回っており、トランプ候補はどちらも逆だから、米国全土ではトランプ候補の方が支持が大きいとも言えるのである。

(2024年10月15日収録)


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