古くからの移住人口を含む中国系人口である華僑・華人人口については図録8590に掲げたが、ここでは、台湾オンラインメディアのザ・ニュースレンズの記事から、なお国籍を保持したままの在留中国人の各国ランキングを示した。

 最も在留中国人が多いのはタイの930万人であり、これにマレーシアの688万人、米国の503万人、インドネシアの283万人が続いている。人口比では、マレーシアの20.3%が最も高く、タイの13.0%、シンガポールの8.0%、オーストラリアの5.3%がこれに次いでいる。

 日本は92万人と世界10位であり、人口比も0.7%とかなり少ない。日本の在留外国人の中では中国人は最多であり、この頃ずいぶん多くなったという印象であるが、世界の他国と比較すると存在感はそれほど大きくないといえよう。

 各国の国籍を取得・帰化した中国人まで含めた東南アジア各国の中国系人口を図録8125に掲げている。これによるとシンガポールの華人人口比率は76%であり、ここで掲げている中国籍のままの在留中国人の8.0%を大きく上回っている。

 法務省の在留外国人統計によると2023年6月末段階で中国人は788.495人、台湾人は60.220人となっている。従って、ここでの日本の92万人というデータは両者を合わせたそれ以降の数値ということになる。

 以下には、データの原資料から上位5カ国の在留中国人の状況を掲げる。
1.タイ
タイは中国人の流入が顕著で、不動産や経済活動に大きな影響を与えている。タイの人気の理由は、ビジネスチャンスや文化的親和性、投資の可能性などが挙げられる。中国人の流入ラッシュにより、不動産ブームが起き、手頃な価格の住宅が爆買いされることへの懸念が深刻化している。マンション購入者の10.81%が外国人で、そのほとんどは中国人が占める。バンコク中心部のフワイクワーン区の不動産価格は、在留中国人が高額で購入するため上昇している。タイの人口は22年統計で6600万人。すでに7人に1人が中国人となっている。
2.マレーシア
経済機会や教育、マレーシア政府が進める「マレーシア第2の故郷(MM2H)」プログラムという長期滞在ビザなどの魅力で、移住先にマレーシアを選ぶ中国人が増えている。同ビザの30.5%を中国富裕層が保有している。また、マレーシアは中国系の人口(22.8%)が多く、中国人不動産投資家にとって重要な国。両国間では時折緊張が生じるにもかかわらず、マレーシアの華人コミュニティは経済界を支配し、株式所有率は1969年の22.8%から1990年の45.5%に倍増。現在もマレーシアの最富裕層の多くは華人系だ。
3.米国
米国は500万人を超える大規模な在留中国人の人口を抱え、移民全体の5%を占め、その数はカリフォルニア州やニューヨーク州などに集中している。彼らは教育と仕事を求めて渡米し、多くの場合、就労ビザや投資家ビザを取得している。一方、中国在住の外国人駐在員のうち約16%は米国人で、逆に米国に在留する外国人駐在員のうち、28%が中国人だ。米国は中国人投資家にとって主要投資先。18年には投資家グリーンカード(永住)のほぼ半分が中国人に発行された。
4.インドネシア
経済成長やパートナーシップ、熟練労働者の需要により、中国企業や投資家の間でインドネシアの人気が急騰している。中国からの直接投資は22年に82億3000万ドル(約1兆2354億円)に達した。インドネシアの人口の多さと個人消費の増加により、魅力的な市場になっている。中国企業は製造や建設、エネルギー、テクノロジー、電気自動車などの分野に多額の投資を行い、完全な産業チェーンを形成している。インドネシアは中国への輸出増を目指すと同時に、ボルネオ島への首都移転プロジェクトを通じて中国に投資機会を提供している。
5.カナダ
カナダは中国人移住者が最も多い国の1つ。2018年には8万1500人の中国人留学生を受け入れた。中国とカナダ双方の投資は急増し、中国の直接投資残高は2018年までに170億ドル(約2兆5518億円)に達した。カナダの中国系多国籍企業は17年に148億ドル(約2兆2216億円)の売り上げで貢献し、約2万3000人のカナダ人を雇用した。2018年に米国の要請を受けたカナダ当局が、ファーウェイ副会長を詐欺罪などで逮捕して以来、両国政府の関係悪化が続くも、23年第3四半期のカナダの対中国輸出額は219億5000万ドル(約3兆2949億円)に達し、直接投資と証券投資の両方が増加した。

(2024年3月15日収録)


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