全国の未婚率の時系列推移を図録1540に示したが、ここでは都道府県別の未婚率をグラフにした。最新年次に更新後は図録7341

 未婚率は、未婚者数を人口で割った数字であるが、人口総数を対象とした未婚率よりも年齢別の未婚率の方に意味がある。

 結婚適齢期とされる年齢の未婚率は、その地域では結婚が早いか遅いかをあらわし、「生涯未婚率」とされる50歳の未婚率は、その地域で結婚をしない者が多いか少ないかをあらわす。

 ここでは結婚適齢期の年齢として、男は31歳、女は28歳をとった。これは、全国平均の年齢各歳別の未婚率を男女別に調べてみると、男では、31歳で50.1%、32歳で46.5%、また女では、28歳で52.3%、29歳で45.6%となっており、男は31歳、女は28歳を最後に未婚率が50%を下回るに至るからである。こうした年齢の未婚率をここでは「若年未婚率」と呼ぶことにする。

 なお、50歳の未婚率が生涯未婚率とされているのは、この年齢以降は未婚率がほとんど下がらない点、また女性の出産年齢が50歳未満では極めて稀である点によるものと考えられる。もちろん例外的なケースはありうるのであって、あくまで統計的、便宜的な設定ととらえる必要がある。

 注意しておきたいのは、X軸の若年未婚率のスケールは男女とも40〜65%と同じであるのに対して、Y軸の生涯未婚率は男が8〜22%と14ポイントの幅であるのに対して女は2〜12%とレベルが低く、また幅も10ポイントと小さい点である。地域ごとにバラツキの大きかった若年未婚率が生涯未婚率となるとより小さい幅に収まってくる(特に女性において)ということが分かる。

 都道府県別の未婚率について、まず、目立っているのは、東京がかけ離れた位置にある点である。男については、若年未婚率が61.3%と図抜けて高く、女については、若年未婚率が64.0%、生涯未婚率が11.5%と双方ともに他の都道府県を圧倒している。

 東京の未婚率が高いのは、東京出身の者は、結婚が遅い、あるいは結婚しない者が多いというより、結婚を急がない者、あるいは一生結婚しない者が東京に集まってきているという側面が強いと考えられる。東京は結婚しなくても不都合のない自由な土地だともいえるし、東京で暮らしているといつの間にか婚期を逃す非人間的都市(東京砂漠)であるともいえる。

 若年未婚率で東京に次いで未婚率が高い地域を調べると、男では、神奈川、埼玉、千葉、京都という順になっている。女では、奈良、京都、福岡、大阪という順になっている。結婚の遅い地域が、男では東京周辺の大都市地域、女では関西の主要都市地域と、男女で大きく異なっているのが分かる。この結果、関西では結婚する男女の年齢差が小さくなっている可能性がある。

 なお、若年未婚率の低い結婚の早い地域としていては、男では、宮崎が1位、鹿児島が2位、女では山形が1位、福島が2位となっている。九州男児と東北の女性は結婚が早いといえよう。

 次ぎに、生涯未婚率の水準を見ると、男では、沖縄が21.2%と東京の19.5%より高くなっているのが目立つ他、高知も19.4%とほぼ東京と同水準である。沖縄については、失業率の水準が全国1である(図録7360参照)ことからも推察されるとおり、自由な土地柄というよりは結婚を困難にする経済環境を要因として考える必要があろう。女の方は男と異なり、東京の11.5%と匹敵する生涯未婚率の地域はない。最も高いのは北海道と沖縄が8.6%でトップ、これに大阪と長崎が8.5%で続いている。沖縄の生涯未婚率の男女差を計算してみると12.5%ポイントと全国で最も大きい(2位は岩手の12.0%ポイント)。東京では男女ともに生涯未婚率が高いが男女差は7.9%ポイントと全国的にも小さい方であり、結婚しない生き方が定着しているともいえる。生涯未婚率が2割を越える沖縄の男性は東京とは異なる沖縄特有のライフスタイルを有していると想像される。今後、日本全体でさらに生涯未婚率が高まってくると考えられるので、一種の先進地である沖縄の暮らし方は大いに参考になるかもしれない。

 図の中で奈良が少し特殊な位置にあることに気づく。男の生涯未婚率が10.1%と最も低くなっている。また女では、若年未婚率が東京に次いで高いのに生涯未婚率は平均以下となっている。男女ともに都道府県のバラツキの中でややかけ離れた位置にあるといえる。奈良の男女(特に女性)はなかなか結婚しないように見えて、最後にはゴールインしてしまうという傾向が強い訳である。これにはどのような県民性あるいは地域条件が背後にあるのか興味深いところである。

 最後に、若年未婚率と生涯未婚率の相関についてコメントしておこう。

 グラフをみれば分かるとおり、双方の値は男より女の方でバラツキ度が小さい。すなわち相関度が高くなっている(R2値は男は0.19、女は0.41)。これは、男の場合は、若いときに結婚が遅くなってもそれが生涯未婚率には余り反映しないのに対して、女の場合は、結婚適齢期における結婚の遅れが、生涯の未婚に結びつく可能性がより高いことを意味するとも考えられる。親が娘の結婚に対して口うるさいのには一定の根拠があるのであろう。

(2010年6月24日収録、2017年10月13日2015年国調版を作成後過去図録として再録、2121年12月10日原データ表削除)


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