【クリックで図表選択】
|
下図でも見られるように週平均の1日の食事時間は10代〜20代は85分(1時間25分)程度、50代前半で95分(1時間35分)、そして65歳で110分(1時間50分)を越え、75歳以上では124分と2時間を越えるのである。従って高齢化の進んだ地域では食事時間は長くなりがちであり、逆に若い世代の多い大都市圏では食事時間が短くなりがちなのである。こうした年齢構造の影響を取り除くためには、年齢調整という手法を使うことが多い。すなわち、各年齢階層ごとの値からその地域がもし全国と同じ年齢構成だったとしたらどんな値になるかを計算して原数値に代えるという方法である。 冒頭の図録にはこうして計算した年齢調整済みの値を棒グラフで示した。参考までに原数値も▲で示した。高齢化の進んだ地域では▲の位置が棒グラフよりずっと上に位置することが理解できよう。 棒グラフの高低で地域別の状況をとらえると以下のような傾向が認められよう。 地域別の食事時間の全体的な傾向としては、@東で長く西で短い傾向とA大都市圏で長い傾向の2つが認められる。@は調査は10月だが普段から寒いと家から出たくなくゆっくり食事もするという寒暖の影響だろうか。Aは大都市圏では共稼ぎ夫婦が比較的少ないからだろうと考えられる。 もちろん例外も多い。 大都市圏の中で愛知だけは食事時間があまり長くない点が目立っている。食事以外にやることが多いからだろうか。 寒い地域で食事時間が長い傾向の例外も多い。北海道は寒い地域であるのに食事時間はトップクラスの短かさである。逆に徳島、鹿児島などは暖かいのに食事時間が長くなっている。 地域ブロックによって特に長く食事をする県や特に食事時間が短い県があることにも気がつく。
こちらを見ると中京圏(愛知)を除く大都市圏地域では共稼ぎ夫婦が少なく(すなわち専業主婦が多く)、食事時間が長くなっている。また、全体としても右下がりの傾向が認められる。しかし、例外も多く相関度は低い(R2=0.0706)。 しかし、地域グループの配置図としては興味深い状況を示している。 食事時間の長い「じっくり食事地域」は2グループに分けられる。すなわち第1グループは共稼ぎの少ない東西大都市圏の地域であり、第2グループは共稼ぎが多いが食事時間は東西大都市圏と遜色なく長い中央高地・北関東・秋田・鹿児島のグループである。 中央高地の長野、山梨の食事時間の長さが全国の中でもトップランクである点が目立っている。長野、山梨はスローフード先進県と言えよう。共稼ぎが多い割に食事時間が長い理由としては、冷涼な気候も考えられるが、ワイン消費量が多い点との相関が指摘されることもある。いずれにせよ、両県の寿命や健康寿命の長さの理由としてこのスローフードがあげられることが多いようだ。 一方、食事時間が96分未満と短い「そそくさ食事地域」とも呼ぶべきグループは共稼ぎ比率とは無関係に分布している。すなわち、北海道、香川、山口、鳥取、愛媛、佐賀その他の諸県である。 香川の食事時間が短いのは「うどん県」だからという可能性もあろう。 さらに、富山、石川、福井といった北陸地方や山形、新潟といった地域では共稼ぎが多いが、食事時間はそのほど短くない点が分かる。 山梨や長野の食事時間が長いことからワイン消費量との相関が話題となる。ワインを飲みながらの食事で時間が長くなるという連想と合うからである。また生野菜の消費量との相関も指摘される(ここ)。2020〜22年平均の県庁所在市の消費量との相関係数を求めてみるとワインは0.604、生鮮野菜は0.588とかなり高い値だった。それらを多く食べるから食事時間が長いのか、食事時間が長いからそれらを多く食することが可能なのかは分からないが、関連は認められよう。いずれにせよ健康県にはふさわしいデータである。逆に生鮮野菜の少ない県は少ない順に山口、高知、那覇、高松、岡山であり、食事時間の短い県と一致しているのが興味深い。 2つ目の表示選択では生鮮野菜消費量との相関を探った。やはり食事時間が長い方が野菜消費が多くなるという相関が認められる。野菜大好き県の神奈川、千葉、新潟では食事時間も長い。食事時間の短い山口、香川では野菜消費量も少ない。一方、埼玉、長野、山梨では食事時間が長い割には野菜消費は多くない。また、北海道は食事時間が短い割に野菜をよく食べている。 (2023年6月25日収録、6月27日コメント補訂、7月21日野菜消費との相関図)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|