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 ひとり暮らしが各年齢層で、そして特に若年層と高齢層で大きく増えて来た点については図録1189fでふれた。ここでは、同じように国勢調査の結果を使って、どの地域でひとり暮らしが多いか、またどの地域でひとり暮らしが少ない、すなわち家族同居が多いかを見てみよう。

(年齢計:表示選択1)

 都道府県別のひとり暮らし比率(15歳以上)を見ると、比率が最も高いのは東京の26.7%であり、4人に1人を超えている。

 東京に次いでひとり暮らし比率が高い地域は、北海道の20.6%、大阪の20.1%、京都の19.0%と続いている。東京が2位以下の地域を大きく引き離している点が印象的である。下に見るように若年層も高齢層もひとり暮らし比率が他の都道府県を断然引き離して高くなっている東京の地域性のためである。

 逆に、ひとり暮らし比率が最も低いのは山形の11.1%であり、10人に1人の水準である。 山形に次いでは、福井の11.8%、岐阜の11.9%がいずれも11%台で続いている。東京との差は極めて大きいと言わざるを得ない。

 年齢別のひとり暮らし比率を示した図録1189fでも明らかなようにひとり暮らしは若年層と高齢層で特に多くなっている。従って、若年層や高齢層の人口比率の大きな地域では、ひとり暮らし比率が高めとなり、逆なら逆となるバイアスがかかる。そこで、年齢別のひとり暮らし比率から全国の人口構成をもちいて年齢構成の影響を取り除いた年齢調整済みのひとり暮らし比率を算出し、これをオレンジのヨコ棒で示した。

 結果を見ると年齢調整済みの値が大きく異なっているのは東京と沖縄ぐらいであり、その他の地域は目立った違いはないことが確認される。若者と高齢者の比率はどちらかが高ければもう一方は低くなっているのが通例でありバイアスが打ち消し合うからだと思われる。

(6つの地域の年齢構造:表示選択2)

 次に、年齢構造の具体像を得るため、いくつかの地域で15歳以上の5歳階級別のひとり暮らし比率を見てみよう。表示選択では、一番目に、ひとり暮らし比率トップの東京と最低の山形、およびその中間の鹿児島を全国平均と比較した図、及び二番目に、この3地域ほどではないが特色のある大阪、奈良、宮城の図を掲げた。

 一番目の図を見ると、東京はすべての年齢層(親元にいる15〜19歳を除く)でひとり暮らし比率が全国平均と比較して非常に高くなっており、まさに「ひとり暮らし都市」と言ってもよい状態である。

 逆に、山形は、ほぼすべての年齢層でひとり暮らし比率が低く、「家族同居都市」とでも呼ぶべき状況だということが分かる。

 もう1つの比較対象地域である鹿児島の状況を見ると、40代前半までの人生の前半では、全国と比較してひとり暮らしが少ないが、40代後半以降、歳を加えるに連れてひとり暮らしが多くなり、全国の上昇傾向と比較しても上昇率が一層高いという特異なパターンを示している。

 鹿児島がこうした特徴的な姿を示している理由については日本の中でも長子相続が普及する前の分割相続が長く残っていたせいだと考えられる(図録7244参照)。

 二番目の図を見ると、東京に次ぐ大都市の大阪では、高齢層のひとり暮らしは東京と同様に多いが、若年層では全国平均並みであり、それほど多くない。

 奈良は高齢層では全国並みにひとり暮らしが多いが、若年層や壮年層、特に若年層では全国の中でもひとり暮らしが少ない点が目立っている。若者が親との同居をいとわないのと壮年の未婚率が低いのが理由だと言えよう。

 宮城では若年層のひとり暮らし比率は高く、東北の中でも都会的な性格を示しているが、高齢層ではむしろ大都会とは異なってひとり暮らし比率は低くむしろ山形に近い特徴を示している。

 このように地域によって、ひとり暮らしの様相は多様だということが分かる。

(散布図:表示選択3)

 鹿児島の例からも地域パターンを見るときは若年層のひとり暮らしと高齢層のひとり暮らしを区別して観察すべきであることが分かる。そこで、もう1つの表示選択では、X軸に若年層(20代)のひとり暮らし比率、Y軸に高齢層(75歳以上)のひとり暮らし比率を取った散布図を描いた。

 この散布図で都道府県の分布状況を概観すると、X軸とY軸の指標は平行して増減する傾向がある(すなわち、若年層と高齢層のひとり暮らし比率は両方とも高かったり、低かったりする傾向がある)ことが分かるが、若年層のひとり暮らし比率が余り高くないにも関わらず、高齢層のひとり暮らしは高いという方向に片寄った地域が少なからず見受けられる点が見て取れる。前者の代表が東京や山形であり、後者の代表が鹿児島と考えることができるのである。

 この散布図から、特徴的な地域をグルーピングしてみると、

 @ 若者ひとり暮らし地域
 A 高齢者ひとり暮らし地域
 B 高齢者同居地域
 C 若者同居地域

が認められる。

 @の若者ひとり暮らし地域は、X軸の値の大きい東京、北海道、京都、福岡、広島、宮城といった首都や地方中枢都市で構成され、旧帝大の国立大学が存在しているような学園都市的な性格が相俟って、地方圏から出て来た若者のひとり暮らしが多いエリアとなっている。

 Aの高齢者ひとり暮らし地域は、Y軸の値の大きい東京、鹿児島、大阪、高知といった地域から構成されている。若い頃から未婚のひとり暮らしが多く、また、商業や交通機関の発達などから高齢者のひとり暮らしがしやすい環境のある東京、大阪といった大都市的地域、および地方の中でも一定の年齢まで家族と同居していても高齢になるとひとり暮らしをする社会的気風が残っている西日本の縁辺地域がこのエリアに属している。

 東京や北海道、京都のように@とAがダブっている地域もあれば、@あるいはAのいずれかにしか属さない地域もある。

 BY軸の値の小さい高齢者同居地域は、山形を典型として、その他、新潟、富山、福井といった北陸地域や佐賀などから構成されている。北陸の中でも金沢市を有する石川は地方中枢都市的性格をあわせもっているためか、仙台を有する宮城に近く、Bには属していない。

 CX軸の値の小さい若者同居地域は和歌山や奈良といった近畿の大都市周辺地域からなっている。大都市中心部の大阪や兵庫のように親の家が狭くなく、若者は親と同居できるのであろう。

 ひとり暮らしの年齢パターンは地域によって多様であることが理解されよう。

 家族制度の地域性の違いから生まれたひとり暮らし比率の東西の違いがもっと注目されていいのではなかろうか。ひとり暮らし老人の歴史が長いだけに、高齢者の福祉、介護、医療、防災などにかかわる社会慣習として鹿児島に学べる点があるかも知れないのである。

(2024年1月14日収録)


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