都市交通の渋滞緩和、大気汚染の防止、温暖化ガス排出抑制、健康づくりといった目的のため、交通機関としての自転車がもっと活用されて然るべきであるが、世界各国の状況はどうなっているかという毎日新聞の記事(04年11月27日)に、交通手段別のトリップ数構成比のグラフが出ていたので引用した。

 対象国は、12であり、自転車の構成比の大きい順に、オランダ、デンマーク、日本、ドイツ、スウェーデン、スイス、オーストリア、英国、フランス、イタリア、カナダ、米国である。

 世界一の自転車大国はオランダである。オランダの自転車トリップの構成比は30%と最も高い。徒歩や公共交通手段の比率は他国とくらべ低いのでこれらの交通手段の代替手段として活躍しているのだと考えられる。自動車の構成比は他国と同レベルであるので自動車と自転車は棲み分けができているのであろう。

 毎日新聞はこう報じている。「オランダはまさに「自転車大国」。最近まで社会雇用相だったフェルメール氏などは、自転車で出勤していたくらいだ。...オランダには質素、倹約を求める宗教的な伝統が強いうえ、国民は環境保護に熱心。また国土が平らで自転車がこぎやすく、真冬の気候も厳しくないことも大きな理由という。...町や森に総延長1万7000キロの自転車専用道が延びる」。

 かつて地域計画づくりの会社をやっていた頃、私は宮城県柴田町に自転車都市を発想したことがある。平らな町なので可能と思ったわけであるが当時は考え方の上だけでもモータリゼーションの勢いが強く計画は実現しなかった。その時、日本は山が多いので、自転車都市を全土に構想するには、アップダウンのない道路が巡らされた等高線都市が必要と考えた。山頂から放射線状に降りる市町村界が日本では通常であるが、山頂から同心円状の市町村界となることを夢想したのである。都市内交通は等高線沿いの自転車道路、都市間交通は等高線をまたぐ鉄道や自動車道路によればよい。

 地形条件を考慮すると日本の自転車比率15%、世界第3位は、日本人の自転車好きをあらわしているとも考えることができる。

 カナダと米国は自動車の比率がそれぞれ74%、84%と世界の中でも最も高く、モータリゼーションの徹底的な進行の前には徒歩すら9〜10%と最も少なくなっており、ましてや自転車の入る余地はないようだ。なお、米国やカナダの自動車依存率の高さは、両国民の運動不足を招き、それが肥満比率の高さにつながっていると考えられる。この点については図録2240参照のこと。

 自転車が十分な運動、自動車が運動不足にむすびついている点については図録2243参照。自転車の移動のエネルギー効率が非常に高い点については図録6390参照。自転車交通の発達している国では自転車泥棒も多い点については、図録6371参照。

(2005年1月6日収録)


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