パリに本社を構える世界的なマーケティング・リサーチ会社であるイプソス(Ipsos)社は2022年に世界28カ国、2万人(各国1000又は500人)を対象とした自転車に関するインターネット調査を実施している。この調査には、2キロ以内程度の自宅近くの移動にもっともよく利用する交通手段は何かを聞いた設問があり、その結果を図録化した。

 交通手段のうち自転車と徒歩は基本的に人力エネルギーを用いている点で、化石燃料等に依存するその他の手段とは異なる。図の国の並びはこの自転車と徒歩の合計の多い順である。

 最も自転車・徒歩の多い国はオランダであり、この2つの手段で71%を占めている。オランダに次いでいるのは、英国、スペイン、スウェーデンの順であり、日本は56%で11位となっている。

 逆に自転車・徒歩が最も少ない国はマレーシアの21%であり、サウジアラビア、米国、チリがこれに次いでいる。

 概して、ヨーロッパ先進国で人力依存が高く、米国などの旧英領植民地や途上国で反対に化石燃料依存が高い傾向となっている。ただし、トルコと中国は途上国的性格を残しているにもかかわらず、むしろ、人力依存が大きい。

 主要先進国の中では、同じ英語圏の英国と米国が正反対の一に属している点が目立っている。日本はフランス、イタリア、ドイツと並んで中位の位置を占めている。

 個別の交通手段別の整理表を次に掲げた。

第1位 第2位 第3位 最下位
自転車 オランダ 中国 日本 カナダ
45% 33% 27% 4%
徒歩 英国 スペイン トルコ マレーシア
65 55 49 13
公共交
通機関
ペルー アルゼンチン チリ 米国/オランダ
32 27 24 3
マイ
カー
米国 カナダ マレーシア ペルー
47 43 41 9
バイク マレーシア インド コロンビア 韓国/カナダ
24 19 9 0

 自転車比率の高いのは、オランダ、中国、日本の順であり、特にオランダの45%が目立っている。

 人力依存が高いオランダ、英国、スペインのうち、後2者の自転車比率は6%と不思議なほど低く、ほとんどが徒歩依存である。身近な自転車利用には文化的、趣味的な側面が大きいのかもしれない。

 公共交通機関の割合が高い国は、ペルー、アルゼンチン、チリである。チリに次いでメキシコ、韓国と続いており、ラテンアメリカや韓国で高くなっている。基本的に庶民レベルで路線バス利用がさかんなためと考えられる。鉄道、地下鉄など軌道系の公共交通機関は近距離利用ではシェアを稼げないようだ(各国首都における公共交通のカバー率については図録6859参照)。

 ご近所でマイカー利用の割合が高い上位3位は米国、カナダ、マレーシアである。

 バイク利用ではマレーシアの24%、インドの19%が突出している。バイク好きというのも文化的、趣味的な側面が大きいように見られる(図録6376、図録6382参照)。

(2024年4月24日収録)


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