【クリックで図表選択】

   

 高度成長期にテレビが登場し、急速にテレビ視聴時間が増加した時代、子どものテレビの見過ぎが親の心配事となり、目が悪くなる。馬鹿になるなどの弊害が論じられた。

 インターネットについても、利用時間の急増のうらでネット依存(中毒)による弊害が生じている。そこで、これがどのくらい深刻なのかについての調査結果を見ておこう(ネット利用時間の急増については図録3960、図録3960d参照)。

 ネット利用時間を調べている総務省情報通信政策研究所の調査では、ネット依存の状況についてもアンケート調査で毎年調べている。

 まず、具体的な状況を知るため、調査対象者のうち現実逃避でネットを利用していると回答した人の割合を最近6年間について年代別に掲げた(表示選択の既定分)。

 結果を見ると全体として、若い世代ほど、また女性の方が男性より現実逃避でネットに走る割合、つまり精神安定剤としてネットが使われている割合が高い傾向にあることが分かる。

 何と10代(13歳以上)の女性では半数以上が、20代女性では半数近くが現実逃避でネットを利用していると答えている。

 この6年の動きを見ると10代〜30代では上限に達しているようであるが、40代以上では現実逃避のネット利用が増えつつある傾向が認められる。

 表示選択では、さらに、ついつい長時間ネットを利用してしまう人の割合が増えている点についての回答結果を示した。現実逃避よりさらに回答率は全般に高く、現実逃避と同様の増加傾向や女性超過傾向も認められる。

 この2設問は、実は、ネット依存を判定する8つの設問(いわゆる「ヤング8項目基準」)の2つである。その8設問はページの巻末に示した通りである。

 この8設問の5つ以上に「はい」と回答した者をネット依存傾向者としてその割合の動きを年代別に表示選択の最初の方で示した。

 全体として若い世代ほどネット依存が多いという状況が認められるが、最近までの動きは世代によっていささか異なっている。

 10代、20代の若者のネット依存傾向は2014〜16年から2017〜19年に大きく増加し、コロナ後は横ばいか低下に転じた。コロナ後の2020〜22年には10代の17.0%、20代の9.8%がネット依存と判定されている。

 一方、30代、40代の壮年層では、2014〜16年から2017〜19年にかけてはネット依存傾向の者は増えていなかった。ところが、コロナ後の2020〜22年には急拡大し、30代の6.1%、40代の3.3%がネット依存と判定されている。

 図録3960dでも見た通り、10代〜20代も30代〜40代もコロナ後にインターネット利用時間は大きく増加しているが、10代〜20代の場合は、それでネット依存が深まった訳でもないのに、30代〜40代の場合は、ネット利用時間の増加の一定部分が依存(中毒)によるものだと考えられるのである。

 いずれにせよ、ネット依存が若年層から壮年層に広がり、深刻さをましていることは確かであろう。

 若い男女のネット依存の状況については図録6364参照。また、図録2332aでは、若い女性の睡眠不足の最も大きな理由が「就寝前スマホ」である点にふれた。


(2022年9月15日収録、2023年12月11日更新、長時間利用データも付加)


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