最近の高校生はLINEを「おじさん、おばさんとの連絡ツール」だと思っているという説がインターネット上の一部で話題になったという(ここ)。若者の間ではInstagramを相互の連絡手段として使っているというのだ。

 これは無視できない状況変化だなということで、各種SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)(注)の利用率の上昇傾向と一部のSNSの盛衰について調べた。SNS全体としての利用率の年齢構造については図録3961j、その国際比較については図録3961m(予定)参照。

(注)英語圏では "SNS" という頭字語は日常の文章や会話で用いられておらず、social mediaや単にsocialなどと呼ぶらしい(ウィキペディア)。social mediaは社交メディアの意味である。なお、Facebook、Instagram、TikTok、Twitterは13歳以上、LINEは12歳以上という利用制限がある。

 取り上げているSNSは、LINE(ライン)、Facebook(フェースブック)、mixi(ミクシィ)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)、TikTok(ティックトック)、YouTube(ユーチューブ)の7種である。YouTubeは投稿もできるが視聴のみの利用者も多い動画サイトであり、厳密にはSNSとは呼べないが、共通面もあるので総務省調査と同様にここで取り上げた。

 総務省の情報通信政策研究所は、各種の情報通信メディアの利用実態について調査するため、2012年から「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を実施している。

 登録会員対象のインターネット調査が最近多くなっているが、この方式では対象者の多くがネット習熟者となるため、調査内容がネット利用についてである場合は、バイアスがかかりすぎて、ネットに不慣れな国民も多い実態を把握することが難しい。そこで、総務省のこの調査では、層化した全国125地点から13〜69 歳の男女1,500人を無作為抽出し、訪問・調査票留置方式で毎年、調査を実施している。

 この調査の結果から、各種SNSの利用率の年次変化と最新年次の年齢別利用率をグラフにした。データをよく見ると、実は、年次変化と年齢別実態は相互に通じ合っていることが分かる。

 年次変化でもっとも目立っているのはLINEの普及が著しい点である。2012年に20.3%だった利用率が2021年には92.5%に達している。年齢別でも60代でも80%以上と年齢差が小さいことでも普及度の高さがうかがわれる。

 厳密にはSNSではないがYouTubeも、LINEより前から普及していたが同レベルの普及度となっている。

 LINEとYouTubeは全国民的に利用される2つの定番メディアになっていると言えよう。

 年次変化を見るとmixi、Facebookは近年利用率が低下傾向にあり、いわばオールドメディアだともいえる。年齢別の利用率を見ても、他のSNSが10〜20代に利用率のピークがあるのとは対照的に、両者ともに30代に利用率のピークがある(ピーク年齢の利用率は数字をグラフに付して置いた)。

 Facebookに代わって利用率が伸びたのが、Twitter、Instagram、TikTokであり、この順番で最近の伸びが著しい。年齢別の利用率のピークを見るとTwitter、Instagramは20代であるのに対して、TikTokは10代であり、流行の新旧がうかがえる。

 また新しいメディアが生まれるかもしれないし、今、隆盛を極めていても明日には衰退に向かうかもしれない。目が離せないデータであり、来年の発表が楽しみである。

 参考までに世界の状況はどうかについて次に見ておこう。

 図録6272ではWe Are Social社の資料を使ってインフルエンサーの世界的影響について紹介したが、そこで掲載した世界で人気のあるソーシャルメディア(SNS)のプラットフォームについての男女・年齢別の状況を下に転載した。


 世界的には日本でシェア最大のLINEの地位はそう高くない。むしろFacebookに加え、WhatsAppやWeChatといった日本ではなじみの薄いプラットフォームの人気が高いことが分かる。

 WhatsAppは、Facebook(メタ)が運営している米国のメッセンジャーアプリ。広告が入らないシンプルな設計が受けて世界一に。ただしFacebookを運営するメタによる買収後、eコマース機能の付加とともに、広告戦略を導入する動きがあり、利用者は警戒しているという。WeChat(ウィーチャット、微信)は、テンセントが開発した中国のインスタントメッセンジャーアプリである(後段参照)。

 年齢別には若者に人気のInstagram、TikTok、それに対して、中年以上に人気のWhatsApp、Facebook、WeChatという対比が目立っている。

 SNSのうちメッセージアプリに限った世界の勢力図を下図に示した。海外ドラマで頻出するメッセージアプリ使用場面の理解に役立とう。

 日本で圧倒的なLINEは日本と台湾だけでトップ。元々LINEを開発した韓国で最も使われている連絡アプリは「カカオトーク」。

 米国やオセアニア周辺で最も使われている連絡アプリがFacebook Messengerというのは意外な感じだがこれには裏があり、米国文化圏はアプリを介さずiMessageやそれに準ずるSMSを使う人が多数派だという。その背景にはAppleの「お膝元」なためiMessageのブランド力が強いことや、SMS利用し放題プランの普及などが指摘されている。要するにわざわざ連絡用のアプリを利用しない人が多いので、米国で約7割が利用しているといわれるFacebookに付随しているMessengerがメッセージ系アプリの中では最も利用されているという結果になっているだけなのである(情報源はここ)。

 中国のスマホで最も多く通信量を使っているのは「中国版LINE」と言われている「微信、WeChat」である。文章でチャットしたり無料電話をしたりという機能はLINEと同じだが、スタンプは無料かつ動画タイプが多く、小規模アプリをまとめた便利な「ミニプログラム」機能が発達。ちょっとしたお祝い事ですぐ紅包(ご祝儀)を渡す習慣を反映し送金機能も充実している。割り勘支払いでの活用を含め生活の多くの面に浸透している分、微信に使う容量も多くなる。中国工業情報化省の最新データによると、8月の1人当たりデータ通信量は前年同月比10.7%増の15.2GBに上っているという(東方新報2022.10.27)。


(2022年9月25日収録、9月30日世界のソーシャルメディア・プラットフォーム、10月30日メッセージアプリ勢力図、米国や中国のコメント)


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