企業や各種メディアからの情報が多くなる中でかえって商品購入を決めるのが難しくなり、同じ消費者の立場から発信される口コミを重視する傾向が強くなっており、そうした意味からもインフルエンサーの影響力が大きくなっている。 世界的にインフルエンサーの影響力が拡大していることがうかがえるデータを図録にした。ロンドンに拠点を置くソーシャルメディアエージェンシー企業であるWe Are Socialの調べによると、図のように、ソーシャルメディアの利用時間が日平均で1〜2時間、国によっては3時間以上となる中で、ソーシャルメディアの利用目的がインフルエンサーのフォローである人の割合も多くなっている。 このインフルエンサー・フォロー率がもっとも高いのはフィリピンの46.3%であり、これに続いてブラジル、南アフリカ、インドネシアといった途上国を中心に上位の国が30〜40%で並んでいる。 主要先進国の中では、イタリアが23.7%で最も高く、米国の21.0%、フランスの20.0%と続いている。日本はインフルエンサー・フォロー率が17.0%と主要先進国の中では最低となっている。 ソーシャルメディアの利用時間とインフルエンサー・フォロー率はおおむね比例しており(例外も多いが)、日本の場合はソーシャルメディアの利用時間は取り上げた国の中で最短となっている。 つまり、日本で感じている以上にソーシャルメディアとインフルエンサーの影響力は世界的に大きくなっているといえよう。途上国でそれらの影響力が高いのは、途上国では既存メディアや一般的な広告の情報が余り発達していなかったことの裏腹の現象であると考えることができよう。 英国のエコノミスト誌では、ラテンアメリカ諸国の政治家が選挙目当てにインフルエンサーを取り込もうと躍起になっていることが報じられていた(The Economist July 23rd 2022)。もっともブランドショップからの収入減につながりかねないので政治家との関係はインフルエンサーにとって有難迷惑の場合が多いようである。 上図には、世界全体の男女別年齢別のソーシャルメディアの利用時間とインフルエンサー・フォロー率を掲げておいた。若い世代ほどインフルエンサーの影響力が大きいことがはっきり分かる。また、男女を比較すると女性の方が各年齢層でソーシャルメディアの利用時間が長く、インフルエンサーをフォローしている割合もかなり高いことがうかがわれる。 参考までに同じ資料で世界で人気のあるソーシャルメディアのプラットフォームについて男女・年齢別の状況を下図に示した。 世界的には日本でシェア最大のLINEの地位はそう高くない。むしろFacebookに加え、WhatsAppやWeChatといった日本ではなじみの薄いプラットフォームの人気が高いことが分かる。 WhatsAppは、Facebook(メタ)が運営している米国のメッセンジャーアプリ。広告が入らないシンプルな設計が受けて世界一に。ただしFacebookを運営するメタによる買収後、eコマース機能の付加とともに、広告戦略を導入する動きがあり、利用者は警戒しているという。WeChat(ウィーチャット、微信)は、テンセントが開発した中国のインスタントメッセンジャーアプリである。 年齢別には若者に人気のInstagram、TikTok、それに対して、中年以上に人気のWhatsApp、Facebook、WeChatという対比が目立っている。 SNSのうちメッセージアプリに限った世界の勢力図については図録6270参照。 図の対象となっている国は21か国であり、図の順番にフィリピン、ブラジル、南アフリカ、インドネシア、サウジアラビア、マレーシア、スペイン、インド、スウェーデン、イタリア、シンガポール、米国、フランス、カナダ、ドイツ、英国、韓国、オランダ、中国、日本、ロシアである。 (2022年9月28日収録、9月30日ソーシャルメディア・プラットフォーム)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|