サービス品質の日米比較


 日本国内で行われている各種のサービスは米国でのサービスと比較して、質が高いのか低いのか、また割高なのか割安なのかを、日米のサービスを両方とも知っている米国滞在経験のある日本人と日本在住の米国人にきいた結果を示した。

 日本人の回答結果によると、米国と比較してサービスの品質が最も高いのは「地下鉄」であり、20%の質の差があるとしている。

 「地下鉄」の次に「タクシー」、「航空旅客」が続いており、交通サービスの評価が高いことがうかがわれる。

 これらの次には、「コンビニ」、「クリーニング」、「宅配便」が10%差以上のサービスとして続いている。

 以降、「TV放送」以外のすべてのサービスで日本の方が品質が高いとされている。

 次に、日本にいる米国人にきいた結果では、ほぼ日本人と同様の結果となっている。日本のサービスの方が概して良質であることは米国人も認めるところなのである。特に、「地下鉄」、「航空旅客」、「コンビニ」、「ハンバーガーショップ」、「中高級ホテル」では日本人の評価より米国人の評価の方が高い。平均すると日本人は8%、米国人は5%ほど日本のサービスが米国に対して高品質と評価している。

 例外としては、「レンタカー」、「銀行」、「病院」では、日本人の評価とは逆に、米国の方が品質が上と評価している点をあげることができる。

サービスのコストパフォーマンスの日米比較

 品質の差から価格も考慮したコストパフォーマンスの差に目を転じると様相はガラリと異なる。

 日本人の評価としては、日米のどちらがコストパフォーマンスが良いかというと品目数で半々、やや日本が割安という評価である。ところが、米国人の評価では、コストパフォーマンスという点では、むしろ、大方は、米国のサービスの方が優れているとしている。つまり、米国人の評価では日本のサービスは品質が良いけれど、それ以上に価格が高くて、結局、割高だとしているのである。

 「病院」については、日本人の評価では、品質は同等だけれど価格が安いので対米国で最も割安なサービスとしているが、米国人は、サービスの質が低いが価格の安さがそれをちょうど補っている程度、との余り高くない評価である。日本人と米国人の評価の違いは、日本在住の米国人は日本の保険診療を受けられないことが多いからかもしれない。

 「病院」以外で、日本人と米国人のコストパフォーマンス評価が著しく異なっているのは、「クリーニング」、「理容・美容」、「銀行」、「旅行サービス」、「ファミレス」、「百貨店」、「中高級ホテル」などである。「銀行」以外は、日本の方が質は高いとしているので、米国人の評価では、「値段の高さに見合うほどは品質が高く訳ではない」とされており、日本人の「質が高いのだからこの位の値段は仕様がないのでは」とする評価と対照的である。

 もっとも、日本人、米国人がともにコストパフォーマンスが高いとしている日本のサービスには「コンビニ」、「地下鉄」、「タクシー」がある。また、ともに低いとしているサービスには「ハンバーガーショップ」、「レンタカー」、「総合スーパー」がある。米国滞在経験のある日本人がハンバーガーショップ、総合スーパーなどの割安感(量に対しての)を実感した結果であろう。

まとめ

 なかなか興味深い結果が表れていると思われるが、こうした調査は興味本位で行われたわけではない。

 「通商白書2013」は調査結果の「品質の高さ」に着目して、「日本のサービスは消費者から品質、価格の両面で高い評価を得ているサービス業も存在しており、こうした分野で日本のサービス業が海外需要を獲得できる可能性があり、生産者側は、多くが自社の製品・サービスに自信をもってはいるが、海外展開に踏み出せていない状況にあると言える。」(p.167)としている。

 原資料の報告書、すなわちサービス産業生産性協議会「同一サービス分野における品質水準の違いに関する日米比較調査結果」(2009.3.31)では、米国人による日本のサービスのコストパフォーマンスの相対的な低評価に着目して、「日本サービス産業の海外進出を考えたとき、品質の高さは認められたとしても、価格面で国際競争力を持つことが可能か、検討の余地があることを示す結果である。」(p.21)と言っている。

 日本企業の海外進出については、製品の海外進出についてもサービスと同様のことがいえるであろう。オーディオ・ビジュアル(AV)製品やICなど日本企業のエレクトロニクス製品の世界市場における競争力の低下については、品質とコストパフォーマンスのバランスの悪さによるという見方が指摘されることが多い。英エコノミスト誌によれば、日本のエレクトロニクス企業は「ハイコストな日本国内で余りに多くの儲けの薄い活動を余りに長くし続けた。彼らは、他国の顧客が問題にしないような先進的特色をもって自国の消費者を満足させることに集中していた。そして彼らは、新興国市場に参入するのに遅れてしまった。」(The Economist 2011.3.5)(図録4750、図録5367参照)

 また、コストパフォーマンスに対する考え方は高所得者と低所得者とで共通ではないであろうから(図録8040参照)、日本の製品・サービスを海外市場で根づかせるためには、日本人の志向に近いということで、高所得者の需要を、まず、ねらうことが重要かも知れない、などといった点にも気がつかされる。

(2013年9月13日収録)


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