ここでは、博報堂による調査結果から、拡大するアジア新興国(及びロシア)の都市住民が欧州、米国、日本、韓国、中国の製品に対して、どういうイメージをもっているかという調査の結果を図録にした。これは2010年版の通商白書でも2箇所にわたって引用されているデータである(第3-2-1-38表、第3-2-1-51 表、当図録末尾(注1)参照)。 日本製品のイメージとして、他を圧倒している点で目立っているのは、「高品質な」というイメージである。次点の欧州製品の46.9%を大きく上回る70.0%のアジア人が日本製品を「高品質」だと評価している。 この他、「カッコイイ・センスがいい」、「明確な個性や特徴がある」、「楽しい」というイメージでも、世界1という高い評価を受けている。 「活気や勢いを感じる」といったイメージでは、韓国製品が2位の日本製品を上回ってトップである。 製品は一般的にはコストパーフォーマンスで売れるかどうかが決まる。「価格に見合う価値があるか」というイメージは、販売に直結する評価であると考えられる。この評価でも日本製品はトップとなっている。 こうしたアジア人全体からの評価は、日本人の日本製品への評価・イメージとは共通している点もあれば、異なっている点もある。参考図として日本人から見た各国製品のイメージのグラフを掲げておいた(関連して、日本のサービスの日本人と米国人の評価の差については図録5647参照))。 これによれば、「高品質」「価格に見合う価値」の2点では、日本人の自国製品に対する評価はアジア人全体からの評価に比べて、図抜けて高くなっている。日本人の品質への要求度がとりわけ高いからであろう。また、どの国民も自国製品に対しては評価が甘くなる傾向があるのが影響しているようだ。中国人・韓国人から見た各国製品のイメージの数字(図録5368)では、「高品質」については、両国民とも、日本製品に次いで、自国製品が来るとしているし、「価格に見合う価値」では両国民とも自国製品が世界1としているのである。 ところが、「カッコイイ・センスがいい」、「明確な個性や特徴がある」、「楽しい」に関しては、アジア人全体からは、日本製品が世界1と評価されているにもかかわらず、日本人の評価は欧米製品と比べてかなり劣っていると感じている。また「活気や勢いを感じる」というイメージでもアジア人全体では韓国製品を1位にあげているのに、日本人は米国製品をトップと感じている。 こうした違いは、日本人にはアジア新興国全体と比較して、なお、欧米に対するコンプレックスが残っているからだと解釈できる側面がある一方で、日本市場では従来から欧米製品や自国製品の市場占有力が強く、アジア新興国市場で躍進している安価で勝れた韓国や中国の製品がなお余り入ってきていない(入れない)からであろう。韓国製品に関しては、日本市場で、一時期、家電製品などで、安かろう悪かろうの韓国製品が広く出回った影響もあろう。 2010年10月には韓国のサムスン電子がNTTドコモからスマートフォン(高機能携帯電話)「GALAXY(ギャラクシー)S」やアップルの「iPad(アイパッド)」の対抗機種である「ギャラクシータブ」を発売することとなり、これと関連づけて、世界市場での韓国製品の躍進ぶりがマスコミで報道されるようになった。おそらく、日本人の韓国製品に対するイメージについても、この図録で取り上げた2008年段階のアジア人全体と同じ方向への変化が起こるだろうと思われる。 最後に、「高品質な」というイメージについて、調査対象となっている日本とアジア等14都市における各国製品への回答率のグラフを以下に掲げた。ここでアジア等14都市とは、上海、北京、ソウル、香港、台北、シンガポール、バンコク、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、ホーチミン、デリー、ムンバイ、モスクワである。 日本製品については、全ての都市でナンバーワンである。日本国内で評価が高いほか、香港、台北、クアラルンプール、ホーチミンなどでも非常に高い回答率となっている。一方、バンコクとマニラでは米国製品の高品質イメージが高く、日本製品とほぼ互角となっている。欧州製品は香港と台北で評判がよい。中国製品は中国国内で欧州製品や米国製品より高品質だと思われている他、デリーやムンバイといったインドの都市では中国国内でよりもさらに高品質だと思われている。
各国市場における国ブランドへのこだわり度については図録5368を参照されたい。 (注1)通商白書2010、P.312の記述は次の通り。「「高品質」イメージなどこれまで我が国企業が培ってきたブランドイメージの活用も重要である。我が国企業が提供する財・サービスは、アジアを中心とした新興国の消費者の間で、「高品質である」、「カッコイイ・センスがいい」、「明確な個性や特徴がある」などと高い評価を受けている(第3-2-1-38 表)。こうした高い評価・高いイメージは、財・サービスの付加価値そのものであり、価格競争が激しくなる中、財・サービスの機能的な価値に加えて我が国企業が特に重点を置くべき付加価値であると考えられる。メディアミックスを活用した製品の売り込みなど、財・サービスとブランドイメージの組み合わせにより更なる付加価値を創造すること、さらには、“Made in/by Japan”が有する我が国の財・サービスのブランド力を維持・強化し、アジアはじめ新興国の消費者に「あこがれ」を生み出すようなブランドイメージの醸成を図るなどの対応が求められる。」 (2010年10月25日収録)
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