2025年3月4日、米国のコルビー国防次官が日本に対し防衛支出をGDP比で3%超に引き上げるように要求し、現在のGDP比2%目標(前岸田政権が決めた2027年度目標)に対しては「不十分」という見解が示された。

 一方、トランプ大統領はEUに対して「自分の身は自分で守れ」とばかりに対GDP比5%の軍事費を要求している。日本に対しても日米安全保障条約は片務的とまで言うようになった。

 現在、中国の台頭によるパワー・バランスの変化、ロシアによるウクライナ侵略を背景にNATOでは経済力に対する応分の貢献「GDP比2%」をガイドラインとしており、EUは実際GDP2%前後の国が多いが、トランプの圧力を受けて3%まで引き上げることをほぼ決めている。

 中国はといえば、2025年の防衛費案はGDP比でみるならば「1.26%」でしかなく、日本の24年の「1.30%」よりも低い(ここ)。目標通りの増額を日本が実現すればGDP比で中国を上回ることとなる。

 当図録では各国の軍事力についての図録5220の中で対GDP比は単年次しか示してこなかった。防衛費(軍事費)の対GDP比が上で述べたように各国で政治課題となっているので、ここでは主要国の軍事支出(防衛支出)の対GDP比の推移を掲げた。

 軍事支出の目立って高い国を軍事国家とするなら、一貫して周囲のアラブ勢力と常に対峙しているイスラエルの値は常に高く、一貫して軍事国家と言わざると得ない。

 このほか、1980年代には、米国、英国、韓国の値が高く、当時のソ連とともに軍事国家群を構成していた。「ミリタリーバランス」によるとソ連の防衛費の対GDP比は1980〜88年に12〜17%だったとされる。

 近年では、英国、韓国の軍事費は縮小し、ソ連の後継国家であるロシア、米国が軍事国家として目立っている。

 1991年のソ連解体による冷戦構造の崩壊により、米国をはじめ世界各国で軍事費支出がいっせいに縮小し、世界全体で1982年の4.3%が1999年には2.2%とほぼ半減するに至った。

 米国の軍事費は2001年の同時多発テロまで縮小が続いたが、それ以降、「テロとの戦い」の名の下に、アフガニスタン侵攻、イラク戦争と軍事作戦が相次ぎ、2011年のウサーマ・ビン・ラーディンの殺害まで、軍事費は大きく増大した。

 2009年には米軍を中心とするNATO軍がアフガニスタン南部の反政府組織タリバン支配地域に対する大規模軍事作戦を開始した。同年の軍事費は欧米各国でいっせいに増加した。

 近年では2020年に世界各国で対GDP比が上昇したが、これは新型コロナの影響でGDPが落ち込んだにもかかわらず各国が軍事費は削減しなかったためと思われる。

 その後、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機にNATO諸国及び日本で対GDP比が上昇傾向に転じた点が印象的である。一方、米国の対GDP比はほぼ横ばいであり、米国は「世界の警察官」の役割を放棄し、NATO諸国や日本に応分の負担を求める方針に転換したように見える。ウクライナ戦争停戦交渉に向けての、米国ばかりに押しつけて平気な顔をしないでくれと言わんばかりのトランプ大統領の態度は2010年前後の米国の大きな突出はもう繰り返さないぞという決意のあらわれなのだろう。

 中国は、軍事大国化が日本をはじめ世界から懸念されているが、総額は母数のGDPが増大したのでやはり大きいが、対GDPでは最新で1.7%と主要国と比較して低い。

 日本はかつて各国で大きく軍事支出がアップダウンしていた頃にもそうした世界の大勢にかかわりなく、ずっと対GDP1%以下を維持し続けていた。最近の動きとしては、1%以下の準則をあっさり放棄した点が目立つが、そのことより、世界の動きにはじめて追従するようになった変化の方が印象深い。NATO諸国の対GDP比は冷戦時代に多少戻ったにすぎないが、日本の場合ははじめての状況なのである。対中関係を悪化させている2025年11月の高市発言の「台湾有事」を持ち出さなければ理屈がつかないと言ってよかろう。

 世界的な軍事産業や武器商人のロビー活動が功を奏していると見られる。他国に軍事費負担をシフトさせている米国は自国の税金を使わずに自国の軍事産業を潤すこととなるので好都合だろう。

(2025年補正予算で対GDP比2%2年前倒しで達成)

 東京新聞(2025.11.29)によると、2025年11月28日に閣議決定した補正予算(防衛費8472億円、関連費を含めた総額約1.1兆円)に当初予算を加えると、2025年度の防衛費と関連費の総額は約11兆円になる。防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ引き上げるとした政府目標は、2年早く実現する。


「補正予算案の主な内容は、無人機(ドローン)攻撃に対処する機材の導入など自衛隊の活動基盤整備に461億円、12式地対艦誘導弾といった弾薬購入を含む運用態勢の確保に2808億円、空母艦載機を移駐する鹿児島県・馬毛島の滑走路整備をはじめとする米軍再編経費に3451億円。防衛省はいずれも速やかに実施する必要があると説明する。(中略)

 今後の防衛費増の検討に当たっては、米側が水面下で打診している北大西洋条約機構(NATO)加盟国と同じGDP比3.5%が一つの目安になる」(同上)。

(2025年3月13日収録、4月30日更新、11月29日日本の対GDP比2%目標2年前倒し達成)


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