議員歳費・秘書手当などによる政治家の年間収入の主要国比較については図録5216で見たが、ここでは、別の資料から比較対象国が30か国とずっと多い国際比較データを掲げた。

 原資料は英国LOVEMONEY.COM の調査結果を記載している尾藤克之氏執筆の東洋経済オンラインの記事である。ただし、原資料にはない対一人当たりGDPの倍率のランキングを当図録で計算して掲げた。これは、一般人の収入水準と比較して議員報酬がどのくらい高額かを見るためである。

 実額を見ると、シンガポールが9千万円以上と最も多く、ナイジェリアの5千万円台、日本の3千万円台と続いている。4〜5位はニュージーランド、米国である。主要欧米国は1千万円台の場合が多くなっている。最も少ないのは中国の242万円である。

 日本の国会議員は恵まれすぎているという批判が根強い。歳費(給与)と期末手当(ボーナス)で年約2,100万円、月額100万円の文書通信交通滞在費(文通費)が支給され、所属議員に応じて会派に支払われる月額65万円の立法事務費を合わせると実質的に議員一人が使えるお金は年4,000万円に上るので、「4千万円プレーヤー」とも称される(東京新聞「こちら特報部」2022年3月23日)。

 このうち立法事務費を除いた分が図にあらわれていると言えよう。

 さらに、議員宿舎の家賃優遇(例えば衆院赤坂議員宿舎の家賃は12.5万円で民間なら50〜60万円と比べ格安)やJRを無料で利用できるパスや地元と最大月4回往復できる航空券のクーポンの支給もある。最大3人まで国費で支払われる公設秘書の経費は別にしてである(同上)。

 日本の民主主義は地元民との交流を重視した「草の根民主主義」なので、これらの経費はそのための必要経費、すなわち金帰月来で地元と往復する費用だったり、多くが地元の私設秘書の給料に消えるという点は余り顧みられない(図録5215参照)。

 ナイジェリアは一般人の収入が低いので、一人当たりGDP対比では215倍とダントツに議員報酬が多いことが分かる。

 一人当たりGDP対比でナイジェリアに次いでいるのはケニア、シンガポール、南アフリカ、ロシアであり、日本は6.7倍とこれらの諸国に次ぐ世界6位である。実額ほどではないが、やはり高い水準となっている。

 欧州諸国では一人当たりGDP対比が2倍以下の国も多く、スイスに至っては、なんと0.8倍と1倍を切っている。

 比較対象となっている30カ国の国名は、実額の順に掲げるとシンガポール、ナイジェリア、日本、ニュージーランド、米国、オーストラリア、イタリア、ドイツ、カナダ、オーストリア、ノルウェー、アイルランド、オランダ、英国、デンマーク、フランス、ベルギー、ロシア、フィンランド、スウェーデン、南アフリカ、ケニア、スイス、ポルトガル、スペイン、トルコ、ポーランド、チェコ、ハンガリー、中国である。

(2022年3月22日収録、3月23日日本の実情)


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