学校教育費の対GDP比の国際比較は、図録3950で行い、日本の公的支出の低さが際立っていることについてふれた。ここでは、学校に行く前の子どもへの保育サービスや就学前教育(幼稚園教育)への公的支出の国際比較データをOECD, Economic Policy Reforms 2017: Going for Growthから(更新前は、OECD, Society at a Glance 2009)から掲げる。制度の違いを踏まえたデータの読み方についてはコラム参照。 日本は、対GDPベースで、0.37%と低い水準であることが分かる(32カ国中30位)。特に幼児教育費は0.10%と最低のレベルである。 北欧やフランスでは保育や幼児教育への公的支出レベルが1%以上と日本の2倍以上である。保育や幼児教育への公的支出レベルが高い国では、2008年との比較でその比率を高めている国が多い。日本などレベルの低い国ではその比率は余り変わっておらず、上位国との差が開いている。少子化対策という側面からも課題は大きいと言える。 学校教育費の対GDP比の国際比較(図録3950)では、値の低さが年少人口の少なさに影響されている面が大きいことを示す相関図を同時に掲げた。同じように、日本は、少子・高齢化により、幼児人口の割合が小さいので、保育・幼児教育への公的支出が少ないのだろうか。この点を確かめるため、下には、保育・幼児教育公的支出と幼児人口との相関図を掲げた。 幼児人口が多ければ、保育・幼児教育の公的支出が大きくなる傾向もあるが(図に回帰直線)、相関度は低く(R2=0.0491)、同じ幼児人口比率でも国により、保育・幼児教育に公的支出を割く程度は大きく異なっている。 日本は、幼児人口が少ないドイツ、韓国、イタリア、オーストリア、ポルトガルといった国々の中でも、最も保育・幼児教育への公的支出は少ない国となっている。 韓国でも少子化が進んでおり、0-4歳人口の割合は4.5%と日本の4.3%とそれほど変わらない。にもかかわらず、保育・幼児教育への公的支出は0.88%と日本の0.37%の2倍以上となっている。 この相関図は年少人口の割合が保育・幼児教育への公的支出に影響しているという考えでX軸とY軸の項目を決めているが、逆に、保育・幼児教育への公的支出の多い少ないが年少人口の割合に影響を与えているという因果関係の方向も無視できないと思われる。X軸とY軸を入れ替えた相関図を描けば、そちらを強調することとなる。 いずれにせよ、少子化がこれまで長く課題となって来ていたにもかかわらず、このような状況では、保育・幼児教育の無償化に向けた国の支援は、余りに遅すぎた感が否めない。 0〜2歳児、および3〜5歳児の保育率・就園率の国際比較については図録2441参照。
比較対象として取り上げている国は32カ国、具体的には、パーセンテージの低い方から、ラトビア、米国、日本、ポルトガル、エストニア、チリ、チェコ、ポーランド、スロバキア、オーストリア、アイルランド、スペイン、スロベニア、イタリア、ドイツ、ハンガリー、オーストラリア、メキシコ、オランダ、リトアニア、英国、ルクセンブルク、イスラエル、ベルギー、韓国、ニュージーランド、フィンランド、ノルウェー、フランス、デンマーク、スウェーデン、アイスランドである。 (2009年9月28日収録、2017年4月20日更新、11月28日コメントコラム移行、相関図追加)
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