ここではレアメタルの地殻中の存在量と単位当たり価格を図に掲げた。希土類は省略したが、金・銀・銅はレアメタルでないが参考として掲げた。 最も多いレアメタルはチタンであり、最も少ないレアメタルは白金、パラジウム、レニウム、テルルである。 値段が最も高いのは、白金であり、1g単価5,500円。第2位はセシウムであり5,000円である。これらは金の価格の約2倍の価格となっている。逆に最も安価なのはジルコニウムであり、約0.1円である。レアメタルはほとんど1g1円以上であり、1g1円理論(1グラム1円理論)(図録0410参照)からすると高価な物質といってよい。 なお、存在量と単価の相関をみると、量の少ない金属ほど高価だという関係が成り立っているが、相関度はそれほど高いわけでもない。 レアメタルは、図録4090で見たように電気自動車の蓄電池や太陽光など自然エネルギーによる発電設備に必要なことから脱炭素社会へ向けたエネルギー転換にともなってますます需要が増大しつつある。また、産出地が限られているので、国際紛争などで産出国からの輸入が止まる事態となるとそれを使う工業製品が生産できなくなる不安が高まり価格が高騰したりすることが多い。 2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件では、中国側が、レアメタルの一部であり他のレアメタルと同様にハイテク製品等の製造に不可欠なレアアース(希土類)の輸出を中国側が差し止めたのではという恐れが日本の経済界を揺さぶった。 2022年2月末にはじまったウクライナ侵攻でロシアが世界の4割を供給しているパラジウムの価格が急騰した(注)。 (注)この点を東京新聞の記事(2022.4.3)は次のように報じている。「車の排ガスを浄化する触媒には、レアメタルの中でも高価なパラジウム、白金、ロジウムなどが使われます。最も多く使われるパラジウムの価格は3月に一時、1グラム1万1千円を超えました。昨年末の倍以上です。 京都大の田中庸裕教授(触媒化学)によると、ガソリン車には、パラジウムが1台あたり2〜3グラム使われています。トヨタ自動車の広報担当者は「希少元素の調達リスクには注意を払って確保してきたので、即座に影響は出ないが、ロシア情勢が長引けば影響してくるだろう」と話します。 触媒に使うパラジウムは微細でインクにように真っ黒い粉です。なぜ高価なのでしょうか。レアメタルに詳しい東京大生産技術研究所の岡部徹教授は「鉱石の中にわずかしか含まれず、掘り出すのに百万倍のごみが出るから」と解説します。南アフリカやカナダの鉱山では、採掘1トン当たり1〜2グラムしか採れませんが、ロシアの鉱山は質が高いため、世界最高の同7グラムも採れるといいます」。 同記事では、パラジウムの使用を9割削減したり、パラジウムの仲間の希少金属を使わない車の排ガス浄化触媒の開発が進められているとも報じられている。 レアメタルは特定国に偏在しているが、同位体比も地域に異なっている場合があり、それがアサリなど貝類や海藻類などの産地偽装を防ぐ役割をもっている点が最近注目された(下図)。 世界最強のネオジム磁石をはじめとする「永久磁石」は、自動車や家電製品、医療機器などさまざまな分野で利用され、社会を支えている。大同特殊鋼の佐川眞人顧問が開発したネオジム磁石は強い磁力を生かしてモーターの高効率化を実現し、省エネルギーに大きく貢献している。永久磁石の開発の歩みをひもとくと、多くの日本人研究者が大きな功績を残してきたことが分かる(東京新聞2024.11.24、下図参照)。 「鉄やコバルトなどに希土類を加えた「希土類磁石」は60年代後半から開発が進みました。その代表例が、コバルトに希土類のサマリウムを加えた「サマリウム・コバルト磁石」です。信越化学工業の磁性材料研究所長などを務めた俵好夫博士(今年2月に死去)が、この磁石の改良に貢献しました。俵博士は歌人の俵万智さんの父で、歌集「サラダ記念日」には「ひところは『世界で一番強かった』父の磁石がうずくまる棚」との句が収められています。永久磁石の開発は、日本の「お家芸」ともいわれています。入山さんは「材料を溶かして固めればそのまま磁石ができあがるわけではなく、それぞれの工程で工夫が求められる。日本は工夫する能力で優れたものを持っている」と分析します。(中略)ネオジム磁石は熱によって磁力が低下するという弱点があります。これまでの研究で、高温の領域ではネオジム磁石を超えるポテンシャル(潜在能力)を持つ材料は見つかってきています。そのうちの一つは、サマリウムと鉄を組み合わせた「サマリウム鉄系」という磁石です」(同上)。
以下にレアメタルとレアアースの一覧表を掲げる。
(2008年6月16日収録、2010年9月30日レアアース記述追加、2018年4月12日レアアース表追加、2022年4月3日ウクライナ侵攻にともなうパラジウム価格高騰の(注)、5月20日ネオジム同位体比、2024年11月28日ネオジム磁石などの永久磁石)
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