貧富の対立があるかを測るひとつの分かりやすい方法は、国民が貧富の強い対立があると思っているかどうかを調べることである。こうした考えで行われた国際共同意識調査の結果から、各国の貧富の対立状況をグラフにした。

 もっとも貧富が対立しているのはハンガリーであり、これに韓国、ロシアが続いている。一方、貧富の対立がもっとも小さいのはデンマークであり、これにキプロス、ノルウェーが続いている。

 日本は対象国38か国中24位と、貧富の対立は大きくない。「とても強く対立」だけで見てみると日本の順位は、さらに低い30位である。

 日本とだいたい同等なのは、スウェーデンであり、「強く対立」はやや日本が上回るが、そのうち「とても強く対立」ではスウェーデンのほうが日本より多い。

 すなわち、国民意識上の貧富の対立は、日本人の場合は大きくないと結論づけられよう。マスコミや識者が警告する日本の貧富の差の拡大は、実際の格差ばかりでなく、国民意識上の貧富観とも乖離した状況認識であることが分かろう。

 格差が大きすぎるかどうかという意識と実際の所得格差の関係を調べ、両者がほとんど相関していないことを図録4677で見たが、ここでは、貧富の対立の意識と実際の所得格差の関係がどうかを見ておこう(下図参照)。


 図を見れば、貧富の対立と所得格差の相関度もやはり低いことがうかがわれる。大きな所得格差があってもそれを補う社会政策が手厚く行われていたり(例えば貧乏人でも医者にかかれるかなど)、それが特権層や金持ちの傲慢、あるいは階級対立、民族対立による国民の分断と結びついていなければ、かならずしも貧富の対立には至らないと考えられる。また、所得格差が広がる変化が急であったり、過去に所得格差のない状況があったと国民が感じていれば、貧富の対立の意識の要因となろう。

 ハンガリー、韓国、ロシアなどで特に貧富の対立の意識が非常に深刻であるのは、実際の格差水準とは別のこうした何らかの説明が必要であろう。

 なお、帰趨が世界的な関心を集めているウクライナでは、格差が小さい割りに、貧富の対立は深刻であることがうかがわれる。

 冒頭の図録で取り上げた38カ国は、図の順番に、ハンガリー、韓国、ロシア、トルコ、ポルトガル、中国、アルゼンチン、ドイツ、米国、チリ、南アフリカ、スペイン、フィリピン、ウクライナ、フランス、ポーランド、スロベニア、ラトビア、英国、ブルガリア、クロアチア、イスラエル、スロバキア、日本、スウェーデン、エストニア、オーストリア、フィンランド、ニュージーランド、チェコ、台湾、ベルギー、オーストラリア、スイス、アイスランド、ノルウェー、キプロス、デンマークである。

(2014年4月15日収録、2015年9月8日字句修正)


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