東日本大震災(2011年3月11日金曜日14時46分地震発生)は津波による被害が大きかったため溺死による死者が9割以上であり、阪神・淡路大震災(1995年1月17日火曜日午前5時46分地震発生)は建物の倒壊等による圧死が8割以上と死因は大きく異なる(後段の図参照)が、いずれも、60歳以上、あるいは70歳以上の高齢者の生命が多く失われたことが明確である。 阪神・淡路大震災では、住宅のうち木造が多い長屋や共同建低層住宅で全壊率が際立って高く、こうした長屋や共同建低層住宅に、低所得者、高齢者、学生などが比較的多く住んでいたため、高齢者とともに20歳代で死亡者数が多かったと考えられている。阪神・淡路大震災では倒壊した家屋や家具の下敷きによる圧死が多かった(後段参照)ことがこうした状況を生んだといえる。木造住宅の建築時期別の死亡率の違いについては図録4361参照。 東日本大震災の主な被災地である東北3県の沿岸市町村(具体的な市町村名は図録4362a参照)の男女・年齢別構成と比較したグラフを以下に掲げた。
東日本大震災の死者のうち60歳以上の比率は64.4%であり、東北3県沿岸市町村人口の同比率30.6%の2倍以上となっている。60歳代、70歳代、80歳以上の比率は、人口比率のそれぞれ1.4倍、2.3倍、3.3倍となっており、高齢者ほど死亡率が高くなっている。津波被害から逃げたり脱出したりする困難性が加齢により大きく影響を受けた様子がうかがわれる。地震の発生した金曜日午後には通勤者は自宅にいなかった場合が多いことも影響していると考えられる。また同じ年齢階級で男女を比較すると男性の方が高い倍率となっており、車中での溺死者や数波にわたる津波の間に自宅に戻った者に男性が多かった、あるいは女性を優先して逃れさせた様子もうかがわれる。余儀なかったとはいえ多くの人の死と比べ自分が助かったことが被災者の大きな心の傷となっていることが心配される。
参考に関東大震災の年齢別被害者数を下図に掲げた。近年の大震災では高齢の被害者が多いのに対して、関東大震災では当時の年齢構成も反映して、低い年齢ほど多く、平均年齢28歳、10歳以下が25%、30歳以下が60%と近年とは全く異なっていたことが分かる。 以下には、関東大震災をふくめて、過去の3つの大震災の死因構成を掲げた。関東大震災は、焼死、阪神・淡路大震災は圧死、東日本大震災は溺死が中心となっていることが分かる。関東大震災について詳しくは図録4386参照。 海外事例との比較では、以下に2004年のインド洋大津波におけるスリランカの死者の年齢別の男女構成のグラフをかかげた。
全体で女性の死者が65%と大きく上回っていた。中でも19〜29歳で女性比率が79%と高かったのが目立っている。これは津波来襲時に子どもと家にいた女性が被害にあいやすかったからと見られている(国連報告書"The World Women 2010"による)。今回の東日本大震災ではそうしたことはなかったようである。 しかし、自然災害に対して女性の被害率が高いのが一般法則かというとそうでもないらしい。米国の2000〜2008年の自然災害についての分析では男性の死者が60%以上となっている。これは災害時に男性の方がリスクの高い行動をとるからだとされている(同上報告書)。東日本大震災でも同様のことがあったのかも知れない。 (2011年6月27日収録、7月1日海外事例追加、2023年8月29日関東大震災火災範囲図、2024年9月1日関東大震災の年齢別被害者)
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