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 気象庁は、近年、全国を対象とした同庁と同等の情報提供が民間気象事業者から行われていることを理由に、これまで行ってきたさくらの開花予想の発表について、2010年春から行わないこととした。ただし、生物に及ぼす気候の影響を知ることを目的としたさくらの開花の観測(生物季節観測−図録4344参照)は引き続き行うこととした。

 そこで、当図録は、桜の開花予想日ではなく、開花日(観測日)を気象庁の発表に基づき掲載することとしている。



(桜の開花の早期化、全国一斉化)

 東京と仙台の開花日の長期変化を末尾に掲げた(図録4346から再掲)。近年、温暖化の影響で桜の開花日が早まってきていることが分かる。

 また、末尾コラムに示したように開花の全国一斉化の動きも見られる。2024年はその先例のように見える。

(今年のコメント)

 2024年の東京の開花は昨年よりやや遅く3月18日と予想されている。


 ソメイヨシノの最も早い開花は2024年は高知の3月23日だった。2月末の予想より全般的に遅れており、高知も1日遅かった。

 各地で開花が昨年はおろか平年よりも遅くなっている。開花が遅くなった理由としては、ひとつは、2月後半から3月にかけて寒い日が多かったことが考えられるこのため蕾の成長が足踏み状態となった。そしてもうひとつは、今年の冬は記録的な暖冬で休眠打破がうまく行われなかった可能性がある。つまりことしは、冬に暖かく、逆に春に寒かったことで開花が遅くなったと見られる。

 開花がまだかまだかとやきもきしていた人も多かろう。

 世の中にたえて桜のなかりせば
     春の心はのどけからまし 在原業平

 2024年の開花のもうひとつの特徴として、平年と比較し、西日本では開花が遅れ、東日本では早まった。すなわち全国一斉化の傾向が認められた点も見逃せない。

(昨年のコメント)

 2023年の開花は1月時点で昨年と同じ3月20日と予想されていたが、実際の開花は早まり東京で3月14日と過去最早タイとなった(下図参照)。


 【過去のコメント】 

(2022年のコメント)

 予想では、東京で3月20日の開花となっており、本年は平年よりは早いが、昨年よりは遅い開花となっている。実際、東京は3月20日の開花となった。

(2021年のコメント)

 予想では東京が最初に開花するといわれていたが、3月11日(木)に広島で最初に開花した。平年より16日、昨年よりも11日早く、広島では1953年の統計開始以来、最も早い開花となった。1953年の観測開始以来、2010年に高知市で観測された3月10日が最も早く、2番目の記録となった。広島が全国トップになるのは初めて(東京新聞2021.3.12)。

 翌3月12日には福岡で開花した。これは、1953年の統計開始以来も最も早い記録。福岡のソメイヨシノは広島に次いで、全国歴代3番目に早い記録である。

 3月14日(日)、東京でソメイヨシノの開花が発表された。昨年に並んで観測史上最も早い開花である。東京の開花が平年より早いのは、これで9年連続である。今年は平年値の更新が行われる。近年の早咲きの傾向から平年の開花日も早まる見通しである。

(2020年のコメント)

 3月14日(土)、気象庁は東京・靖国神社にある桜(ソメイヨシノ)が開花したと発表した。平年より12日早く、昨年より7日早い開花で、統計開始以来最も早い開花日となった。東京の桜は8年連続で平年(3月26日)よりも早く咲いた。2002年・2013年に記録していた最早日(3月16日)を7年ぶりに更新したことになる(ウェザーニュースによる)。

 温暖化にともなって、桜の開花は早まっているが、例年は開花が早い九州や高知、静岡では、休眠打破(注)が十分でなかったため開花がむしろ遅れた。

(注)桜は夏に翌春咲く花芽を形成する。いったん休眠に入った花芽が、冬季に一定期間低温にさらされ休眠から覚めること。その後の気温上昇と共に花芽は成長して開花に至る。冬暖かすぎると春先の気温が高くても開花が遅れることがある。

 3月28日14:00の時点で、関東以西ではほぼ全域で開花したが、鹿児島だけはまだ咲かず、31日になっても仙台、福島は咲いているのに鹿児島はまだ咲かなかった。

 やっと4月1日に鹿児島で開花。28日には福島と仙台ですでに開花し、ともに統計開始以来最も早い開花となった。福島や仙台の桜が南国・鹿児島よりも先に開花したのは、統計開始以来、初めてのことだった。

 休眠打破が不十分だった地域を除くと、北海道を除いて全国的に昨年より開花は早かった。新型コロナの感染拡大で花見イベントが自粛対象となったので、開花の時期については話題になることが少なかった。

(2019年のコメント)

 本年の開花は、ウェザーニュースによれば、全国的に平年、あるいは昨年より早いと予想されている。なお、ウェザーニュースの開花日は「木に一輪以上の花が初めて咲いた日」と定義しており、気象庁の定義である「標本木で5〜6輪以上の花が開いた最初の日」とはやや異なる(東京新聞2019.3.18)。

 本年の開花は、ウェザーニュースによれば、平年よりは早いが、昨年より遅く、まず福岡で3月20日(水)、次いで東京で3月21日(木)に開花すると予想されていた。

 実際は、予想より早く(ただし昨年よりは3日遅く)、3月20日に開花した長崎が全国に先駆けた。東京、福岡、横浜も翌21日に開花した。

 全体として、予想とはそう異ならず(都市によって前後があるが)、平年よりは早く、昨年よりはやや遅く開花したといえる。

(2018年のコメント)

 2018年は高知で3月15日に最初にソメイヨシノが開花し、宮崎がその翌日に開花した。昨年と比べると2週間ほど早い開花であり、開花の平年日と比べてもかなり早くなっている。

 東京も3月17日の午後には開花した。3月17日の開花は戦後2番目に早い日の開花である。仙台も3月30日と戦後2番目に早い日の開花となった(下図参照)。

 仙台、山形までは例年より早く開花となったが、秋田、盛岡は4月17日と遅くなっており、北東北以北では昨年並みの開花となった。

(2017年のコメント)

 2017年は3月21日に東京で真っ先にソメイヨシノの開花が観察された。次に開花したのは福岡と横浜であり、4日後のことであった。

 全体的に本来開花が早い西日本で開花が遅れ、開花が遅い地域では平年日に近いか、あるいは平年日より早く開花するという傾向だった。

 西日本でも特に鹿児島の開花が遅いのが目立っていた。鹿児島の開花は、「鹿児島地方気象台によると、平年より10日遅く、1953年に観測を始めて以来、最も遅かった。これまでは88年と2005年の4月3日だった。(中略)鹿児島地方気象台の服部紀文・気象情報官は、鹿児島市での開花が遅れた理由について「花芽の目覚めには11〜12月に冷え込む必要があるが、今冬は例年より気温が高かった。さらに3月の気温が低く、花芽の発育に影響があったのでは」とみている」(朝日新聞2017年4月5日)。

(2016年のコメント)

 2016年は3月19日に福岡で最初にソメイヨシノの開花が観察された。東京は3月21日に開花となった。東京・千代田区の靖国神社では、21日昼前、気象庁の担当者がサクラの開花の目安にしているソメイヨシノに6輪以上の花が咲いているのを確認し、気象庁は「東京でサクラが開花した」と発表した(NHK3月21日11時7分)。東京での開花は平年より5日、去年より2日早くなった。おおむね、どの地域でも平年、あるいは昨年より開花が早いが、高知、大分、静岡、下関、徳島のように平年、昨年より遅れて開花した地域もある。南の地域でかえって開花が遅れたのはサクラの開花の前段階として必要な真冬の寒さによる休眠打破が温暖化で十分でなかったためと報じられた。

(2014年コメント)

 2014年最初のソメイヨシノの開花報告は高知市から3月18日と昨年の3月15日より3日遅れ、平年よりは4日早くなされた。高知、九州以東では平年並みに近づいたが、仙台、盛岡、札幌などは再度開花が平年より早かった。

(2013年コメント)

 2013年の最初のソメイヨシノの開花報告は福岡管区気象台から3月13日と昨年の3月27日より大幅に早くなされた。靖国神社境内の標本による東京も3月16日に平年より10日も早く開花した。これは1927(昭和2)年の観測開始以来、2002年と並んで早いという(東京新聞2013.3.17)。彦根は開花が他地域より遅れ、平年より3日早いだけだった。また東北地方は平年開花日に近づいており、仙台の開花は4月9日だった。山形は平年日と同じになり、秋田、盛岡は平年日を過ぎた開花となった。また北海道の函館、札幌、室蘭も平年日から大きく遅れた開花となった。

(2012年のコメント)

 2012年最初の開花観測日となったのは例年より1日早い高知、3月21日開花であったが、その後、各地の開花は平年よりやや遅れがちである。九州では平年の開花日よりやや遅れがちであったのが、関東・北陸では開花日が平年の満開日あたりかそれ以降となってきており、さくら前線の北上自体も遅延傾向にある。

(2011年のコメント)

 2011年の桜(ソメイヨシノ)の開花日については、九州各県や静岡は平年より早かったが、東京、甲府から室蘭にかけて、ほぼ平年並みに開花が進んでいる。地域により多少の遅速はある。京都や彦根は例年より早く、銚子、宇都宮、松江などは例年より遅く桜が咲いている。

 二もとの梅に遅速ちそくを愛す哉 蕪村

 早く咲く梅もよいし、遅く咲く梅もよいと蕪村は詠んだ。2011年の春、被災地にもそうでない土地にも遅かれ早かれ咲いた花に人々は何らかの感慨を抱いたと思う。

(2009年のコメント)

 気象庁によって18日に発表された2009年の桜(ソメイヨシノ)の開花予想(第3回)によると、東日本、西日本ともに暖冬の影響で「平年より早い地域が多い」と予想されている。

 既に福岡では3月13日に最も早く開花した。次いで高知、熊本、宮崎でも3月16日に開花している。

 東京は昨年の開花日より1日早く、平年より7日早い21日。大阪は昨年より1日早く、平年より5日早い25日と予想されている。開花予想は第1回〜2回よりも早まっている。

 昨年の2008年は、東京、静岡、名古屋などで3月22日に全国に先駆けて開花し、本格的な花見シーズンが開幕した。九州はこれに遅れ、鹿児島などは3月28日開花となった。

(2008年のコメント)

 気象庁によって発表された九州から関東・東北にかけての2008年の桜(ソメイヨシノ)の開花予想によると、ほぼ全国的に平年より早い開花が見込まれている。

 ただ例年であると高知県や九州各県から桜前線が北上するパターンであるが、本年は、3月23日に東京・静岡などが全国のトップを切って開花し、鹿児島、宮崎はむしろ関東に逆転する予想となった。

 実際も東京、静岡、名古屋などで3月22日に全国に先駆けて開花し、本格的な花見シーズンが開幕した。九州はこれに遅れ、鹿児島などは3月28日開花となった。

 毎日新聞2008.3.29夕によれば、「開花が東と西で逆転した理由は、1年を通して温暖だからといって必ずしも早咲きになるとは限らない桜の特性にある。開花に不可欠なのは、冬の寒さとその後の気温上昇。桜の成長は秋になると止まり、冬季の一定期間、5度前後の気温にさらされると眠りから目覚める「休眠打破」という現象が起こる。春に向かう季節に気温が上昇するほど、開花が促される仕組みだ。

 しかし、この冬の西日本は寒さが必要な昨年11月から今年1月に気温が十分に下がらず、気温の上昇でつぼみが膨らむはずの2月の気温も平年より1度低かった。そのため、西日本の開花は遅めとなり、一方で気温の変動が比較的開花に支障をきたさなかった東日本から東北では早咲きが際立つ傾向となっている。特に盛岡では平年より9日も早く(4月14日)、予想通り開花すれば統計開始から5番目の早さとなる。

 東京より6日遅れで開花した鹿児島は、もともと冬も温暖なため、特に暖冬だった昨年、今年と遅咲き傾向が顕著になっている。」

(2007年のコメント)

 気象庁によって発表された関東から九州にかけての2007年の桜(ソメイヨシノ)の開花予想によると、ほぼ全国的に平年より早い開花が見込まれている。記録的な暖冬の影響によって開花が促進されているという(毎日新聞2007.3.8)。

 3月7日発表の時点では最も開花の早い13日の静岡、そしてこれに次ぐ17日の高松、松山など、予想通り開花すれば、それぞれの地点で1953年に統計がとられはじめてから最も早い開花となるとされたいたが、これらと東京を含む4都市でデータミスがあって、予想日が14日には訂正された。

 例年だと、高知が最も開花が早く、これに熊本、宮崎、長崎、鹿児島が続くが、本年はこうした西南暖地は平年並か、平年より遅れた開花であり、むしろ太平洋岸や瀬戸内地域の方が開花が早くなる予想である。桜は一定期間5度前後の低温にさらされ休眠からさまされないと開花へ向けた成長がはじまらないという。非常に暖かった宮崎、鹿児島では休眠からの目覚めが余りに不十分であったことがこうした開花の遅れにつながったとされる。

 7日発表後、寒さがぶり返したので、14日の予想日は全体として数日遅れることとなった。

 各地のサクラまつり等では開催日が決まっているので、行事の際にサクラが散っているのではと心配し、日程変更する地域もあったが、訂正と新予想で再度の訂正や復旧を行う自治体もあるという。

【コラム】桜の開花の全国一斉化


 ソメイヨシノの開花が一番早い場所は、平年日の早い高知、福岡、熊本ではなく、東京である年が増えている。下表の通り、東京が開花一番乗りだった年は2015年以降3回あり、全国の観測地点の中で最多となっている。


 開花は地球温暖化の影響で本文にも示したように全国的に早まっているが、それとともに全国一斉開花への動きも見られる。例えば、日本が記録的な暖冬だった2020年には東京が最も早い3月14日に咲いたが、その後、関東から九州でほぼ一斉に開花した。

 「温暖化が進めば、日本の広範囲でサクラはほぼ一斉に開花する」と気象学者の伊藤久徳氏は予想している(上図参照、東京新聞2024.4.3)。

 サクラの開花には冬の寒さと春の暖かさが必要であり、両者のバランスで開花時期が決まる。「サクラの花芽は前年の夏にでき、秋ごろに成長を止めて「休眠」する。冬の厳しい寒さにさらされると「休眠打破」が起こり、成長を再開する。その後は暖かいほど、開花が早まる」(同上)。

 このため、暖冬で休眠打破が不十分だと春は暖かくとも開花が遅れ、満開にならないこともある。温暖化が進むと、九州は休眠打破に十分な寒さとならず開花が遅れ、逆に東北は休眠打破は十分で春の暖かさの影響で早く開花するので全国一斉開花が促されると予想されるのである。伊藤氏によれば、九州では開花しない場所も出てくるし、神奈川や千葉では一部で満開にならない場所も生じるという。

 図で取り上げた48都市は、平年開花日順に、高知、熊本、福岡、宮崎、長崎、佐賀、大分、静岡、松山、鹿児島、名古屋、和歌山、東京、横浜、岐阜、広島、甲府、下関、徳島、神戸、大阪、高松、京都、熊谷、岡山、奈良、津、前橋、鳥取、銚子、松江、宇都宮、水戸、彦根、福井、金沢、富山、福島、新潟、仙台、長野、山形、秋田、盛岡、青森、函館、札幌、室蘭である。

(2007年3月10日収録、3月15日訂正・更新、2008年3月29日データ・コメント更新、2009年3/5・3/11・3/18・3/25更新、2011年3月30日開花予想日を開花日に変更して更新、4/1〜5/8逐次更新、6/1さくら前線の経年変化図追加、2012年3/21更新・平年日変更、3/24〜5/12逐次更新、2013年3/13〜5/24逐次更新、2014年3/18〜4/30逐次更新、2016年3/22〜4/27逐次更新、2017年3/21〜5/2逐次更新、2018年3/17以降逐次更新、3月17日さくら前線図を新規図録である図録4346に移管、2019年3月16日更新、3月18日開花日定義、3/20〜4/30逐次更新、2020年3月5日ページ今年度準備、3月6日更新、昨年度表示選択、3月14日更新、開花日平年値等日線図、3/18以降逐次更新、3月23日休眠打破の(注)、3月31日・4/1・5/3更新、2021年3/12以降逐次更新、2022年3月7日更新、3月20日以降随時更新、2023年1月14日開花予想、3月14日以降随時更新、2024年3月2日開花予想更新、3月23日以降随時更新、3月31日コメント補訂、4月3日コラム、4月27日コメント補訂)


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