この図録ではこの点を廃棄量からうかがい知るため、世界の各地域におけるプラスチック廃棄物の1人当たり排出量をグラフで示した。廃プラの処理方法の地域別比較は図録4208参照。プラスチックの環境関連技術の動向については図録4209参照。 世界のプラスチック消費量は下図のようにこの30年間に4倍以上の増加を見てきた(短期的に落ち込んだのはオイルショック、リーマンショック、新型コロナに見舞われた時期だったのも目を引く)。先進国、途上国を問わず生活の様々な局面でプラスチックが使われるようになってきたのである。特に最近は中国など新興国における急拡大が目立つようになっている。 これにともなってプラスチック廃棄物(廃プラスチック)の排出量も世界的に大きく増加している。 1人当たり廃棄量は米国が220.5kgと群を抜いて多く、カナダがこれに次ぎ、さらにこの2国より少ないヨーロッパ先進国(OECDかつEU諸国)は121.5kgと米国の55%の水準となっている。 OECDのアジア諸国(日韓)は欧米並みの豊かさを実現しているが、プラスチック廃棄量は68.9kgと米国の31%、すなわち3分の1以下と少ない。 途上国のアジアやラテンアメリカの諸国は40kg台とさらに少なく、サハラ以南アフリカやインドでは10kg台とさらにっずっと少なくなっている。 米国でこのように世界1プラスチック廃棄量が多いのは、ひとつには消費量自体が大きいためであるが、さらに、長く使わずに使い捨て型の消費が多いことやリサイクル率が低い点が要因として考えられよう。 プラスチックについて、廃棄量の対消費量を廃棄率として計算してみると、米国、カナダは9割近くと高くなっているのに対して、同じ先進国の中でもヨーロッパ先進国は8割以下、さらに日韓では67.3%とかなり低くなっており、プラスチックを比較的大切に使っていることが分かる。 途上国でもラテンアメリカやサハラ以南アフリカでは廃棄率が85〜90%と高く、米国並みの使い捨て文化となっていることが分かる。これらの地域で廃棄量が少ないのは、消費量自体が少ないからなのである。一方、同じ途上国でも、中国やインドなどでは廃棄率が6割台と低く、プラスチック製品を比較的長く使っているものとみられる。 「使い捨て文化」という言葉を使ったが、実際上はどのような用途のプラスチック製品をその国で使うことが多いかで廃棄率も異なってきていると考えることができる。下図には、使用用途別の使用期間分布と平均使用年数のグラフを掲載した。非常に短いのは包装材であり、プラスチックの包装材を多く使っている国では廃棄率も高くなると理解することができよう。容器などの消費財の使用期間がその次に短く、繊維品、電気・電子製品、自動車などの輸送機械とだんだんと使用年月は長くなる。 (2023年5月12日収録)
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